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青い記憶

小学校で仲が良かったHとは、中学に上がっても同じクラスで、揃って剣道部に入った。
ある放課後、西日が差しこむ教室で女子ふたりが部活を終えた僕達を待っていた。
他に誰も残っていないし、僕は彼女らに、どうかしたの?という言葉を発したはず。
ふたりの目線に応えるように振りかえって黒板を見ると、僕とそこにいる片方の女子、K子の名前が相合傘で描かれていた。

僕はK子と交換日記を始めた。しばらくしてもう一人の女子もHと交換日記を始めた。
4人で都内へ映画にも行った。
僕とHは、学校帰りに公園のベンチで、それぞれの彼女からの日記帳を読んだ。
でも、下校の下駄箱で手にする日記帳が楽しみだったは長く続かなかった。

Hが、財布に忍ばせていた彼女の写真を校内で落としてしまい、別の女子に拾われてしまったのだった。
写真は大勢が写っている中から彼女の顔だけを小さく切り取ってあり、このことはクラスの一部でちょっとした事件だった。
僕も、無口でおとなしいHが、切り取った写真を財布に入れていたことにはちょっと驚いて、Hにそのことについては何の言葉をかけられなかった。

その事件がきっかけで、僕達4人は以前と同じように言葉をかわすことが出来なくなり、当然のように僕とK子の交換日記も終わってしまった。

※2015年2月

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