見出し画像

アオヘリアオゴミムシの新規ポイントを開拓


某日、絶滅危惧種IA類アオヘリアオゴミムシの新規産地を発見する。
自力開拓をした新規産地としては6箇所目だろうか。

アオヘリアオゴミムシ

今回もルッキング採集。
例によってピットフォールトラップ用のコップに入れてはいるが、一時的に生体を入れているだけで生息地にトラップは仕掛けていない。
というより完全に初見のポイントだったのでトラップを仕掛けようがない。


現地では死骸も含め、オオキベリアオゴミムシの姿も複数見られた。

オオキベリアオゴミムシ死骸
オオキベリアオゴミムシ成虫

上陸したカエル幼体の数が増えてきたため、この場所でもオオキベリアオゴミムシの活動が活発になってきたのだろうか。
所によっては微妙に見つけ難く、神出鬼没気味な印象があるゴミムシだが、この時期はあまりゴミムシの数が多くない時間帯でも本種を見かける事が多いように感じる。
単純にゴミムシの中でも特に大型だからこそ印象に残りやすいだけかもしれない。



このポイントには1時間未満の滞在をした。
最終的に確認できた狙い目の生物は
アオヘリアオゴミムシ×6匹
オオキベリアオゴミムシ×3匹(死骸1匹を含む)
キンナガゴミムシ×1匹
となった。
キンナガゴミムシは様々な環境に居るが、色彩が綺麗なのでいつも気になってしまう。
持ち運びやすいクーラーボックスの中に一時的に入れて、寄生菌類や奇形の有無等を確認した後にアオヘリアオ1匹を除いて全てリリースした。

当初はこのポイントにあまり期待をせずに訪れたが、思いの外にアオヘリアオの数が多くて驚いた。
となるとアオヘリアオよりもさらに希少な某ゴミムシとの出会いも期待できるが…こちらに関してはこの人生で出会う事ができるかすら分からない。



昨年、師と仰ぐフォロワーによりアオヘリアオゴミムシの生息地を案内してもらって以降、いくつもの新規産地を自力で開拓できた。
しかし、どれだけ産地を見つけても、代用食を発見して繁殖を成功させても、何をしても彼の背中を幻視する。
いつまでも彼の背に負われているような錯覚を覚える。
彼に勝ちたいと思った事も対抗意識を燃やした事も一度として無いが、どう足掻いても、『彼が積み重ねてきた苦労の末の発見』の足元にも及ばないという感覚がある。

こちらから懇願して同行してもらい、以前から非常に懇意にしていただいた事もあってようやく叶った彼との共同採集では、本当に多くの事を教えてもらえた。その一晩で得た経験値は誇張など無しに10年分の密度があったように思える。
彼に出会う事が無かったのならば、アオヘリアオには10年経っても辿り着けなかっただろう。
人生において五本の指に入るほどの恩人だ。
しかし、同時に大きな呪いも貰ってしまった気がする。(というより『自力開拓』に対するこちらの姿勢が勝手に呪いを生んでいるだけではある)

今まさに、この虫に出会うためにあちこちを奔走している趣味人がいるのならば、叶う事なら完全に自力で辿り着こうとする事をオススメする。

そこに標本箱の空白を埋めたい目的以上の熱意があるのならば、その熱は完全自力開拓でなければ真の意味では満たされないように思える。
その虫と同じくらい追い求めているはずの『納得』は、その手段でしか得られないはずだ。
正直な所、そこに『珍品』と呼ばれるか否かは関係が無い。

個人的にはそうした傾向のある人間は所謂『標本屋』とは違う思考をしていて、目的もプロセスも異なると感じる事が増えた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?