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「まち協」は住民自治組織じゃない

≪おごおりト-ク21≫

現在「まちづくり条例(仮称)」の策定に向けた作業も大詰めを迎えていますが、一方では、「まちづくり協議会(以下、まち協)とは何なのか?」ということが十分に共有化されていない実態もあるようです。

「まち協」をめぐっては地域の関係者や議員、職員間でも様々な意見があり、それぞれの認識や考え方には大きな差異がみられます。その原因は、そもそも「まち協」に関する基本的な認識が共有されていないことに起因しているのではないかと思うのです。
そこで、今回、この機会に今一度「まち協」に関する基本的な認識(おさえどころ)について自分自身の考え方を整理してみたいと思います。

まずは、「まち協」という組織が小学校区に設置された経緯から振り返ってみます。
その発端は、平成24年度から小郡市の施策として推進されている「協働のまちづくり事業」にあります。
なぜ、この「協働のまちづくり事業」が推進されたのか。それは、今後の少子高齢化・人口減少の影響により発生する様々な住民生活に関わる問題に対して、行政だけでは対応が困難になる状況が予測されており、将来的にこれら地域課題を解決していくためには、市民主体のまちづくりの実現と自治会を中心とした新たなコミュニティの活性化が必要になっているという認識に基づくものです。
そして、この「協働のまちづくり事業」を各小学校区において具体的に推進していく組織として「まち協」が設置されたのです。
そのため、「まち協」に対しては、校区推進員の配置による人的支援、交付金・補助金による財政支援、校区公民館での活動拠点の確保、などの行政支援が行われています。

この「協働のまちづくり事業」が目指したものは以下の3点です。

①市民主体のまちづくりの実現
市民の自主的・主体的なまちづくり活動を通じて市民のまちづくりへの参画を促す

②地域の実情に応じたまちづくりの実現
行政の一律的な事業ではなく、地域実情や特性に応じた多様なまちづくりの実現

③自治会等を新たなコミュニティの中で活性化
自治会や各種団体・組織との連携により、それぞれの活動の活性化を目指す
※「小郡市協働のまちづくり実施計画」より引用

この中で特に重要なのは③点目、小郡市の協働のまちづくりは「地域の自治会や各種団体との連携によってそれぞれの活動の活性化を目指したもの」で、このことから考えれば「まち協」は自治会や各種団体の活動の活性化を図ることを目的として設置された組織ということになります。

今後「まちづくり条例(仮称)」の策定とあわせて、これまで10年間にわたって取り組んできた「協働のまちづくり事業」の成果と課題が総括されると思いますが、その際に重要なのは上記の3点、つまり「協働のまちづくり事業」を推進することによって
①市民主体のまちづくりは進んだのか?
②地域の実情に応じたまちづくりは実現できたのか?
③自治会や各種団体の活動は活性化したのか?
という観点からの総括が必要になると思います。

では、本論である「まち協とは何なのか?」について考えてみたいと思います。
実はその答えは、平成26年度に策定した「小郡市協働のまちづくり実施計画」の中にあります。
実施計画では「まち協」と自治会との関係性について述べられており、
「まち協は校区の自治会や各種団体との連携・協力のための共同体であること」
「それぞれの自治会が行う地域活動を、まち協は重層的に補完するものであること」
「まち協が設置されても、従来の自治会の役割がまち協に移管されるものではないこと」
の3つが記載されています。

実施計画にあるとおり、今もなお「まち協は、校区の自治会や各種団体との連携・協力のための共同体」です。なので、そもそも「まち協」には会員という概念がありません。あるのは構成団体という考え方だけです。
「まち協」の構成団体に校区内のすべての自治会が参画していることから、あたかも校区内の住民が「まち協」の会員であるかのような外観に見えますが、実際は校区内の住民一人ひとりが直接的に「まち協」に加入している訳ではありません。
校区内の住民と「まち協」との関係は、一人ひとりの住民は自治会に加入しており、その自治会が「まち協」の構成団体として参画しているという間接的なものです。
「まち協」によっては、規約上で校区住民を会員として位置付けているところもありますが、厳密にいえば校区内の住民は「まち協」の会員ではなく、意味合いとしては「まち協」の事業対象者ということになると思います。
※「会員」の定義によってそれぞれ違いはあると思いますが、自らの意思により直接的に加入申請しているという意味での「会員」であれば、校区内住民は「まち協」の会員ではありません。一方、当該団体の事業活動の対象者という意味での「会員」であれば、校区住民は「まち協」の会員ということになります。

また、仮に規約上で「校区内の住民が総会での議決権を有する」と規定されていたとしても、それは校区内住民を会員としている旨ではなく、構成団体である自治会の意思決定機関への参画の一形態として捉えることができます。

実施計画の中で「まち協はそれぞれの自治会が行う地域活動を重層的に補完するものである」「まち協が設置されても、従来の自治会の役割がまち協に移管されるものではない」とされている意味は、そもそも「まち協」は自治会に屋上屋を架した住民自治組織ではないことを意味しています。
小郡市の地域自治の基盤は自治会活動にあります。「まち協」はこの自治会活動を校区単位で重層的に補完するものであり、自治会を代理してまで住民生活に関わる課題解決に直接的に取り組む組織ではありません。

以前も述べましたが、ある「まち協」で住民からの要望により街路樹伐採の取り組みが提起されたことがあります。
しかし、これは住民の負託を受けている自治会がまずは取り組むべき課題であって、「まち協」が住民要望を受けたからといって当該自治会の意向も踏まえずに取り組むべきではないという議論をしたことがあります。
この事例が示しているのは、自治会と「まち協」のそれぞれの活動領域(棲み分け)の考え方です。
住民から直接的に負託を受けている自治会は、あらゆる住民生活に関わる課題をその活動領域としており、その意味では「総合的」な機能を有しているといえます。
しかし「まち協」は違います。「まち協」の具体的な活動は、構成団体の意向に応じてその合議で決定することになるので、そもそも全ての住民要望に応える必要はなく、その活動領域は「限定的」なものとなります。

つまり、住民生活に関わる総合的な地域課題の解決にあたるのは自治会の機能ですが、自治会だけでは対応ができない課題や広域的な対策が必要となる課題について、あくまで構成団体である自治会からの意向を受けて課題解決にあたるのが「まち協」の機能ということになります。(自治会を例にしていますが、このことは各種団体でも同様です。)

自治会と「まち協」の活動領域(棲み分け)が不明確だという意見もありますが、その指摘は適当ではなく、自治会と「まち協」の機能や特性の違いを踏まえれば、その役割は自ずと明らかになると考えています。
何度も繰り返しますが、「まち協」は自治会のように住民から直接的に負託を受けた「総合的機能」を有する組織ではなく、あくまで校区の自治会や各種団体との連携・協力のための共同体です。(この地域の共同体という性格がとても重要だと思います。)

もし仮に、「まち協」が校区内の全住民で構成される住民自治組織だと主張するなら、それは自治会と同様に住民から直接的に負託を受けた「総合的機能」を有することになり、そうなるともはや「まち協」は共同体ではなく、自治会を重層的に補完する組織でもありません。
それは自治会の上にさらに同様の組織を重ねただけの「校区版自治会」であり、協働のまちづくりの趣旨と逆行した自治会不要論につながりかねません。
小郡市の「協働のまちづくり事業」が目指したものは、そんな住民自治組織としての「まち協」ではないことは明らかです。
(2022.7.2)

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