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【100均ガジェット分解】(18)ダイソーの「ラジコンカー(コントローラ: 送信編)」

※本記事は月刊I/Oに掲載された記事にページの都合で省略した部分を追加したものです
※2021/3/30 コントローラICの素性が判明したので更新しました。

前回に引き続き、ダイソーで600円(税別)で販売されている無線コントロールの「ラジコンカー」を分解します。今回はコントローラ(送信側)です。

​ ■パッケージと製品の外観

ダイソーの「ラジコンカー」は本体(車体)と送信機(コントローラ)が一組になって販売されています。
本体の大きさに比べると送信機は大き目で操作しやすいサイズです。

01_本体と送信機

本体と送信機

パッケージの特長表示では、送信機は単三乾電池x2本で動作し、使用周波数は27MHzとなっています。

02_パッケージの特長表示

パッケージの特長表示

​ ■製品の分解

送信機の外観

送信機はラジコンのプロポ風で「前進・後退」「右折・左折」の2個のスティックと金属の「送信用アンテナ」がついています。
送信機は電池動作ですが、電源をON/OFFするようなスイッチはついていません。

送信機の外観

送信機の外観

送信機の分解

送信機の背面の電池ボックスは、はめ込み式の蓋がビスで固定されています。送信機は背面のコーナー付近の4か所のビスを外すことで開封できます。

送信機の背面

送信機の背面

受信用のアンテナはプリント基板裏面のパターンに接触するように基板固定用のネジで一緒に固定(共締め)しています。ちなみに、固定ビスは開封時点で錆びていました。
各スティックの操作はプッシュスイッチのON/OFFのみで、スティックの移動量の検出等は行わないシンプルな構成です。

開封した送信機

開封した送信機

■回路構成と主要部品の仕様

メインボード

メインボードは紙フェノールの片面基板です。表面には基板の型番(JX-4T25)と基板の製造日(2019/8/17)が表示されています。
無線周波数を決める「水晶振動子」は27.145MHz、基板のシルクの「27MHz」のところがマークされています。

メインボード表面

メインボード(表面)

基板裏面(パターン面)に実装されている部品は全て面実装です。
半導体部品はコントローラICと2個のNPNトランジスタです。送信用のアンテナの接触部はパターン上にハンダが盛られています。基板には電池ボックスへのリード線をハンダ付けするためのランド(丸穴付き)が設けられています。

メインボード裏面

メインボード(裏面)

回路構成

基板パターンからメインボードの回路図を書き起こしたものが以下になります。

08_回路図

回路図

乾電池(単3乾電池電池x2本の直列接続=約3.0V)の出力がコントローラIC・発信回路・出力回路の電源として直接使われています。
4個の操作ボタンはそれぞれが直接コントローラIC(U1)の入力ピン(1~4番ピン)に接続されていて、ボタンを押されたことは入力レベルがL(GND)になることで検出します。

ラジコン用の搬送波(無線周波数の信号)は、「発振回路」の27.145MHzの水晶振動子(Y1)とNPNトランジスタ(Q1)を組み合わせた「PEARCE BC回路」で生成し、後段の「出力回路」で増幅してアンテナ(ANT)から送信しています。水晶振動子を使用することで、電池の電圧にかかわらず安定した周波数の発振ができます。

「発振回路」及び「出力回路」は複数のインダクタ(コイル)とキャパシタ(コンデンサ)の定数を組み合わることで、送信周波数に回路動作の特性をあわせこんでいます。

コントローラIC(U1)の8番ピン(OSC端子)はトランジスタQ1のベースに接続され、搬送波の発振のON/OFFを制御しています。このピンはスティックを操作する(スイッチが押される)とHになり発振を開始します。操作していない時はLレベルで発振を停止することで電池の寿命を稼いでいます。

コントローラICの6番ピン(DOUT端子)は出力トランジスタQ2のベースに接続され、操作コマンドにあわせて出力をON/OFFすることで、コマンドを搬送波にのせて送信します。

リモコンの送受信システムとしては、送信側の周波数を水晶振動子で安定させて、受信側(前回の記事)の同調回路のトリマコイルで微調整する構成となっています。

主要部品の仕様

次に本製品の主要部品について調べていきます。

● コントローラIC YX4116

09_コントローラIC

コントローラIC

表面のマーキングにある「YX」というロゴと「4116]という数字を手掛かりに検索をしたのですが、特定することができませんでした。
回路図の各端子の機能は、現物の基板パターンで確認をしました。
コントローラ自体は周辺部品を必要とせず、電源と操作スイッチを接続するだけで必要な制御信号を生成していますので、「ラジコンに特化した専用IC」であると思われます。

