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「コロナ禍における現場からの緊急提言―本当の公を求めて」 2021年2月16日参議院予算委員会意見交換での意見陳述 NPO法人抱樸 奥田知志

(2月16日参議院予算委員会意見交換会に呼ばれた。以下は、その時の原稿に加筆したものである。当日の持ち時間は10分と短く、とても全部を述べることは出来ないと考えたので全文を原稿にまとめ提出することにした。出席議員はどなたも熱心に聞いて下さっていたと思う。
コロナ禍が長引く中、ダメージは、日に日に大きくなってきている。一つの現場からの意見であるので社会全体で起こっている事態を網羅的に指摘したものではないが、後述することは緊急に国が取り組むべき課題であると思っている。)

1、 はじめに
本日は、このような機会をいただき感謝しております。コロナ禍が日に日に深刻化していることは、議員の皆さんもよくご存じだと思います。これから申し上げることは、一つの現場からの提言に過ぎませんが、現に現場で出会い考え、問われた事柄ですので、聴いて抱ければ幸いです。
最初に自己紹介ですが、私は九州を中心に活動をしておりますNPO法人抱樸(ほうぼく)の代表です。1988年12月に活動を開始し33年目になります。これまで路上から自立を果たした方は3500人を超えました。現在では、ホ―レス支援、居住支援、就労支援、障害福祉事業、介護事業、刑務所出所者への更生保護事業など現在では27の事業を行っています。
抱樸の活動は、ひとりの人との出会いから始まり「この人には何が必要か」と同時に「この人には誰が必要か」を問い続けるものでした。「経済的困窮」だけではなく「社会的孤立」が現在の困窮者支援の本質だと考えます。これら二つの困窮は、コロナ禍において一層深刻な事態となっています。
また、ホームレス支援全国ネットワーク、生活困窮者自立支援全国ネットワーク、全国居住支援法人協議会などの代表をしております。キリスト教会の牧師でもあります。

私が、本日申し上げたい今後の課題は以下4点です。
1) 相談支援体制の強化
2) 貸付金(返済)の今後
3) 住居確保給付金後の居住支援の強化
4) 生活保護体制の強化

