準絶滅危惧種カネコトタテグモとの遭遇・庭編
前回
いくつかの林道にて準絶滅危惧種カネコトタテグモの姿を確認して以降、ふとした瞬間に「もしかすると自宅にも生息しているのでは?」と思い立った。
時を100年以上遡れば、自宅や裏山、観察ポイントの林道は連続した1つの森林として存在していたはずなのだ。
この地においてまだ開発がほとんど進んでいない頃の歴史、祖父や母が子供だった頃の話、国土地理院の資料。それらの情報を照らし合わせるとカネコトタテグモの生息が濃厚となってくる。
そうして庭でのカネコトタテグモ捜索を開始した所、土が露出した崖のエリアを探すと目当ての物がすぐに見つかった。
植物の根が入り組む崖に作られた観音開きの扉。典型的なカネコトタテグモの巣穴だ。
そして画像の中にかなり小さな巣穴も存在する事に気付き、驚いた。
それもたった今だ。今日に至るまで全く気付かなかった。
前回の記事でも書いた通り、本種は孵化した幼体が母親の巣穴から散り散りに分散した後に巣穴を作る。そのため、巣穴を一つでも見つければ周辺に複数匹が生息している可能性が非常に高い。
見つけ方のコツが分かったその後はとんとん拍子に大小様々な巣穴を複数個見つける。
現在も実際に坑内で生息しているかを確かめるために巣穴を見つけ次第扉を開けたままにしたが、しばらくするとどの巣穴も扉が閉められており、確実に生体が中に潜んでいた事が分かる。
さらに2年後には、寝室から5mも離れていない木の根際に本種が複数生息している事も確認できた。
この時は本当に嬉しかった事をよく覚えている。
本種はこうした何らかの障害物の下に詰まった土に好んで営巣をする。
自分はこの画像の中から3つの巣穴を発見できたが、どこにあるか分かるだろうか。
答えはこの位置。
しかし、また数年後に改めて確認すると今まで気づかなかった巣穴を発見できるかもしれない。
ちなみに、この巣穴を開けたままにして後日再確認をした際には、どの扉も完全に閉め直されていた。今も尚、確実に生息している証拠だ。
カネコトタテグモと同様に周辺地域で生息を確認した準絶滅危惧種キシノウエトタテグモも、一度だけ玄関先で発見した事がある。
キシノウエトタテグモの巣穴はカネコトタテグモの観音開き状の扉とは違い、マンホール状の扉となっている。
トタテグモの代名詞的な種だろう。
発見の際は繁殖期にメスの巣穴を探して徘徊するオスを回収したが、それ以降は現在に至るまで生体はおろか巣穴すら発見できていない。
必ず庭のどこかに生息しているはずだが…まだまだ自分の観察眼や経験値が足りていないという事だろう。
庭散策を楽しみつつ精進あるのみだ。
上記個体発見時はツイートを投稿してからしばらくの間、同定のために専門家のサイトと睨めっこをしていた。
いわゆる徘徊性のクモとは異なる違和感、トタテグモのオス的な違和感を感じて検索するが、どうにもカネコトタテグモとは異なる姿をしている。
各部位の形状から最終的にキシノウエであると判断して再びTwitterを開くと、なんとさっきまで自分が見ていたサイトの管理人である細蟹屋氏から返信が届いており、キシノウエのオス個体である事のお墨付きを頂いていた。
この一件は今でも自分の中で『同定の自信に繋がる記憶』として残り続けている。
当時お世話になった細蟹屋氏に対して、今一度ここに感謝を申し上げたい。
・細蟹屋氏のサイト
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