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【100均ガジェット分解】(14)ダイソーの「リモコンライト」(前編: 受信機)

※本記事は月刊I/Oに掲載された記事にページの都合で省略した部分を追加したものです

ダイソーから赤外線リモコン制御が可能な「リモコンライト」が300円(税別)という価格で登場しました。前編ではライト側(受信側)を分解します。

パッケージと製品の外観

「リモコンライト」はLEDライトのコーナーで販売されています。タイプは[イルミネーション]と[ホワイト]の2種類、今回はフルカラー版である[イルミネーション]を分解します。

01_LEDライトのコーナーで販売_2

LEDライトのコーナーで販売

パッケージ表面には各キーの説明、裏面には操作マニュアルが記載されています。
裏面下段には100円均一商品の企画製造卸会社である「株式会社グリーンオーナメント」(https://www.green-ornament.com/)の記載があります。

02_製品パッケージの表示

製品パッケージの表示

本体の分解

■ 同梱物

パッケージの内容は「本体」と「リモコン」で構成されています。リモコンにはテスト用のボタン電池(CR2025)がシートで絶縁された状態で装着されています。

03_パッケージの内容

パッケージの内容

本体のカバー部分はプッシュボタンになっており、リモコンとプッシュボタンの両方で操作できます。

■ 本体の分解

今回は「前編」として本体部分の分解をしていきます。(リモコンは「後編」で分解します)

本体底面をひねって開けると電池ボックスの四隅に固定用のビスがあります。

04_本体底面のビス

本体底面のビス

ビスを外し本体上面のカバー部分を外すと、基板上にはプッシュスイッチがあります。スイッチはLED上部にはめ込まれた半透明の成形品のフチで押すというシンプルな構造です。
電池ボックスはリード線で直接メイン基板にハンダ付けされています。

05_開封した本体

開封した本体

回路構成

■ メインボード

メインボードはガラスコンポジット(CEM-3))の片面基板です。表面には基板の型番(HY005RSB-02)と製造日(2019-08-15)が印刷されています。
表面に実装されている主な部品は、以下です。

- 2個のLED(フルカラーと白色)
- 制御用マイコン
- LEDドライブ用トランジスタ
- プッシュスイッチ

基板に開けられた穴からはリモコン受光部が表側に出ています。

06_メインボード(表面)

メインボード(表面)

赤外線リモコン受信モジュールは裏面に足を折り曲げて実装されています。

07_メインボード_裏面

メインボード(裏面)

■ 回路構成

基板パターンからメインボードの回路図を書き起こしたものが以下になります。「NM」はパターンはあるが実装されていない部品です。

08_回路図

回路図

電源はレギュレータ等は搭載せず、直接乾電池(単4乾電池電池x3本の直列接続=約4.5V)から供給されています。

制御用マイコンは電源入力と入出力ポート(GPIO)のみのシンプルな構成です。

フルカラーLEDは制御用マイコンから直接ドライブされており、各色のポートがLになることで点灯します。
白色LEDはトランジスタ経由でドライブされており、トランジスタのベース抵抗値を変更することで流れる電流を2段階で制御しています。

制御リモコン受信信号とプッシュスイッチの入力ピンは兼用となっていて、一定時間以上GNDレベルになるとプッシュスイッチが押されたと検出している様です。

主要部品の仕様

次に本製品の主要部品について調べていきます。

● 制御用マイコン PIC12C508(互換品)

09_制御用マイコン

制御用マイコン

パッケージには特に印刷がなくメーカーの特定はできませんでした。電源(VDD)とGND(VSS)ピンの配置から、マイクロチップ社(Microchip Technology Inc. https://www.microchip.com/ )8ビットマイコン「PIC12C508」のピン互換品(ジェネリックPIC)だと思われます。
「PIC12C508」のデータシートは以下から入手できます。

https://bit.ly/2WM5Hqv

「PIC12C508」は電源以外の外付け回路は不要、動作電圧範囲も2.5~5.5Vと広く、単4電池3本での動作でも問題はなさそうです。

● 赤外線リモコン受信モジュール VS838

10_赤外線リモコン受信モジュール

赤外線リモコン受信モジュール

赤外線リモコン受信モジュールは形状から、同じ型番で複数の会社で作られている「中国での汎用品」である「VS838」とわかりました。「VS838」はAliexpressでは10個で100円程度で購入できます。