2、 「相談支援体制の強化」
第一に「相談支援体制」の強化です。つまり、相談数が急増している中で相談支援体制が追い付いていないという問題です。コロナ禍における支援を考える上で「社会的孤立」の視点を持つことは、何よりも重要です。
抱樸の現状を言いますとホームレス関連の相談が昨年比で1.5倍。生活困窮者の相談が2.5倍となっています。しかし、相談支援体制はコロナ以前と同じです。残業や休日出勤することも多く、その分の費用はNPO法人が負担している現状です。
生活保護申請は、昨年11月に増加に転じたもののまだ「急増」とは言えない状況です。今後申請が増えるのは必至ですが、申請数がある程度穏やかである要因の一つは、リーマンショック以降に作られた様々な制度やその条件が緩和されたこと、さらに緊急一時や総合支援貸付、様々な給付などの手立てが打たれたことの効果があると思います。当然、その枠に入れなかった人がおられることも事実ですが、「経済的困窮」への対処はある程度なされてきたと思います。しかし、「社会的孤立」状態の解消が計られないままでは、給付等の支援の効果も出ず、さらに困窮が深まるのではないかを危惧しています。
これまで日本の社会保障制度は、主に現金給付と現物給付を中心に構築されてきました。長期雇用慣行をベースとした企業社会やそれに下支えされた家族の存在を基盤として国は「給付の部分」を担ってきました。
しかし、1980年代後半から非正規雇用が増え始め、企業と家族を基礎とする「日本型社会保障」の基盤がぜい弱化し、結果1990年代に入り単身化や孤立する人が増えました。2008年のリーマンショックにおいては、「単身非正規雇用者」の失業、ホームレス化が問題となりました。
このような現状を受け2015年に「生活困窮者自立支援制度」が創設されました。これは「経済的困窮」のみならず「社会的孤立」を基本的視座とした制度でした。私自身もその審議会のメンバーでありましたが、この制度の特徴は「給付に特化した制度」ではなく「人が人を支える」という「相談支援」に重点を置いたことにあります。これまでの5年間に全国で90万件以上の相談に対応してきました。
先にも触れましたが、今回のコロナ危機で政府は「給付と貸付」を先行させ対応してきました。これは必要な措置であったと思います。しかし、一方で「相談支援」が追い付いていない状態です。感染防止のためのソーシャルディスタンス保持で一層孤立した人もおられます。さらに相談事業は、感染防止対応をする中でこれまで「対人援助」のスタンスが取れないことに加え、想定外の相談件数で逼迫状態にあります。
今後、給付金や貸付金が終了する時期を迎えますが、それまでに経済や雇用が回復していればよいですが、そうではない場合はどうなるのか。何よりも「誰が相談を受けるのか」が心配です。困窮状態にある人が「孤立に追い込まれる」という事態にならないために、相談支援体制の拡充を急がなければなりません。「経済的困窮」に加え、「社会的孤立」が重なることで「自殺のリスク」が高まることも考えられます。
「生活保護は権利である」と昨年末に厚労省が呼びかけました。これは大変評価できると思います。ただ、困窮状況におられる方々が生活保護申請に上手くつながるかは心配です。生活保護に対する否定的感情が強く、さらに制度が良くわからない人も少なくありません。伴走してくれる相談支援員が必要です。給付等の期限が切れる前に相談支援体制の強化を図る必要があると考えます。
そこで以下のことを提案します。
① 生活困窮者自立支援制度における相談支援体制を拡充し、相談員を増員すること。
生活困窮者自立支援制度は対象者を限定していない。今回のような多くの人が困窮状態になる事態のおいては、大変有効に機能すると思われる。
② 「重層的支援体制整備事業」を主要都市において前倒し一律実施すること。
「重層的支援体制整備事業」は、生活困窮者、障害、介護、子ども子育ての事業所が連携し「断らない相談支援体制」を構築することを目指す。現在は、手を挙げた自治体においてのみ実施されているが、コロナ禍で相談数が増加している自治体においては、国が指導し事業実施を進める。

3、 「貸付金の今後について」
社会福祉協議会が窓口となって「緊急小口貸付」と「総合支援貸付」が実施されています。「緊急小口」の利用件数は2018年度7,145件でしたが、2020年12月2日現在で85万件。「総合支援」は、2018年度421件であったものが、昨年12月段階で約51万件となっています。最終的には両者で150万件を超えるとも言われています。先に述べた生活困窮者自立支援の相談件数が5年間で90万件であることからすると、これがどれほど大きな数であるかがわかります。
さらに貸付額ですが、今回貸付期間の再延長も決まり最大で200万円の借入が可能となりました。これは200万円の借金を抱えた状態で生活再建をすることを意味しています。アンダークラスと呼ばれる低所得者の平均年収が186万円と言われていますから、200万円がどれだけ大きいかがわかります。
「返済」を前提として借りたことは事実ですが「返済」が生活再建の足かせになる危険性は小さくありません。返済期間については「緊急小口」が2年間、「総合貸付」が10年間です。一部が不良債権化することは十分予測できます。
そこで「貸付金の返済」に関しては、以下の点を提案したいと思います。
① 借金返済よりも「生活再建を最優先」に考える。
② 生活再建と返済に関する総合的な個別支援計画等が立てられるように相談支援体制を拡充すること。
相談支援員の働きが「借金返済業務」、すなわし「借金取り」に終始することは、当事者にとっても、支援者にとっても生産的ではない。あくまでも「生活再建のための相談支援」を重視すること。
③ 返済免除を大胆に実行すること。免除の基準に関しては「生活再建」という目標に鑑みて決定すること。
返済免除基準を「非課税世帯」とする案もあるようだが「早期の生活再建を目的とする」ために免除基準を「それよりも高く設定」すること。免除基準が低すぎると生活再建が困難となる。
④ 「返済か」「返済免除か」という二者択一ではなく、収入に合わせて段階的に免除を実施すること。
例えば、まず全員半額を免除。収入250万円以下は残り半額も免除。収入300万円以下で1/4免除(1/4返済)。300万円以上は半額(実質1/4)返済など段階的に実施する。

