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少年少女


少年少女 - 福島聡/BEAM/全4巻(2001-2004)

オールタイムベスト漫画。大好き。好きな漫画家を聞かれたときに福島聡って答えたくなるのはこの作品が根底にあるからだと思う。本人も後に「少年少女の成功と、機動旅団八福神の失敗と」と語っていたので代表作になると思われる作品。少年少女たちを描いた全4巻の読み切り作品集、と思って読んでると意外と話が繋がっている。でも意外と話が繋がっているらしいと思ってその認識で読むとたぶん全然そうでもないかも。そんくらいのバランス。死は身近だし、死ってめちゃくちゃ怖いけどそれをあまり重くなく見せない作風で、でも少しずつ、少しずつ読み進めてく内にその重さは自分のコップの中にちょっとずつ沈殿して底に溜まっていくような漫画だと思う。

同級生の女の子の胸を触ろうとして突き飛ばされ井戸に落ちて頭を打ち死んでしまった少年と、殺してしまった少女の話から第一話は幕を開けるのだが、こんなギャグマンガみたいな導入からその後の顛末をしっかり描いていく。切なくて甘酸っぱい。そしてちゃんと重い。この第一話「触発」に関する話は定期的に登場する。間に何度も挟まれるたくさんの短編によって時間の流れを感じてしまい、数話とは思えないくらいこの物語の存在感が大きい。どの読み切りもグイグイ引き込まれる力があるのは間違いないけど、顛末をしっかり描かないというかオチをつけずに余韻を残す感じの話が多い。個人的に「自動車、天空に」と「憂鬱と薔薇」が大好き。自動車、天空には最初読み終わったときポカンとしてしまって、でもずっと頭の中に残ってる忘れられないような物語で日に日に存在感を増していった気がする。なんてことのない、一人の少女が中学、高校、結婚、出産を経る中で、いつ行ってもまるで変わらないスクラップ自動車工場とのおっさんの出会いと会話の記録。あと自動車が飛ぶ。日記を書くにあたってパラパラと読み返したがそれでも涙が出そうになった。憂鬱と薔薇は今読み返すとこういう百合マンガフォーマットめっちゃ見るなと思うが、淡白に見えてめちゃくちゃガツンとくる。鬱病を気にかけてくる友達を鬱陶しそうに脳内で悪態をつきまくってるくせに、ちゃんと差し入れしてくれた本は全部読んでたりするのが良い。オッラーで爆笑した。本当に良い漫画だと思うので誰にでも貸したいです。


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