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【100均ガジェット分解】(15)ダイソーの「リモコンライト」(後編: 送信機)

※本記事は月刊I/Oに掲載された記事にページの都合で省略した部分を追加したものです

ダイソーから赤外線リモコン制御が可能な「リモコンライト」が300円(税別)という価格で登場しました。後編ではリモコン(送信側)を分解します。

■パッケージと製品の外観

前回に引き続き、ダイソーの「リモコンライト」のフルカラー版である[イルミネーション]を分解します。今回は、パッケージに同梱されている薄型のリモコンについて解析していきます。

02_パケージの内容

パッケージの内容

■リモコンの分解

外観

「リモコン」は薄型のカードタイプです。表面はボタンが印刷されたシートになっていて、ボタン電池(CR2025 x 1個)で動作します。ボタン電池は裏面の下側からガイドにはめて差し込む形で装着します。

03_リモコンの外観

リモコンの外観

リモコンの分解

リモコン自体にはビスやはめ込み部分はありません。表面のボタンが印刷された「ボタンシート」の端にカッター等を差し込んではがしていくと、基板の「電極面」がむき出しになります。

04_表面のシートを剥がした状態

表面のシートを剥がした状態

「ボタンシート」はボタン部分が盛り上がるように成型されていて、ボタン部の裏に導電塗料による「接点」が印刷されています。テスターで確認したところ、各「接点」は互いに導通していないので、設計次第ですが複数ボタンの同時押しも検出可能なようになっています。接点の周辺は粘着シートになっていて、基板の電極側に直接貼り付けることによってリモコンボタン用のスイッチを構成しています。
基板の一番下の電極の部分にはボタンシートの接点が配置されていないことから、リモコンの外装成形品と回路基板はいわゆる「汎用品」であると思われます。ボタンシートとソフトウエアの変更だけで様々な種類への展開が可能である非常にシンプルな設計です。

05_ボタンシート裏面

ボタンシート裏面

■回路構成と主要部品の仕様

プリント基板

プリント基板は、外装の成形品のボスにプリント基板をはめ込んだあとボスを熱でつぶして固定されていますので、ボス部分をカッター等で削ってプリント基板を取り外します。
プリント基板の基材は紙フェノールです。「部品面」には型番「TP626-10」と製造年月日「13.6.6」がプリントパターンで表示されています。
実装されている部品はリモコン信号送信用の「赤外線LED」と樹脂モールドで基板にチップを直接実装した「コントローラ」、バネで構成された「ボタン電池用電極」のみという非常にシンプルな構成になっています。

06_プリント基板の部品面

プリント基板の部品面

基板の「電極面」と「部品面」の接続については、「電極面」を導電材料(黒色であることからカーボンペーストと思われる)で印刷する際に基板に開けた穴から導電材料が「部品面」に回り込んで穴の周りの基板パターンの「ランド」に付着することで導通させています。

07_電極面と部品面の接続部_拡大

電極面と部品面の接続部(拡大)

回路構成

基板パターンからプリント基板の回路図を書き起こしたものが以下になります。「NM」は基板に「電極」はあるがボタンシートに「接点」がないボタンです。SWの番号はリモコンボタンの左上から横に「SW1」「SW2」…とジグザグにふっています。右下が「SW18」となります。
SW19~SW21は基板バターン(電極)のみでボタンシートの「接点」はありません。

08_回路図

回路図

電源はボタン電池(CR2025,約3V)、送信用の赤外線LEDのアノードもボタン電池に直接つながっています。赤外線LEDは外部に抵抗はなく、コントローラのIR_OUTピンで直接駆動されています。リモコンのボタンは6本の入力ピン及びGNDの組み合わせで検出しています。各ボタン(SW1~21)と入力の組み合わせを一覧にしたものが以下です。全ての組み合わせを無駄なく使っていることがわかります。

09_ボタンと入力の組み合わせ

ボタンと入力の組み合わせ

■主要部品の仕様

本製品の主要部品について調べていきます。

赤外線LED

10_赤外線LED

赤外線LED

赤外線LEDは直径3mmの砲弾型の汎用品です。赤外線リモコンでは、一般的にピーク波長940nmのものが使用されています。
本体には特にマーキングもなくメーカーの特定はできませんでしたが、赤外線LEDはAliexpressでは10個で15円程度で購入できます。
同等品のデータシートは秋月電子通商のサイトから入手できます。
25℃での順方向電圧VF=1.6V(max)でありCE2025(3V)での動作でも問題はありません。

コントローラ

「コントローラ」は基板にチップ(ダイ)を直接実装し樹脂モールドで固められています。
今回も樹脂モールドを削りチップを露出させた状態でUSB顕微鏡で拡大しました。
モールド部にはワイヤボンディングの跡が9か所あり、プリント基板のパターンと一致しています。

11_モールドを削ってチップを露出させた状態

モールドを削ってチップを露出させた状態

チップサイズは実測で0.7mm x 0.6mmです。チップの拡大写真を以下に示します。

12_チップの拡大写真

チップの拡大写真

パッド数は9個、基板パターンと各信号のパッド配置は一致しています。チップメーカーについては調べたのですが特定することが出来ませんでした。

■リモコンコードの確認

各ボタンのリモコンコードの解析には「Multi Function Tester TC-1」を使用しました。
国内では秋葉原のShigezone(http://www.shigezone.com/)で入手可能です。

部品マルチテスタ(カラー版)

通常は抵抗・コンデンサやトランジスタの測定に使用するのですが、本体にあるIR受光部でリモコンコードを解析して波形を表示する機能があります。この機能を使いリモコンのONボタンを押して受信した結果が以下です。

13_Multi Function Testerでの受信結果

Multi Function Testerでの受信結果

リモコン信号の波形フォーマットは「パルス位置変調方式(PPM/Pulse Position Modulation)」です。
データが”1”の場合はON期間の後にOFF期間がON期間の3倍の長さで続きます。"0"の場合はON期間とOFF期間はほぼ同じ長さとなります。Multi Function Testerでは波形はONとOFFの極性が逆で表示されています。

14_パルス位置変調方式

パルス位置変調方式

本リモコンでは「User Code」(機器判別用コード)の807F(1000 0000 0111 1111)、「Data Code」の12ED(0001 0010 1110 1101‬)のどちらも16ビットで「8ビットのデータとそのビット反転コードの組み合わせ」となっており、「NECフォーマット」であることがわかります。
「NECフォーマット」については、秋月電子通商で販売している同一形状のカードリモコンのデータシートが参考になります。

オプトサプライ赤外線リモコン

本リモコンの各ボタンの位置に対する「データコード」のリストを以下に示します。
リモコンのボタンの位置とセルの位置は一致するように並べています。

15_各ボタンのデータコード

各ボタンのデータコード

■まとめ

今回分解したカード型の「リモコン」は、基板の電極に貼りつける「ボタンシート」と各ボタンに割り当てるリモコンコード(ソフトウエア)の変更で、成形品と基板を変更することなしに、複数の機器向けに展開できる「汎用品」(いわゆる公板・公模)でした。

前回分解した「ライト本体」のメインボードの基板の製造日(2019年8月15日)に対して、リモコンの基板の製造日は「2013年6月6日」となっており、かなり以前から汎用で流通している、いわゆる「枯れた製品」です。
リモコンも中国で安価に手に入る「汎用品」とすることでリモコンと本体をセットで300円(税別)という「コスト重視」の商品となっているのがわかります。

今回のリモコンはボタンの数が18個と多く、一般的な「NECフォーマット」を採用しているので、電子工作用のコントローラとして非常に魅力的な選択肢の一つとなりました。

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