【100均ガジェット分解】(23)ダイソーの「ゲーミング・マウス」
※本記事は月刊I/Oに掲載された記事にページの都合で省略した部分等を追加したものです
前回に引き続きUSBマウスです。今回はダイソーで500円(税別)で販売されている「ゲーミング・マウス」を分解します。
パッケージの外観
■パッケージと製品の外観
パッケージの表示
「ゲーミング・マウス」はダイソーの「500円パソコンシリーズ No.5」として販売されています。
インターフェースは「USB」、通常のマウスのホイール付き3ボタンに加えて「カウント(DPI)切替」と「進む/戻る」の計6個のボタンがあります。
分解能は「800/1200/1600/2400dpi」が切替可能、光学センサ用LEDは赤色(波長情報は記載なし)です。
製品パッケージの仕様表示
同梱物と本体の外観
パッケージの内容は「本体」のみです。黒と半透明のABS樹脂の組み合わせで構成されています。
半透明の部分からは、内部のLEDの発光が外部に見えるようになっていて、角ばった外装と組み合わされていかにもゲーミングマウスという外観です。
本体の外観
■本体の分解
本体の開封
本体は底面のソールを剥がして、下のビスを1か所外せば開封できます。
内部はメインボード、ホイール、センサーLED導光用の透明樹脂で構成されています。
USBケーブルはメインボードに直接ハンダ付けされています。また、ゲーミング・マウスということで重量調整用金属プレートが底面にビスで固定されています
本体を開封した状態
■回路構成と主要部品の仕様
メインボード
メインボードは紙フェノールの片面基板です。実装されている部品はすべてリードタイプで、主要部品は「光学マウスセンサ」とセンサーLED、マウスボタン用の6個のスイッチとホイール用のロータリーエンコーダです。本体を光らせるためのイルミネーションLEDも3個あります。
「光学マウスセンサ」の下の基板には穴が開いていてパッケージ裏面のイメージセンサでマウスの移動を検出するようになっています。
表面には基板の型番(XCX-23-A611/A603x)と製造日(2016.09.14) と思われるシルク表示があります。
メインボード(表面)
裏面にはマウスの移動検出のためのイメージセンサ開口部が見えています。
メインボード(裏面)
回路構成
基板パターンからメインボードの回路図を作成しました。「NM」はパターンはあるが実装されていない部品です。
回路図
前回(キャンドゥのマウス)と同様にマウスとしての機能は「光学マウスセンサ」(U1)がワンチップで実現しています。
光学マウスセンサのピン数は12ピン(キャンドゥは8pin)、使用されている6個のボタンはS1とR0~R2の4ピンのマトリックス構成で検出しています。ホイールの回転検出は独立したピン(ZA,ZB)となっています。
USBケーブルはセンサに直接接続されています。
イルミネーションLED(D1~D3)はマイコン内蔵のフルカラーLEDでマウスの動作とは関係なく内部パターンで色を変えています。
主要部品の仕様
本製品の主要部品である「光学マウスセンサ」について調べていきます。
●光学マウスセンサ A601BS
光学マウスセンサ
光学マウスセンサは表面のマーキングから中国の无锡英斯特微电子有限公司(Instant Microelectronics Inc., http://www.instant-sys.com/)製のUSBインターフェース用Optical mouse sensor「A601BS」であることがわかりました。
データシートはメーカーのサイトより入手できます。
「A601BS」は中国のECサイトである淘宝网(https://world.taobao.com/)ではRMB 2.00(日本円で約32円)で販売されています
A601BSのブロック図は以下です。USBマウスとしての全ての機能が1チップで実現できる構成となっています。
ブロック図(A601BSデータシートより)
ボタンは3x3のマトリックス構成で最大9個まで実装可能です(本製品では6個を使用)。データシートには9ボタン版の参考回路図が掲載されています。
9ボタン版の参考回路図(A601BSデータシートより)
本製品には実装されていない3個のボタン(K7~K9)は「Multifunction Key」でいずれも特殊機能用となっています。
「R2」ピンをPull Upすることで、K6・K8のキーの機能の切替えができます。
Multifunction Key(A601BSデータシートより)
■USB接続情報の確認
今回も「USBView(https://bit.ly/3kT4170)」を使ってUSB接続情報を確認しました。
USBViewの確認結果
USBバージョン(bcdUSB)は「1.1」、接続速度(Device Bus Speed)は「LowSpeed」(1.5Mbps)です。
「List of USB ID's」(http://www.linux-usb.org/usb.id)によると、idVender(0x18F8)は「Maxxter」(https://www.maxxter.biz/)、idProduct(0x0F97)は「Optical Gaming Mouse [Xtrem]」となっており、OEM(相手先ブランド名製造)を受けていると推定されます。
■イメージセンサを観察してみる
センサを開封する
今回も光学マウスセンサの裏面のイメージセンサ部分のカバーを外して、内部のイメージセンサのチップを観察してみます。
イメージセンサーのカバーを外す
顕微鏡は前回同様USB接続の以下のものを使用しました。
ワイヤボンディングの確認
センサのチップはパッケージのピンに接続するための基板(インターポーザー)に実装され、基板の電極とチップの電極(PAD)は細いワイヤで接続(ワイヤボンディング)されています。
接続しているワイヤが観察できる程度まで拡大してパッケージの各端子とチップの接続を確認したものが以下になります。チップの各電極にワイヤーが繋がっているのがわかります。GNDの接続は2本となっています。
ワイヤボンディング
チップの観察
倍率を上げて、チップ部分を拡大したものが以下になります。
チップサイズは実測で2.0mmx1.4mmです。
チップの拡大
チップ上側で正方形に並んでいるのがイメージセンサです。画素数は縦18x横18=324画素、画素ピッチは写真からの実測で37.6umです。
(キャンドゥマウスは256画素、33umピッチ)
ピン配置から判断すると、左下のDPとS2に挟まれた部分がブロック図の「USB Mouse Contoller」、イメージセンサのすぐ下、VDD5の高さあたりが「Voltage Regurator and Power Control」、その下が「Digital Signal Processor」を含むその他のロジック回路だと推定されます。
まとめ
500円(税別)のマウスということで、キャンドゥの100円(税別)マウスと比較しながら分解してみたのですが、「光学マウスセンサ」は画素数及び機能・性能共にワンランク上のものが使用されていました。
外装の構造もシンプルですので、ゲーミング・マウスとして、好みの重量となるように金属プレートを調整したり、改造して「Multifunction Key」を追加してみて使ってみるのも面白いと思います。
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