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自主防災活動で一番大切なこと…

≪おごおりト−−ク35≫

前回からの続きです。前回は、自治会活動と自主防災活動との一体的な取り組みの必要性について考えてみました。今回は、自主防災組織における「災害時初動マニュアル」の必要性について考えてみます。

自主防災組織と校区防災部会

小郡市では、災害時に地域の防災活動や災害対策の中心的役割を担うのは自治会の自主防災組織とされており、地域の防災力の強化のためにはこの自主防災組織の実働的な体制づくりと自主防災活動の活性化が欠かせません。

また、各校区協働のまちづくり協議会には「防災部会」が設置されています。この校区防災部会の役割は、自主防災組織の実働的かつ機能的な活動が確保されるように、平常時に地域の災害特性に応じた図上訓練や防災研修等を通じて自主防災組織の体制づくりや活動支援に取り組むこととされています。

自治会の自主防災組織と校区防災部会の活動領域(棲み分け)が不明確で、同じような活動を行っているのではないかという指摘もありますが、それぞれの機能や役割を踏まえればその違いは明らかです。

「小郡市自主防災組織の手引き」から引用

この自主防災組織と校区防災部会の関係性は双方向の相乗効果が期待できるものですが、最近の状況を見てみると、まち協の校区防災部会の活動が活発に行われている地域ほど自主防災組織の防災意識も高まっており、地域の自主防災活動の底上げが図られ活動内容もスキルアップしている傾向があります。

そして、小郡市で特徴的なのは地域の防災活動を支援する「防災士会」の存在です。防災士会は、防災士の資格を有する者で構成された市民ボランティアの団体ですが、行政でもなく自治会やまち協でもない立場で行政と地域をつなぐ中間支援の役割を担っています。この小郡市の地域防災における自主防災組織と校区防災部会、防災士会、行政との関係性は、他自治体では例を見ない体制だといえます。

災害時初動マニュアルの必要性

防災士会では、それぞれの自主防災組織に対して実働的な体制づくりのために「災害時初動マニュアル」の策定を提唱しています。

災害時の自主防災組織の最も重要な役割は、住民の安否確認と要支援者の避難支援だといえますが、これらの活動は、地震発生直後は行政や消防署など公的機関(公助)による対応が困難となり、地域の共助の力でなければ対処できない可能性があります。特に地震発生から「72時間の壁」は人命救助におけるタイムリミットの目安を示しており、大規模災害になればなるほど公助は機能しなくなることが想定されるため、住民生活に最も身近な共助の組織=自主防災組織の役割が重要となるのです。

小郡市においても警固断層(南東部)による地震(M7.2)の危険性があります。地震災害はいつ発生するかは分かりませんが、その時は必ずやってきます。それが30年後なのか、1年後なのか、あるいは明日かもしれないということにすぎません。地震災害への対策は“備える”ことしかありません。防災士会が自主防災組織に「災害時初動マニュアル」の策定を提案しているのは、それこそが地域の地震災害に対する“備え”になると考えているからです。

ただ、地震災害は自主防災組織が“備える”ことを待ってくれません。だからこそ「災害時初動マニュアル」の策定においては、最初から完全なマニュアルを目指すのではなく、まずは自分たちの身の丈に合った可能な範囲で作成し、そして後からブラッシュアップするという考え方が必要になると思います。

災害対策基本法では、地域の防災活動について「地区防災計画」を策定することとされていますが、国のガイドラインには多岐に渡る内容が例示されており、自主防災組織がガイドラインに沿った計画を策定するのは必ずしも簡単ではありません。

小郡市が、あえて自主防災組織の「災害時初動マニュアル」をもって「地区防災計画」とするとしているのは、それぞれの自治会の身の丈の合った防災計画を許容する趣旨であって、国が示している内容をすべて備える必要はなく、地域の実情にあった実働可能な範囲で計画(マニュアル)を策定することが望ましいと考えているからです。

自主防災活動で一番大切なこと…

自主防災組織が活動する上で最も大切なことは「二次被害の防止」です。自主防災組織の構成員である自治会の役員や地域住民はボランティアであって、消防署や自衛隊のような防災のスペシャリストではありません。自治会は自主的に活動する人や輪番制でやむなく役員になった人、協力的な方や否定的な方、活動に参加できる方やできない方など、多様性ある考え方や価値観、様々な事情を抱えた個々の住民を地縁で包括する組織です。

また、災害時の防災活動は大なり小なり危険を伴う活動であり、災害現場で危険を伴う活動を強いるのは、その人を危険にさらすことにつながります。いくら目の前の住民の命を助けるための救助活動であっても、それが危険を伴う活動である以上、望まない人にその活動を強要することはできません。
このようなボランタリーな組織で災害時に防災活動を行った人が、ケガをしたり、万が一命を落とすようなことは絶対にあってはならないことです。

そのためには、自主防災組織が活動する際に「二次被害の防止」が一番大切であるということが、地域の関係者間において事前に共有されなければなりません。さらに、そのことを踏まえて地域の自主防災組織でしっかり話し合い、自分たちの身の丈に合った活動として「何をやるのか」「どこまでやるのか」を考えておくことは、その活動に参加する住民の命や安全を守る上でとても重要なことだと思います。

「災害時初動マニュアル」は「自主防災組織として何をするのか」「誰がどんな活動をするのか」をあらかじめ決めておき、地域住民の共通認識を図ることによって災害時の実働的な防災活動につなげるためのものです。それと同時に、地域で自主防災活動に参加する住民の命と安全を守るために、「自分たちができないこと」「やってはいけないこと」についても明らかにして地域全体で共有しておくことが大切だと思うのです。

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