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「入札不成立という現実-希望のまちを創る意味」

大変ショックを受けています。戦争、紛争、物価高騰、人件費高騰(人件費が上がることは悪いことではないが)、予定外の事態が続いています。建築資材の多くを海外から輸入に頼っているこの国ですが、2020年末の円相場は、一ドル103円でした。現在は160円に迫っています。100万円で買えた輸入資材が160万円出さないと買えない事態となっています。円相場だけでも1.5倍の資材高騰となっています。

希望のまちは、建築費(設計費等含)10億円4階建てでスタートしました。しかし、2023年になり上記の状況を鑑み、断腸の思いで4階建てを3階建てにし、それでも必要費用は下がらず13.9億円となりました。

幸いなことに予定より少し遅れましたが2023年末には寄付目標の3億円を達成できました。その他に日本財団の「未来の福祉施設建築プロジェクト」より5億円、金融機関より5億円の借入を加え、必要な資金を確保できました。多くの方々から熱い応援と期待をいただきました。私自身も全国をかけずり周り「希望のまちがなぜ必要であるのか」を伝え続けさせていただきました。全国での報告会は20回に及び、参加者は3000人を超え、寄付者は5000人を超えました。

そして満を持しての入札となりました。社会福祉法人の建物は「公益」のために用いられます。それで工事の発注などは入札によって決まります。一般競争入札の形をとりましたが結果は「不落」。入札は不成立となりました。工事価格がこちらの想定を上回ったのが原因でした。

大変ショックを受けつつもいろいろと考えさせられました。困っているのは私たちだけではないはずです。数日前、ある社会福祉法人にお招きいただき講演した際、最後に入札不落のことを報告しました。すると会場から「私たちの法人でも建築がストップしている」という意見が出ました。戦後建てられた福祉施設の多くが建て替えの時期を迎えています。今後、必要となる社会福祉施設は建築できるだろうかと心配になっています。

それどころか物価の高騰に加え、実質賃金は上がらない状況で「予定していた人生設計」を変更せざるを得ない人は大勢いると思います。少子化の影響で年金は今後も下がっています。非正規雇用の増加は、退職金もなく後期高齢者になっても働き続けなければならない事態を生んでいます。単身世帯は世帯全体で最も多く4割に達し、男性の生涯未婚率は3割となりました。北九州市は、全国政令市(20都市)の中で人口増減19位(下から二番目)。年間に約8千人減少しています。

応援してくださった方々に心よりお詫び申し上げたい思いです。計画通りに進まない現状を申し訳なく思っています。しかし、この事態の中で「皆が大変な思いをしている」ことが一層わかったように思います。この間、抱樸の炊き出しに並ぶ人の数はコロナ前(50人)の倍近く(90人)になっています。野宿者に限らず、地域の困窮状態の方が炊き出しにならび、なけなしの物資を受け取っておられます。このような事態において「自己責任」「身内でなんとかしろ」と言い続けてもどうしようもないことです。

この現実を前に私は確信しています。「だから希望のまちが必要」だということを。このような現状であるからこそ一日も早く希望のまちを完成させたいと思います。私はあきらめません。絶対に。希望のまちは、「わたしがいる。あなたがいる。なんとかなる」を具現化するまちです。今後早急に再入札に向けてさらなる設計変更と資金計画を立てることとなります。さらなる応援をお願いしたいと思います。

「大丈夫、なんとかなる」。心の中でつぶやきながら記者会見場を後にしました。

希望のまちプロジェクト特設ページ | 認定NPO法人 抱樸(ほうぼく) (houboku.net)

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奥田知志
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