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女子攻兵


女子攻兵 - 松本次郎/BUNCH/全7巻(2011~2016)

ここ1~2年の間で読んだなんとなく買った旧作漫画とかの中で一番衝撃を受けたかもしれない。ヤバイっす。松本次郎はIKKIのフリージアのイメージが強くて今やってるビューティフルプレイスもめちゃくちゃ面白いけど、女子攻兵ってあまり周りで話題に出す人もいなかったしSNSの漫画好きの人たちのログにも無くて完全にノータッチでした。女子高生の形をした巨大ロボに乗って戦争をするおっさんが主人公の漫画で、なんとなくその設定だけは前々から知ってたけどそれ以外一切わからず、そこにあんまり魅力を感じてなかった。女子高生の必要あるんだろうかとか、何かやりたい描写があったんだろうけど自分に合ったフェチではないかも・・・くらいの認識で読み始めたら実際は大前提として練りに練られた緻密な世界観があって、その舞台装置として必須な要素だったことがわかってくる。実際ロボットってよりは完全に生体兵器です。脳みそがコックピットになっているがそれ以外はほぼ人間と同様で、腹を銃で撃ち抜かれたら血と内臓が飛び出す。女子攻兵状態で飯も食う。性行為もできる。そのまま栄養補給できるようになってるっぽくて平気で数か月乗りっぱなしとかもあるらしく、パイロットは搭乗を繰り返す度に精神汚染され自分を本当の女子高生だと錯覚していく。存在するはずもない家族や彼氏から携帯にメールや電話が繰り返し届くようになる。パイロットは軍から完全に使い捨てとされていて生身で出てくるシーンがかなり少ない。同じ部隊で戦っていても生身の顔を知らないってこともあり、リアルで会うことをオフ会と言ってるのが良い。00年台前後のロボットアニメをチラつかせるけどR-TYPEっぽいなとも思いました。異次元が舞台だし。一体どこから妄想でどこからが現実なのか、常に自分がどこに立っているのか曖昧になってくる壮絶すぎるSF作品。何を信じ、どこに立てばいいのか。真実に近づくにつれて混乱と狂気に満ちていく終盤の流れが壮絶。これで7巻でキレイに幕を閉じてるのも完璧。あと敵のデザインが秀逸すぎる。相手も女子攻兵だけどEZOの繰り出す爬虫類や昆虫っぽいスーツを着たビジュアル、虫のような足がたくさんついたヘリコプターとか毎度衝撃を受けてた。本当にかっこよすぎる。沙村弘明の無限の住人の戦闘シーンみたいな、荒々しく尖った線のタッチが生み出す躍動感のある駆け抜けてくような描写もかっこよすぎる。このファジーな線が映える背景の描き込みもすごすぎる。それをこんなに整理整頓されたコマ割りあるんだってくらい、きっちり綺麗に配置された構成は絵の躍動感やカオスなストーリー本編とは対照的なようで、これも何度読み返しても最高にかっこいいです。本当に素晴らしい漫画だと思います。


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