4、 「住居確保給付金後の居住支援の強化」
住居確保給付金は「家賃支援の制度」です。2019年度の利用件数は全国で4千件でありましたが、2020年度は9月の時点で10万件を超えています。また、先日「再申請可能」となり、これまで9カ月だった給付期間が最大12カ月となりました。コロナの影響が長引く中で利用者はさらに増加すると思われます。
再申請や期間の延長での対応は重要ですが、例えば昨年4月から給付を受けたケースで言うと2021年3月、あるいは4月に給付期間が終了します。それまでに再就職や増収となれば良いですが、そうならなかった場合はどうするのか。
そこで「住居確保給付金」について提案します。
① 住居確保給付金の期間をさらに延ばすこと。最低3年程度は必要。
② 住居確保給付金の「収入基準」を引き上げること。
住居確保給付金の給付基準(収入基準)が低すぎることが問題である。収入基準は、北九州市単身者の場合11万3千円。これでは「生活保護レベル」だと言える。また、家賃支給限度額も生活保護の住宅扶助額となっている。これは住居確保給付金が「生存権レベル」、つまり最低生活の維持は出来るが、元々の生活レベルの維持や生活再建のレベルになっていないことを示している。例えば、コロナ禍でそれまでの収入が半減し月収13万円となった人は住居確保給付金を申請することは出来ない。元々の収入額であった26万円を基準にすることは難しいとしても「これまでの生活を維持し、そこから生活再建を果たす」ということを住居確保給付金の「収入基準」とすることが重要。
ちなみに国土交通省が所管する「住宅セーフティーネット制度」における「家賃低廉化補助」の収入基準(単身者)は15万7千円である。つまり、月収が15万7千円を割り込んだ時点で対象となる。
③ 一定の収入以下の世帯に対する「住宅手当」を新たに創設すること。
住宅喪失と言う事態は以下の三つの危機を意味する。
第一に「生存的危機」。
住宅がないことは生存権、基本的人権にかかわる事態である。
第二に「社会的危機」。
社会的手続きの多くには、「現住所地」があることが前提となっている。総務省は「住民基本台帳は、氏名、生年月日、性別、住所などが記載された住民票を編成したもので、住民の方々に関する事務処理の基礎となるもの」であり「選挙人名簿への登録、国民健康保険、後期高齢者医療、介護保険、国民年金の被保険者の資格の確認、児童手当の受給資格の確認、学齢簿の作成、生活保護及び予防接種に関する事務、印鑑登録に関する事務」のために利用されるとしている。その他、就職等においても「住居(現住所)」は必然である。
第三に「関係的危機」。
住居がないことで、社会参加や人間関係に支障が出る。また、信頼関係が構築できない。
このように住居確保は、すべての前提であると言える。何があっても住居を失わないための基本的な制度をこのコロナ禍を機に創造すべきだと思う。

次に住居確保給付金の受給期間が終了した方の今後についてです。
住居確保給付金の収入基準が「生活保護レベル」であると述べましたが、就職や増収が図られないまま給付が終了すると「生活保護申請」が増えることが予測されます。ある市の担当者にお聞きしたところ、住居確保給付金受給者の半数以上が生活保護申請を行うのではないかと言われています。保護申請に対する否定的感情の問題もありますが「生活保護は権利」ですから、困った時には誰もが申請できなければなりません。
ただ、ここで大きな問題が生じると危惧しています。生活保護を申請した時点で「転居指導」の対象となる世帯が多く現れると言うことです。つまり、現在住んでいる家の家賃と生活保護の住宅扶助額に差が生じた場合、具体的には現在の家賃よりも住宅扶助費が安い場合は、原則的に住宅扶助内の物件への「転居」を求められると言う事です。
「転居」自体は、生活保護制度における「一時扶助」等で対応可能ですが、実際には簡単ではありません。
第一に減収あるいは無職の人が賃借できる物件を確保することは非常に困難であると思います。そもそも生活保護のケースワーカーが、物件探しや保証人の確保などをすることは現状では考え難い状態です。
第二に、転居等に伴う一時扶助等のコストも相当なものとなります。
第三に当事者の思いです。思いがけずコロナ禍によって困窮状況に陥った人に転居を指導し、小さな家へ引っ越しさせる。中には大切な家財を処分せざるを得ない人も出ると思います。これは「自立の意欲」を削ぐことになると思われます。これが一番の問題であると思います。

