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Cloud Nothings - Attack On Memory(2012)


Cloud Nothings - Attack On Memory(2012)/Carpark Records

愛聴盤。Carparkよりリリースされたフルアルバムとしては2枚目(編集版入れると3枚目)にあたるアルバム。Carparkと言えば真っ先にCloud NothingsとSpeedy Ortizを連想する。当時まだ全然海外の音楽シーンとかインディーロックとかわかってなかった自分でも結構聞きやすかったアルバムで、ここ数日SNSで名前を見かけることが多く、自分もその流れで毎日レコードで聞いているが改めて完全に喰らっている。当時海外シーンを熱心に掘っていた人たち以外からも名前が上がることが多く、NUMBER GIRLやART-SCHOOLといった国内のバンド達と名前を連ねて語られるのも何度も見たし、サブスク以前だったにも関わらず幅広く聞かれてたイメージがある。アルビニ録音っていう話題性もあったし。単純にしっかりメロディーがあってリズム隊がラウドでギターが歪んでてシャウトがあって・・・ていうそれこそ専門的な音楽の要素だとかジャンルやルーツだとか文脈を一回全部切り離して(実際さっきの2バンドは今思えばルーツは全然違うだろうし)、誰でも共有できる感覚的な部分で共通項が多かったのもそういった国内の音楽を聴いていた人に入りやすかった要因の一つだと思う。初期の方は割と当時のインディーポップっぽい感じで実際にReal EstateやBest Coastと共演していたらしいし、その頃の編集版「Turning On」も名盤で今でも大好きです。でも割とその辺のインディーロック系の00年台以降のちょっとキラキラした、リバーブが効いててドリームポップにも少し近づけそうな感じとはTurning Onはまた違った趣があったアルバムだと思う。Pavementの1stみたいなガチャっとしたローファイ感というか、ぶっきらぼうなローファイさとメロディの人懐っこさが良かった。90年台的って言い方はまたちょっと違うのだけど、そういう初期PavementとかGuided By Voicesみたいな色がTurning Onにあって好きだった。実際スティーヴ・アルビニと組むのでVoicesはアルビニとも出してるしこじつけ的に関連付けることは可能だが、Cloud Nothingsは割とそういう90sインディーとかグランジとかポストハードコアとか一切関係なく「部屋で録った感じにしたかった」っていう動機がめちゃ良い。10年代前半と言えばチルウェイブとかもあったし、そこと距離の近かったインディーポップとして括られてたはずの彼らが、こんなに生々しく殺伐としたサウンドでただただ生演奏と擦り切れた叫び声を上げたっていうのはリアルタイムの人にはやっぱそれだけ衝撃があったんだと思う。ギターをかき鳴らして声を荒げるかっこよさみたいなのが詰まっている。ジャケット通りモノクロームで灰色な世界を想像させてくれる張り詰めた緊張感のあるNo Futer/No Pustの衝撃は忘れられない。M2で何かに追われてるような焦燥感にまみれたWasted Daysの切迫としたメロディーと、鬼気迫るようなおそろしいまでの走ってる感じからWipers的なカオスなノイズ展開が長く続くのも驚きだった。流石に今聞いてもとてつもない名曲ですね。2曲とも前作までの印象だとこんなに荒廃とした曲がCloud Nothingsから出てくるのか・・・ていう衝撃があったし、それをアルビニによって録音したという説得力が申し分ない。Fall InやStay Uselessは割と前作までの路線を受け継いだメロディーが映える風通しのいいポップナンバーで、でもちゃんと最初の2曲と同じ録音の質感を受け継いでいるため爆撃機のように破壊的なドラムの音がめちゃくちゃ映えて死ぬほどかっこいい。リズム隊が立体的すぎてここにしかない疾走感がある。それを更に加速させるインストのSeparationを挟み、後半の3曲は全部どこかくたびれた、枯れていてそれでいて風通しの良さのある珠玉のB面。全曲ほとんど優劣つけることができないアルバムの流れ含めて本当に完成された名盤。コンパクトにまとまってて通しでも聞きやすい。やっぱ最初でも触れましたがあんまジャンルに与する感じじゃないのが今聞いても新鮮でいいなって思います。ギターロックファンにも刺さったのってそこだと思うし。アルビニ繋がりからNirvanaやPixeisと並べてグランジとして語るとしても違和感が残るし、Shellacとも全然違う、ポストハードコアとしてNation Of UlyssesやFugaziと並べても、同じファンにアプローチできる音楽だとは思うがセットで聞くものとは思えない。それこそTurning Onから大きく飛躍してしまったのもあり、さっき例に挙げたPavementやVoicesともまた違うと思う。これ系のアルビニ録音の作品として聞くにしても、Attack On Memoryは意外とギターが硬質ではないというか、ジャリっとした金属的な質感はないため結構新鮮だと思うんですよね。普遍的だからこそ孤高の位置にいる、見方を変えればどこを入り口としても聞ける、クラシックとして残り続ける作品だと思います。


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