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スイミング


スイミング - 福島鉄平/ヤングジャンプ/全1巻(2014)

中学~高校生のとき毎週友達が買ってくれたジャンプとかを読んだりコンビニで立ち読みしたりしていて、それはよくなかったよなと思って働くようになってから電子書籍で毎週買ってあの頃の贖罪みたいな気持ちでアンケートを出し続けるようになった。ジャンプは入れ替えが激しいので好きだった作品が打ち切りになると悲しんでいたが、でもアンケートに参加してなかった時点でそれは応援を一切してこなかったんだから何も文句言えないよなっていうもやもやがずっとあったのだが、電子書籍版でもアンケートに参加できるようになりその問題はなくなった。本当に素晴らしいと思う。スイミング、同作者のサムライうさぎが中学生のときやってたのを結構覚えている。BLEACHとNARUTOが楽しみで仕方なかったあの頃の自分には割と難しい漫画だった記憶がある(最初からヒロインと結婚していたというのも、中学生の自分の感覚ではあまり合わなかった気がする)。今ではもうジャンプ+で知られている放課後ひみつクラブの人ってなってしまったかと思うけど、自分は好きな短編集を挙げろと言われたらまず市川春子の「虫と歌」かこの「スイミング」を挙げるでしょう。それくらい素晴らしいと思うし、文句なしにオールタイムベスト作品。同時発売でもう一つアマリリスっていう短編があって、放課後ひみつクラブはかわいらしい絵柄とほのぼのとした作風から突然じわじわと毒が体に回ってくるような感覚があるけど、あの毒っ気はアマリリスが担当している。スイミングは単純にビッグなLOVEにまみれた読むたびに暖かい気持ちになれる作品。短編集だけどどれが一番好きって言いきれないくらい全部良い。とくに表題作のスイミングはなんとなく6年間同じ水泳教室に通い、小学~中学も一緒でたまたま進学先の高校も一緒で・・・っていう二人の男女の物語で、ガラスみたいに繊細な二人の距離感がそれぞれの視点から描かれていて、コミュニケーションが少ないが故の二人の視点にドキドキが止まらない。遠すぎず近すぎず、一歩引いたところから描かれるあんまりハッキリしない恋愛前夜みたいな作品ばっかりで、連載とりたかったけどその願いは叶わなかったとあとがきで書かれてたけど、確かに少年ジャンプってフィールドで見るならかなり攻めた作風だと思う。というか実際中学生のときサムライうさぎがよくわからなかったって俺は自分で言ってるし、だからこそ今読み返してみたいなと思うし、もし今、ジャンプ買ってスイミング諸作のような短編が収録されていたらかなりテンション上がっていたと思う。どの話も本当に良いけど、このあと二人は順風満帆ってわけでもないだろうなとぼんやり思っちゃうような良い感じの読後感がある。唯一ジャンプっぽい開幕の"あんねちゃんたろう"も大好き。愛がデカすぎるので。とにかくキャッチーでハチャメチャなヒロインのお嬢様が破壊的すぎて今の作風に通じる気がする。あと勉強のため少女漫画を読んだら見たことない表現だらけでたまげたと書いてあって、少年ジャンプではなくジャンプ+という場で連載されているのも含めて、今やってる放課後ひみつクラブってやってきたことの先に一番幸せな形で収まってるんじゃないかとすら思ってしまった。


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