※2021.03.30 twitterで記事を公開したら速攻でICを特定していただきました

https://twitter.com/sum_o/status/1376672947662811138?s=20

深圳市宇鑫微电子有限公司(http://www.yxdzkj.cn/)の4ボタンリモコン玩具送信機チップ「YX-4116」です。製品ページはこちらでデータシートもここから入手できます。ファンクションコードも「前進+加速(W2 x 16))」をサポートしていないこと以外は本体の受信用デコードIC「FMRX2BMS」と一致していますので、ラジコンでは一般的なコード構成だと思われます。

「YX-4116」は以下のサイトで1個US$0.03では販売されています。
https://www.ebuy7.com/item/559732132610

● NPNトランジスタ(Q1) S9014

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S9014

「発振回路」に使われているトランジスタは、表面のマーキング「J6」から「S9014」という型番の汎用NPNトランジスタとわかりました。直流電流増幅率(hFE)が200~1000と比較的大きいので「PEARCE BC回路」の発振用に使われているようです。
同じ型番の互換品が複数の会社で作られていて、Aliexpressでは100個でUS$0.5程度で販売されています。

データシートは江苏长电科技股份有限公司(JIANGSU CHANGJIANG ELECTRONICS TECHNOLOGY CO.,LTD, https://www.jcetglobal.com/)のものが以下から入手できます。

https://bit.ly/3h3dTtg

● NPNトランジスタ(Q2) S8050

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S8050

「出力回路」に使われているトランジスタは表面のマーキング「J3Y」より「S8050」という汎用NPNトランジスタであることがわかりました。
「S8050」は他の製品でもよく見かけるトランジスタで、これも同じ型番が複数の会社で作られています。Aliexpressでは100個でUS$0.6程度で販売されています。

データシートは江苏长电科技股份有限公司(JIANGSU CHANGJIANG ELECTRONICS TECHNOLOGY CO.,LTD, https://www.jcetglobal.com/)のものが以下から入手できます。

https://bit.ly/2QPstd3

■動作波形確認

コントローラの仕様がわからなかったこともあり、実機で波形を測定して回路の動作を確認しました。

以下は「前進スイッチ(K1)」を押した時のコントローラIC(U1)の8番ピン(OSC)と6番ピン(DOUT)の出力波形です。

12_コントローラの出力波形

コントローラの出力波形

スイッチが押されると「OSC端子」は「H」になり、「発振回路」が搬送波の発振を開始します。「DOUT端子」からはラジコンコードにあわせた「シリアルコード」が出力されます。

シリアルコードは「前進コード」「終了コード」の2種類が出力されており、スイッチが押されている間は入力に応じたコード(上の波形では「前進コード」)が、スイッチが離されると固定の「終了コード」を一定期間(実測で178ms)出力して送信を停止しています。

出力される「シリアルコード」は受信側のデコードIC「FMRX2BMS」のデータシートに記載された「ファンクションコード」に従っています。

「シリアルコード」は「エンドコード」(前述の「終了コード」とは別)と「ファンクションコード」で構成され、「エンドコード」は4個のW2パルス(500Hz、Duty比1:3)、「ファンクションコード」は機能に応じたn個のW1パルス(1KHz、Duty比1:1)となります。

13_ファンクションコード一覧

ファンクションコード一覧

「前進コード」部分の波形を拡大してみると、一覧表の「前進」のコードが送られていることが確認できます。

14_コントローラの出力波形_拡大

コントローラの出力波形(拡大)

この時のアンテナ波形を測定すると、コントローラのシリアルコードによってON/OFFされた搬送波(27.145MHz)が出力されている事が確認できます。

15_アンテナの出力波形_拡大

アンテナの出力波形(拡大)

■まとめ

前回の本体(受信器)に続いて今回はラジコン送信機を分解しました。
送信・受信ともに無線部分はディスクリート部品を組み合わせた「アナログ回路」となっていてます。操作コマンドを処理する「コントローラIC」はラジコン周波数の影響はない構成となっています。

いわゆる「枯れた商品」である「ラジコン」ですが、分解してみることでアナログ回路とデジタル回路の絶妙な組み合わせで出来ていることがわかりました。

送信側・受信側ともに、コントローラは共通のままで水晶発振子とアナログ回路部分の部品定数を変更するだけで任意のラジコン周波数に変更できる、というよく考えられた「機能の棲み分け」だという感想です。

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