国会図書館を利用して希少種アオヘリアオゴミムシを調べた
昨日、初めて国立国会図書館デジタルコレクションを利用して、絶滅危惧ⅠA類(CR)「アオヘリアオゴミムシ」の事を調べた。
昨年の6月にIDを取得していたのを、今の今まですっかり忘れていた。
アオヘリアオゴミムシに関しては以下の記事を参照にされたい。
ロストテクノロジーと呼ぶには不適切だが、それに近いような感覚の情報が大量に記録されている。
お宝が詰まりすぎている。
資料を読んでいる間、あまりにも脳内に電気信号が駆け巡るので、30分で脳が疲弊した。
一周回ってダークウェブのような気もしてきたが、確かに国によって運営されている図書館だ。
このシステムを利用した時こそが、人生で一番「税金を納めた」事への実感が湧いた瞬間かもしれない。
100年近く前の採集情報とかが普通に出てくる。
研究者は研究序盤で普通にやっている事だと思うけど、学位や所属が無い自分からしたらHUNTER×HUNTER作中のハンターライセンスやハンター専用サイトそのものだ。(どちらかと言えば所属ありの研究者と論文掲載サイトがそれに該当するか)
自分は研究施設所蔵文献へのアクセスという行為に、ひどく憧れた事を思い出した。理系になり損ねた文系一般人だもの。
・1967年発行、小学館「原色昆虫百科図鑑」においては集団越冬の生態が記録されていた。(集団越冬の生態が知られるアオゴミムシの仲間なので頷ける話ではある)
「一般に個体数が多くない」との記述あり。
・1948年発行、富書房、小菅謙蔵[著]「昆虫の採集」では著者が1箇所で24匹のアオヘリアオゴミムシを連続して掘り当てた記録が残されている。
また、採集環境は近年報告された越冬環境(中村ほか,2022)*1に非常に近いものであった。
さらに、ここでもこの虫の希少性が言及されており、ゴミムシを含めたオサムシ科を専門とする著者が一番苦労して採集したアオゴミムシ類であるという旨の記述がある。
採集を行ったのは1940年3月との事で、現在から83年前の関西方面でさえ、それなりに希少な昆虫であった事が窺える。
アオヘリアオゴミムシは記録上でも近似種であるスジアオゴミムシとの誤同定が非常に多い虫だが、上記2つの文献はいずれもスジアオゴミムシにも言及したり、明確に分けて記録されていたため、ある程度は信頼に足る同定を行った生態資料であると考えている。
・「東京都日の出町におけるアナグマの生態学的研究」金子弥生 [著]
1992年〜1996年にかけて、東京都日の出町でアナグマのフンを調査した際、アオヘリアオゴミムシ及びスジアオゴミムシ等の遺骸が見つかった研究報告を読んだ。
しっかりとスジアオゴミムシと分けて表記されているが、自分の中では「半信」と「半疑」がちょうど同じ割合で同居している。
2011年に奥多摩地区山地で記録されたアオヘリアオはスジアオの誤同定である事が(中村ほか,2022)*1で示されている。
しかし、同文献では1923年に東京都某区とされる地区で発見された個体を「同定が確実な記録」としている。
(文献では地名も示されていましたが、ネットで無料で読める範囲ではないので念のため)
山地での記録はほとんどがスジアオの誤同定である事が多いが、アナグマの調査地はアオヘリアオ生息地の可能性もある、絶妙な河川及び里山環境だった。
アナグマ資料は年代があまりにも近年なので本当に判断が悩ましいところ。
昨年、自分が開拓したアオヘリアオゴミムシ生息地は4つの市町村だった。
恐らく未報告の地域もあるだろうが、報告したい気持ちを上回って「報告するには危うすぎる」という感情がある。
特に、関東地方のそれは。
中村氏を含めた上記論文執筆チームの何人かとは相互フォローになっているが、そちらの方面に連絡を取る事も視野に入れた方がいいのかもしれない。
今年、アオヘリアオ繁殖に関する論文を書くならば、そのうち関わる可能性もありますし。
*1
「2019~2021年に関東地方で採集されたアオヘリアオゴミムシの記録」
月刊むし
中村涼, 源河正明, 谷島昂,法師人響, 西田恒介, 平井文彦
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