見出し画像

結末の国のアトー


結末の国のアトー - 土藤山夜/KADOKAWA/全2巻(2022~2023)

たまたま本屋で見つけて表紙のデザインが気に入ってそのまま買った漫画。かつて栄えた巨大な王国が世界中に残した不発弾を回収して回る、心優しく純粋な少年アトーの悲しすぎる旅路を記録した二冊。アトー、いい子過ぎる。彼はその王国の唯一の血筋で改造された子供らしい。その不発弾自体が美しい装飾品で、もう世界中に残って愛されてしまっていて、行く先々の街中で出会うたくさんの人たちの生活の中にすっかり溶け込みたくさんの思い出を受け取ってしまっている。それを「いつ爆発するかわからないから」という理由で破壊しなくてはならないアトーと、その人々とのドラマを描いたファンタジー作品・・・みたいな感じだけど、普通に、めっちゃきつい。ただの爆弾ってわけじゃなくて恐ろしい呪いの物質で、アトーが全身に苦痛を受け寿命を縮めながら体に取り込んで破壊する描写とか、不発弾ってだけで実際ほとんど発動する可能性は無いのにも関わらず、一人の子供が全部背負わなきゃいけない状況とか、結構もう1話2話で全部わかってしまうんだけどほんとにこんなしんどい感じでずっと行くんですか?という気持ちで読んだ。でもアトーに関わる大人の人が全員優しいし、アトーを送ってる軍側の人たちもほとんどみんながこの状況に疑問を持っていてなんとかしようとしていて、アトーを愛していたことが救いだった。この要素がなかったら正直読み続けることはできなかったと思う。アトーはちゃんとわかった上で良い子供であろうとしてるのも胸が痛くなる。打ち切りだったが、ずっと素朴で暖かい作品だったし読めて良かった。呪物の設定が一つ一つ、破壊する前にそれがどんなものなのか、何を引き起こす兵器なのかを説明するパートが異常に力が入っている。小さいころ読んだ絵本の中の童話みたいな感じがあって拘りが見える。呪物に掘られている模様にも全部ちゃんと言葉のモチーフがあって、持ち主とのドラマの中でそれが一つのフックになるんだけど、後半になるにつれてそもそも呪物の正体や起源について遡っていくと、その刻まれた文字に全く新しい見え方・解釈が生まれてくるのがゾワっとくる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?