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まちづくり条例へ続く道

≪おごおりト-ク20≫

皆さん、お疲れ様です。現在、小郡市では今後のまちづくりの指針(方向性)となるべき“理念条例”として「まちづくり条例(仮称)」の制定が検討されています。
今回は、この「まちづくり条例」に関していくつかの視点から私の考え方を述べてみたいと思います。どうぞ、お付き合いください。

まずは“理念条例”についてです。
そもそも“理念条例”とは、行政や地域の基本的な考え方や方向性を基本理念として明示したもので、まちづくりにおいてそれぞれの地域の現状と課題を集約し、市として優先順位の高い重要課題であると位置づけ、その課題解決に向けた対策や具体的な取り組みに関する一定の考え方や方向性を理念として取りまとめたもの、ということになります。

“理念条例”の内容としては、一般的に基本理念、施策の方向性、それぞれの当事者の責務規定等が盛り込まれます。
そのため条例の立案にあたっては、現状における問題意識や課題の共有化など当事者間で時間と労力をかけて一つひとつ論議を積み上げていく必要がありますし、条例は策定すれば終わりではないので、制定後も問題解決に向けて地域全体が継続した活動を行っていくことが共通認識として醸成されていなければなりません。

“理念条例”だからといって策定過程において必要なプロセスを簡略化・省力化できるものではなく、“理念条例”であればこそ、その過程においてどれだけ地域住民や職員との対話や課題の共有と意見集約ができたのか、どれだけ合意形成のプロセスを踏むことができたのか、これからのまちづくりを展望する条例としてどこまでその理念を共有化することができたのか、ということが重要になると思います。

「まちづくり条例」は個別の政策条例とは違い、小郡市の将来のまちづくりにおける考え方や方向性を規定する“理念条例”である以上、まちづくりの当事者である地域住民との合意形成に向けたプロセスが欠かせません。
では、その合意形成のプロセスはどのように確保されるべきなのか。私は、まずはまちづくりの当事者である自治会やまち協関係者等による対話と協議の場が設定されるべきだと思うのです。

まちづくりの課題を考えるとき、その地域活動の主体やステージは様々ですが、地域包括ケアシステムにおける生活圏域の考え方では、市全域(第1層)、小校区(第2層)、自治会(第3層)の3つの階層に分けられており、それぞれの階層(ステージ)における地域活動の現状と課題があります。

特に、小郡市の地域自治の基盤となる自治会圏域(第3層)においては、地縁組織である自治会を中心に様々な住民主体の地域活動が行われていますが、その中では少子高齢化や人口減少、役員の高齢化や担い手不足の問題が深刻化しています。最近ではコロナ禍の影響により地域活動を中断せざるを得ない状況も続いており、今後の地域活動の継続性が危惧されています。
また、自治会圏域(第3層)においては、個別課題としてふれあいネットワーク活動や自主防災活動など自治会活動と密接に関連した取り組みも行われています。行政施策としてこれら個別課題における今後の方向性を検討するにあたっては、やはり自治会活動との一体化や地域課題の共有を図っていくことが必要になります。
そのためには、まずは自治会活動に関わる当事者自らが、自分たちの住んでいる地域の現状と課題を共有化し、今後の持続可能性のある地域活動をどう展望していくのかということを考える場の設定が必要だと思うのです。

また、小校区圏域(第2層)での地域活動としては、校区単位で取り組んでいる「協働のまちづくり協議会(以下、まち協)」の活動があります。
このまち協の課題については、以前も述べましたが、平成26年度以降、各校区にまち協が設置されてから9年間にわたって様々な地域活動が展開されてきた中で、その組織や活動のあり方についてはこれまで振り返ることなく進んできたように思います。
しかし、今後のまち協のセカンドステージを展望するためには、これまでのまち協の成果と課題について総括し、今後の向かうべき方向性についてまち協に関わる全ての関係者で協議し、共有するべきではないかと思うのです。

これまでまち協において小校区の特性や地域の実情に応じて様々な活動に取り組まれてきたことは大きな成果だと考えられますが、一方で、まち協が特定の人達だけで運営される組織になっていないか、外の人から見たときに敷居の高い組織になっていないか、地域の人たちにとって本当に魅力ある組織になっているのか、など総括すべき課題も数多あるはずです。
今後、まち協が地域のプラットフォームとして様々なボランティアや地域住民が幅広く参画できるような組織となっていくために、地縁組織である自治体やNPO・ボランティアとの関係性をどのように構築し、どのような役割を果たしていくのか、この点は、まち協として検討すべき課題だと思うのです。(本来、この作業が校区まちづくり計画にあたると思うのですが…)

このように様々なまちづくりや地域活動については、それぞれの階層(ステージ)において当事者である自治会やまち協の関係者自らが、自分たちの住んでいる地域の現状と課題を正しく認識し、できるだけ多くの地域の人達で共有し、今後の課題解決に向けたまちづくりの方向性を展望していくことが重要だと思います。
もし、行政が一方的に地域活動に関する評価・検証を行い、課題解決の方針を当事者に押し付けることになれば、それはもはや「協働のまちづくり」ではありません。

さらに私が重要だと思うのは、行政内部での職員間による庁内論議です。
「まちづくり条例」は担当課だけの課題ではありません。各部で多くの課が様々なまちづくりに関わる業務を行っており、全庁的に検討すべき課題だと思います。
しかし、行政内部で議論や対話ができていないということは、これからの小郡市のまちづくりの方向性が職員間で共有されていないということ。本当にそれでいいのだろうかと疑問に思うのです。

確かに、前述のまちづくりの当事者である自治会やまち協関係者との対話と協議についても、時間的・物理的な理由により十分に機会確保ができないことも理解できます。そもそもすべての市民から意見集約を図ること自体が不可能です。
しかし、だからこそ地域の実情や市民の思いを最も熟知している私たち職員自身が、まずは行政内部で議論や対話を重ね、庁内での合意形成のプロセスを経て方針や考え方を共有することが必要であり、そのことが多様な意見を持つ市民との対話や議論を代理し、不十分な市民の意見集約を補完すると考えるからなのです。

行政内部では「自治会やまち協は地域自治に関する課題であって、行政が関与するべきではない」という意見もあるかもしれませんが、それは誤った認識だと思います。
私たち自治体職員は、異なる立場、違う意見を持つ市民の利害を相互調整して取りまとめ、政策として実現していくことが仕事です。その過程において行政内部で行われる職員同士の対話や議論はすべて市民の立場や意見の代弁であるべきはずなのです。
つまり、職員同士が市民の立場や意見を代弁し、合意形成に至る過程と結果を共有することが、不十分であった市民の市政運営への参画を代理することとなり、自治体運営に対する市民の理解と信頼につながると思うのですが、皆さんはいかがお考えでしょうか。

「まちづくり条例」を“理念条例”として小郡市の将来のまちづくりにおける考え方や方向性を市民と共有できるものにするためには、まずはまちづくりの当事者である自治会やまち協関係者等による検討・協議の場が確保されること、そして行政内部での職員間による庁内論議が活発化すること、これが「まちづくり条例」へと続く道だと思うのです。
(2022.4.19)

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