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なるたる



なるたる - 鬼頭莫宏/アフタヌーン/全12巻(1998-2003)

最近マガポケで公開されたのをきっかけに序盤何話か読んで、昔読んだことあるんだけど全然昔すぎて今の自分の新しくなったレンズでもう一回この話を通したらどうなるか気になって(てか純粋に先が気になりすぎてポイント溜まるの待てなくて)、ダンボールに詰めていた単行本を全部出してきて最近一気読みしました。いやー、おもろいっす。ぼくらののジ・アースとか見たときもまず物語とか前評云々よりデザインかっこよ!みたいな感想が第一で、何にも例えられないような生物っぽい異形の、それでいてものすごく無機質で淡白な質感がすごく惹かれるものがある。ブレンパワードとかも好きです。サキエルも。ああいうちょっと昆虫とか爬虫類っぽい感じと無機質っぽさが同居してるのが自分のフェチなんだと思う。なるたるもそんな感じで、冒頭出てくる竜のデザインからして俺が今まで見てきた竜っていう概念を簡単に飛び越えて天井突き破ってしまうようなクールなデザインで、今見ても普通に一瞬で惚れた。最初に読んだのは高校生の頃で、今はもうつぶれてしまった漫画喫茶と、卓球場とかカラオケとかビリヤードとかが合体した地元の施設があって(快活クラブのしょぼい版みたいな)、そこにこの漫画が置いてあって、学校帰りに毎日通って読んだ記憶がある。子供もたくさんくる場所なのに普通にベルセルクとか置いてあった(それもそこで読んだ)。なるたる、普通に怖いし、ハードだし、ストーリーも行間を読まくてはならない箇所が多いのもあってジャンプしか読んでなかった自分にはたぶんしっくりきてなかったはずだけど、先ほど述べたデザイン云々で惹かれるものがあったのだろう。貪るように読んだ気がする。あとメインキャラが平気で死ぬから、最後終わったとき誰が生き残ってるんだろうと好きなキャラ死んでほしくないからそれを見守るために先が気になる。キャラがよく死ぬ漫画ってそれだけでページが進む。手元に置いておきたいなって思ってその後中古で全巻セットを買ったけど、説明も読まずに爆安のやつを買ったら「自由空間」てラベルのついたレンタル落ちが届いたのは笑った。元々漫画喫茶で読んでものだったから。

なるたる、少年少女によるスタンドバトルで、アニメのOPも好きだけど本編を考えるとかなり性格悪いなと思ったし、漫画も今改めて読むと序盤めっちゃほのぼのとした離島の描写がギャップすごすぎて笑ってしまった。あと作中はっきりとは明言されてないけど、竜の子に呼びかけられてペアリングした時点で数年以内に確定で魂同化するっぽいし、ぼくらので序盤いきなり死を宣告される子供達とほぼ変わりない、説明されないことの残酷さが理不尽すぎて今作というかこの時期の作者の色が出てる気がする。具体的な例を出すわけじゃないが、ちょうどこの作品が連載された00年代とかに自分が見てた漫画とかアニメとかラノベとかって結構こういう理不尽な死、それこそ交通事故とかああいう別れの描写が多くて子供ながら無常感が胸に突き刺さること多かった。あと印象に残ったのが川にゴミ捨てた不良達を須藤が銃で全員殺すシーンで、全く人が死なない同作者による自転車漫画ののりりんで主人公のノリが「おかしい」て思ったこと、理不尽だったり思いやりのない、ルールを守れない人に対してかなり正直に立ち向かっていく描写があって、そこが真摯で好きなキャラではあるんだけど、割とやってることは近いラインにあるしこれも作者の作風の一つというか色なのかもしれないと思った。あと主人公のシイナがめちゃくちゃチャリ乗るんだけどチャリの描写多すぎるし描き込みすごすぎてこの頃から片鱗があるし、ずっと自転車しか出てこないのりりんを後に描いたのってマジで趣味というか楽しかったんだろうなとか考えてしまった。ラストについて。賛否両論ってか丸投げって言われてるけど、確かにラスト二歩手前くらいはもう世界終わるしかないでしょってくらいあらゆる場所が崩壊しつつも、随所に希望が散りばめられているし、和解シーンもあってまだまだ前を向けそうな感じだったのにも関わらずこれだもんな。突如デビルマン化。終わり。のり夫の最後のあれももしかしてデビルマンオマージュだったのかと考えるとあの時点でというかあの描写自体が伏線だった可能性もある。リアタイで追ってた人の気持ちは確かに想像に難くないけど、でもこう、地球からデカい手がたくさん出てきて全部めちゃくちゃにするシーン、作者本人が12巻積み上げてきたこの漫画を自分の手で破壊してるみたいに見えて仕方がなかった。とあるブログで世界を壊したがってた須藤本人が作者を投影してるって批評を見たことがあるけど、それは確かにその通りだと思う。須藤、後半ボス戦っぽい演出で登場したくせに、衰弱していて戦闘すらない、本当に何もしないで死ぬけど、あれももう疲れてて終わりにしたかった作者の投影だと思うとちょっと面白い。アキラも色々あったけど良い感じに収まりそうに見せかけてあっさり終わる。あれってもうどうせ終わりだから最後に和解っぽくしとくかみたいな感じだったのか?と邪推したくなるほどあっけない。もうほんとに全部虚無。そして「かけがえのない命なんてありません」と言い切ってしまうあとがき。嫌な切り抜き方をしてしまいましたが全文読むとほんとに名文のあとがきです。あと好きなシーンとして、いや好きなっていうか記憶に残ったところと言えば、学校で竜使っていじめっ子全部に復讐するシーンで、救いをちゃんと用意したにも関わらず全部手遅れで、はっきりと行き違いの断絶を持ってくる絶望感よ。マジでしんどいけど、それはそれとして美しい。普通に色々性格悪いな・・・て思ってしまう漫画ですが好きな漫画です。一番好きなキャラは実生です。実生から秕の名前へ繋がるシーンかなり良かった。序盤からちょくちょく顔を出してたの普通に妹に会いにきてただけっぽいの萌え萌えじゃんって思った。今回ダンボールから取り出して読み終えて、本棚には戻さずそのままダンボールに閉まったけど、たぶん10年後とかにまた取り出して読むんだろうなと思う。のりりんはダンボールにしまわず本棚にずっと置いてあります。今でも。


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