https://bit.ly/2QM3GGI

データシートは各社で使いまわされていると思われるもの(メーカー名がないもの)が以下から入手できます。

https://bit.ly/2QMX37i

受信周波数は38kHz、電源電圧範囲は2.7~5.5Vですのでこちらも単4電池3本での動作でも問題はなさそうです。

● フルカラーLED SMD5050 3色独立タイプ

12_フルカラーLED

フルカラーLED

フルカラーLEDはSMD5050(面実装 5mmx5mmサイズ)のRGB独立タイプです。(写真ではわかりやすいようにR/G/Bの配置を追記)
これも同一形状・機能の物が複数の会社で作られている「中国での汎用品」です。Aliexpressでは100個で100円程度で購入できます。

https://bit.ly/2vR7Iqa

データシートはShenzhen Yuanlei Technology Co Ltd(http://www.yuanlei-led.com/)のものが以下から入手できます。

https://bit.ly/3bvfsNS

各色のLEDは制御用マイコンのポートに電流制限抵抗(R1,R4,R5)を介して直接接続されて各ポートがLになることで点灯します。
LEDの順方向電圧(Vf)は各色で異なっており、電流制限抵抗値もそれぞれ別になっているのですが、使用条件の順方向電流(If=20mA)に対して制御用マイコンのLレベルのI/O出力電圧(VOL)がSPEC最大値(0.6V)としても抵抗値が小さいのが気になります。

13_LEDの順方向電圧のSPEC_抜粋

LEDの順方向電圧のSPEC(抜粋)

● 白色LED SMD2835タイプ

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白色LED

白色LEDはSMD2835(面実装 2.8mmx3.5mmサイズ)タイプです。
これも同一形状・機能の物が複数の会社で作られています。Aliexpressでは100個で50円程度で購入できます。

https://bit.ly/3ahYP85

データシートは广东锐陆光电科技有限公司(GUANGDONG ELITE PHOTOELECTRIC TECHNOLOGY CO.,LT, http://www.smd-emc-led.com/ )のものが以下から入手できます。

https://bit.ly/3dA1f3M

LEDの順方向電圧(Vf)は2.8~3.4V、最大順方向電流(If)は60mAとなっています。本機では電流制限抵抗は実装されておらず、順方向電流はLEDドライブ用トランジスタのベース抵抗で制御されています。

● NPNトランジスタ S8050

15_NPNトランジスタ

NPNトランジスタ

白色LEDをドライブするためのトランジスタです。表面のマーキング「J3Y」より「S8050」という型番のNPNトランジスタであることがわかります。
これも同じ型番が複数の会社で作られています。
データシートは江苏长电科技股份有限公司(JIANGSU CHANGJIANG ELECTRONICS TECHNOLOGY CO.,LTD, http://www.cj-elec.com/ )のものが以下から入手できます。

https://bit.ly/2QPstd3

コレクタ飽和電圧Vce(sat)=0.6V(max),最大コレクタ電流Ic=0.5Aなので使用条件としては問題なさそうです。

ただ、本機ではベース抵抗でLEDに流れる電流を制御しており、「S8050]は直流電流増幅率Hfeが120~350とSPECの幅が大きいため、白色LEDに流れる電流をある程度の精度で決定するような設計は出来ていないと思われます。

まとめ

回路構成で気になる点は、フルカラー・白色ともにLEDの電流制御が回路定数で明確に規定できる設計になっていないところです。いわゆる「現物合わせ」で抵抗値を決めている可能性が高そうです。
例えばLED自体や制御マイコンポートへのダメージや周囲温度によるLEDに流れる電流(=明るさ)の変化等に影響があります。価格とのバランスでそこは割り切っていると思われますが、あまり良い設計ではないと感じました。
メインボード上の製造日(2019-08-15)からも稀に見かける「過去の訳あり在庫を安く放出している」というわけではなさそうです。

本品の供給元である「株式会社グリーンオーナメント」(https://www.green-ornament.com/ )は国内で商品企画をし、中国のパートナー(商社・工場)で設計・生産するというビジネスモデルの会社です。

本製品も中国で安価に手に入る「汎用品」を組み合わせることで、リモコンと本体をセットで300円という「コスト重視」の商品となっているのがわかります。

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今回は本体部分の分解をしました。
次回は「後編」としてリモコン送信機を分解する予定です。

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