見出し画像

畦道を駆ける


深夜、私有水田でイナゴを集めた。
厳密には私有水田2つに挟まる畦のイネ科雑草オヒシバから捕獲した。

稲刈りからしばらく経って稲も再び伸びてきているので、畦からそちらに戻っている個体が多いとは思われるが、30分で30匹は捕獲できた。
稲刈り直後であればもっと大量に獲れただろう。


それに、ここ数日は冷え込んできたので活性が低い。すでに繁殖を終えて寿命を迎えた個体もそれなりにいると考えられる。
しかし、低気温故の活性の低さによって捕獲する事は容易だった。


網を片手にバイクや軽トラで農道を走り、草地を薙ぐようにしてイナゴを大量に捕獲する様子を子供の頃にテレビで見た事がある。
あれをやろうと思えばできるかもしれないが、凄まじい数の羽虫に纏わりつかれそうだ。ただでさえ自分が行なっている夜間採集はユスリカや蛾のアレルギーリスクが高いというのに。


帰り道はあまり通ったことのない畦道を選んで走る。
それも、草がとびきり生えた畦道を車で走る。

正直、後悔した。
この時期の田園地帯は稲刈りを終えた水田ばかりとなるため、人の出入りが減る。自然と畦道の草刈りが行われる事も少なくなる。


走った結果がこれだ。夜露に濡れた雑草の種が無数に纏わり付いた。
おかげでナンバープレートを隠さなくても良くなったが、全然嬉しくない。
ナンバーを隠したまま運転するわけにはいかないので、そこだけは最低限種を刮ぎ落としてから帰宅する事に。

結構大きめのナメクジや無数のイモムシ、カメムシも貼り付いている。小さく「オワッ」と喚いてしまった。ナメクジは重さがあるためか、撮影後にボトボトと落ちて元居た草むらに帰っていった。


あまりにも車が汚いので帰宅してから軽く洗車したが、凄まじい数の雑草の種を持ち帰ってしまった事になる。
近所の物であるため外来種リスクはほとんど無いが、とはいえ放置すれば庭が雑草まみれになるかもしれない。
あとで焼却せねば。

しかし、捕虫網によるスウィーピングよりも楽にイモムシを集める事ができたようにも思える。網の中にナメクジが入るよりは、汚れてなんぼの車体に貼り付かせて洗う方が好みかもしれない。
…が、諸々のリスクの方が多いだろう。やるとしても軽トラのような車で行った方がいい。

貼り付いていたイモムシは、飼育しているゴミムシやアマガエルに与えた。回収した種の一部も種子食ゴミムシの餌となる。
特に種子食ゴミムシはイモムシも好んで食べるため、ケース内へ入れた瞬間にその匂いに気付いて捕食を開始した。

アマガエルは体長の半分以上の大きさのイモムシにすぐさま飛びつき、初めて大型ピンセットから餌を食べるシーンを目撃した。
イモムシの動きが食欲に結びついているのだろうか。



イナゴを飼育するのは本当に久々かもしれない。
今年になって庭のビオトープに飛来したのを見て再び興味が湧いた。
ここ10年はほとんどの場合、大量に獲れる事があっても餌にするか自分で調理して食べてしまう事が多かった。

イナゴは常に稲を食べ続けているためか、サラダ油で炒めても米油のような風味が香る。
調理の際はそれを活かす方向で考えるのも面白いだろう。



次回

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?