そこで生活保護申請時の「転居指導」問題について以下提案します。
① 「転居なし」を施策の原則とすること。
生活保護申請時にも「転居指導」を行わないことを原則とすること。
② 「家賃差額」については、新たな手当を創設するか、住居確保給付金を拡大運用すること。
手当をしないまま「転居指導なし」とすることで家賃差額(住宅扶助を上回った分)を「生活扶助費」から賄うことになる。これは「最低生活基準」である生活保護の枠組みを崩すことになるので選択できない。
③ 住宅セーフティーネット制度の家賃低廉化補助の運用基準を緩和し、以下の事柄を実施すること。
最近まで家賃低廉化の対象はセーフティーネット住宅の専用住宅のみで、しかも応募入居(新たに入居する、つまり転居)が前提であったが、昨今の制度改正で既住物件をセーフティーネット住宅として登録できるようにはなっている。また、家賃低廉化補助の収入要件は、月収15万7千円であるので住居確保給付金よりも手前で支援できるが、いくつかの課題がある。
1) 実施自治体を増やすこと。
実施自治体が少ないのは、自治体の費用負担(1/2)がネックになっているため。この際、国の負担分である(1/2)のみ実施する。現在、家賃低廉化補助は、コロナ緊急枠として上限が8万円となっている。国の負担する4万円でも対応できるケースは少なくないので、国の負担部分を先行実施する。
2) 生活保護受給世帯も家賃低廉化補助の対象とすること。
現在、生活保護世帯は、家賃低廉化補助の対象から外されているが、これを対象とすること。
④ 居住支援法人がこれらの課題に対応できるようにすること。
相談支援のための費用負担の仕組みを創ること。

5、 「生活保護体制の強化」
今後、生活保護申請が増加することが予測されますが、生活保護に対する否定的感情、つまり「保護を受けるぐらいなら死んだ方がいい」と考える困窮者も現に存在しています。
これは生活保護を「最後のセーフティーネット」として進めてきた政策に原因があったと言えます。そもそも生活保護法第一条は、「その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする」と明記されています。「自立の助長」を考えると、「すべてを失った後」の「最後の手段」として生活保護を活用するのではなく、もっと手前、ある程度気力、体力、資力があるうちに支援することが重要です。
「最低限度の生活」を強調し過ぎ、結果「最低限になるまで助けない」という制度になることで「自立の助長」には寄与しない制度になっていないか心配です。結果的にすべてにおいて「手遅れ状態」となり社会的コストが高額になります。「風邪薬で治るのを放置し、肺炎になって助けている」ということです。
生活保護申請のハードルが高すぎる現状において、生活保護申請にも至らず自殺を選ばざるを得ない人が増えることになることは絶対に防がねばなりません。もし、申請自体できないということになれば、生活保護制度の存立自体を揺るがすのみならず、国の必要性さえ揺るがす事態となります。
そこで以下のことを提案したいと思います。
① 生活保護を「入りやすく出やすい制度」とすること。
「最後」ではなく「手前」のセーフティーネットとすることで早期の自立を目指すことが出来る。生活保護予算増額に否定的な意見も少なくないと思われるが、例えば「被保護者が増えても保護予算は増えない政策」を第一歩として模索することは出来るのではないか。
② 生活保護のスティグマを取り除くための啓発を強化すること。
③ 「扶養紹介」は実際には意味がないので廃止すること。
「扶養紹介」は、スティグマを生み、家族の縁を切ってきた。
④ 家族は、自立助長支援者として位置づけること。また、家族支援のプログラムを創設すること。
⑤ 資産等の要件を大幅に緩和すること。
⑥ 他法優先の原則を見直すこと。
特に生活困窮や住宅セーフティーネット等の併用を可能にする。
⑦ 給付とケアを分離すること。
現在の生活保護(ケースワーカの働き)は、給付管理に重点が置かれている。結果、ケアが常に不足している状態だと言える。給付とケアを分離し、ケアはNPO等の専門チームに委託することを検討する。そもそも給付の権限者がケアを担うこと自体に困難さが伴う。

