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甲虫の前脚


ゲンゴロウやオサムシ、ゴミムシなどのオスは前脚の跗節ふせつが幅広となっている。

オオサカアオゴミムシのペア
右・オス
左・メス
オオサカアオゴミムシのペア
上・オス
下・メス


ゲンゴロウの跗節には吸盤が、オサムシやゴミムシの跗節には密集した絨毛じゅうもうが存在し、どの虫も吸着機能を持つ。

エゾゲンゴロウモドキ・オスの前脚(表側)
エゾゲンゴロウモドキ・オスの前脚(裏側)
オオサカアオゴミムシの裏側
オスの前脚・跗節裏には絨毛が密集している


これは交尾の際にオスがメスの背中から離れ難くなるために発達したと考えられており、機会が限られる交尾の成功率向上に寄与している。


特にゲンゴロウの吸着能力は凄まじく、飼育下では前脚が飼育容器の壁から離れなくなったオスが死亡してしまう事や、交尾が長引く事で息継ぎを阻害され続け溺死してしまうメスなどもよく報告されている。

交尾中のゲンゴロウ

さらにゲンゴロウのメスはオスと比べて背面に皺が多い構造となっており、これは交尾の際にオスの前脚の吸着から逃れるために適応したものと考えられている。
まるで天敵に対抗するかのような進化だ。

背面に皺の多いゲンゴロウ・メス


ちなみに、オサムシやゴミムシのオスもそれなりの吸着能力を持っており、トラップや飼育に使われるプラスチックの壁面を登る事ができてしまう。

種類によってはトラップの中に入っている個体がそこから脱出できないメスばかりという報告例もインターネット上にいくつか存在するほどだ。

プラスチック製のコップを用いた
ピットフォールトラップに入る
オオキベリアオゴミムシ


そのため、オサムシやゴミムシを飼育する際は、飛翔能力に乏しい種類でも蓋をする事が推奨される。


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