6、 おわりに―本当の「公助」を求めて
今、この国は試されていると思います。それは新型コロナ感染症にどう対処するのかということのみならず、影響を受けた生活困窮者に対して私たち社会がどう対応するのかが問われているということです。
かつて英国首相サッチャーは「社会は存在しない」と発言しましたが、現在の日本で「社会は確かに存在している」と私は胸を張って言えるようになりたいと思います。「自助」は何よりも大切です。それは個人が自分の人生を自ら選び取り、自分の自身の物語を生きること、すなわち「自律」が何よりも大切だからです。この「自律autonomy」(自立Independenceではなく)を応援するのが、社会保障制度であり、その責任を負う社会の目的であると考えます。
自律には「自助努力」が不可欠でが、そのためにこそ「共助」や「公助」が必要なのです。「私達もあなたのことを応援する、行政も国も全力で支える、だからあなた自身も頑張って」と言える。これこそが「社会が存在している状態」であり「自助」が大切にされている社会なのだと思います。「まずは自助で」、あるいは「最後は公助で」と言ってしまうことは、実は「自助」をないがしろにすることになります。「助」を序列化し「公助」を後回しにすると、社会の存在意義を脅かすことになりかねません。
私は、困窮者支援の現場で「社会とは何か」を考え続けてきました。それは社会を考える上で「公助」、あるいは「公」とは何かを問うてきた日々であったとも言えます。
「自助、共助、公助」と表現される時の「公」は「国」、あるいは「行政」を意味していました。つまり、これまで言われてきた「公」は、「官(国家の機関、役所、政府)」を意味していたのです。「最後は公助」という言葉の意味は「最後は国が助けます」ということです。それは厳密には「官助」だと思います。
「官」は、リーマンショック以降、生活困窮者自立支援制度をはじめ様々な制度をつくり、その義務を果たしてきました。今回の事態においても多くの人々がそれらの制度を活用していますが、一方で、これまであまり想定されて来なかった人々、例えば自営業や自営業やフリーランス、女性などの現状が明らかになってきています。
ポストコロナが話題となっていますが、私は今回の危機においても、前回のリーマンショック同様に、私たちは学び、考え、創造し成長しなければならないと思います。「コロナ緊急対応」でなされた様々な施策の中で「コロナ前から存在した問題に対応した施策」があります。これらは、「緊急」ではなく普遍的な仕組みとするべきです。例えば、家賃に関わる問題や貸付金の限界、特に生活保護の在り方などは、かつてよりあった問題でありコロナによって顕在化したと言えます。今後の「官助」の在り方としてこれらの施策の恒久化についての議論が必要です。
最後に、すでに触れた「公」について述べます。これまで「民であらずば公」という二元論で思考してきました。ここにおいて「公」は「官」を意味していました。
しかし、本来「公(public)」は、自(助)、共(助)、官(助)を包括する概念だと思います。私たちは、コロナによって「全員当事者」という事態に生きることを余儀なくされています。つまり、「自分」、「他者や地域」、そして「官」が一体としてこの事態に立ち向かわなければならないのだと思います。だからこそ、これら三つの要素を包摂する「本当の公(public)助」が求められていると思います。
先に申し上げた「社会は存在しているか」は、「本当の公は存在しているのか」であると思います。自己や身内の責任を問い、自己責任論を盾に「他者や地域、社会」、何よりも「官」の責任が曖昧にならないようにするためにも、あるいはすべてを「官」だけに押し付けてしまわないためにも、すなわち私たちが自己の主体をもって自律的に生きるためにも、「本当の公」を議論したいと思います。
「本当の公」が存在する時、誰ひとり取り残されることのない社会が実現すると思います。この意味で、「自助、共助、官助」は、「本当の公」を構築する要素であると思います。私自身も「本当の公」の一翼を担うために現場で踏ん張りたいと思います。

以上が、私の意見です。ご清聴ありがとうございました。

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