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【100均ガジェット分解】(41)ダイソーの「完全ワイヤレスイヤホン2」(三代目)

※本記事は月刊I/O 2022年8月号に掲載された記事をベースに、色々と追記・修正をしたものです。

ダイソーの「完全ワイヤレスイヤホン」は2023年1月時点で4種類が販売されています。今回はType-C対応で白い外装の"三代目"を分解してみます。

パッケージと製品の外観

パッケージの表示

ダイソーの「完全ワイヤレスイヤホン」の三代目は価格は1000円(税別)のままで「E-TWS-2」いう型番となりました。輸入販売元は100円ショップのガジェットで最近よく見かける「株式会社ラティーノ」です。

通信方式は「Bluetooth V5.0+EDR」、内蔵電池容量はイヤホンが「30mAh」、付属の充電ケースが「200mAh」です。
音楽の連続再生時間は「約5時間」、充電ケースでイヤホンを2~2.5回充電できます。2021年8月号で分解した「TWS001」より電池容量は減っていますが、連続再生時間は長くなっています。

パッケージ裏面には技適マークとPSEマークの表示があります。

製品パッケージの表示

操作はイヤホンの側面にあるボタンの組合せで行います。

操作ボタンの機能(取説より抜粋)

音質は「TWS001」と比べて低音が弱めで、付属のイヤーピース(Sサイズ)だと音楽を聞くには少し物足りないと感じます。
実際に日常使いで使用するには、別途自分の耳のサイズに合ったイヤーピースに変更するのがお勧めです。
ちなみに筆者は低反発タイプのイヤピースを付けて使用しているのですが、そのままでは充電ケースに入らなくなるのでケースを削って入るように加工しています。

同梱物と本体の外観

パッケージの内容は「イヤホン(左右各1個)」「充電ケース」「USBケーブル(充電専用)」「取扱い説明書(日本語)」です。充電ケースのコネクタは「USB Type-C」です。

イヤホンの外装は白いプラスチック製、付属のイヤーピースはSサイズが1種類のみです。

イヤホン

充電ケースのコネクタはTWSでは一般的な磁石でイヤホンと電極が接触する構造です。「技適マーク表示」は充電ケース裏面にあります。

充電ケースの技適マーク

イヤホンの分解

イヤホンの開封

イヤホンのケースはツメでの固定ですので、隙間に精密ドライバ等を差し込んで開封できます。
内部はメインボード、LiPoバッテリー、スピーカー、充電電極及び磁石で構成されています。LiPoバッテリーはメインボードに両面テープで固定されています。

イヤホンを開封した状態

イヤホンの内部構成と回路図

LiPoバッテリー

LiPoバッテリーは401012サイズ(幅12 x 高10 x 厚4.0mm)で容量40mAhです。保護回路は内蔵しておらず、タブ(電極)にリード線を直接ハンダ付けして折り曲げ、ポリイミドフィルムテープで固定しています。

LiPoバッテリー(イヤホン)

メインボード

メインボードはガラスエポキシ(FR-4)の4層基板、基板の型番「066-83D-V1.2」と製造日(2021-1-25)がシルクで印刷されています。

表面にはメインプロセッサ・コンデンサマイク、裏面にはプッシュスイッチ・水晶発振子・積層チップアンテナ・LED(R/B)が実装されています。基板上にはフラッシュ書込み用のテストランド(DP/DM)もあります。

メインボード(イヤホン)

イヤホンの回路図

基板パターンからメインボードの回路図を作成しました。回路番号は基板に表示がないので、筆者が割り当てました。

回路図(イヤホン)

メインプロセッサ(U1)には充電電源(5V)とLiPoバッテリー(B+/B-)が直接接続されており、充電制御はメインプロセッサで行っています。

メインプロセッサの周辺部品はコンデンサとインダクタ(L2)及び水晶発振子(24MHz)のみです。必要な電源のうちVDDIO、VCOMはプロセッサ内部で、Bluetooth用電源はSW出力(5pin)をL2とC6/C7で平滑して生成してBT_AVDD(8pin)入力しています。

主要部品の仕様

メインプロセッサ AD6983D

メインプロセッサ

メインプロセッサは珠海市杰理科技股份有限公司(ZhuHai JieLi Technology Co.,Ltd., http://www.zh-jieli.com/)のBluetooth TWS用SoC「AD6983D」です。
データシートはデザインハウス(方案公司)の深圳市伦茨科技有限公司のページから入手できます。

https://www.lenzetech.com/public/store/pdf/jsggs/AD6983D%C2%A0Datasheet%C2%A0V1.0.pdf

パッケージはQFN20Pin、32bit CPUとDSP(最大160MHz動作)を内蔵し、Bluetooth v5.1準拠の無線機能をサポートしています。
必要な電源回路(LDO + DC-DCコンバータ)やLiPo充電コントロール回路も内蔵していて、このICだけでBluetoothイヤホンの機能が実現できます。
省待機電力はSoft-off mode時に2uAと、非常に低くなっています。

充電ケースの分解

充電ケースの開封

充電ケースもツメで固定されているので、隙間に精密ドライバ等を差し込んで開封できます。
内部は充電ボード、LiPoバッテリー及び磁石で構成されています。LiPoバッテリーは充電ボードに直接ハンダ付けされ両面テープでケースに固定されています。

充電ケースを開封した状態

充電ケースの内部構成と回路図

LiPoバッテリー

LiPoバッテリーは保護回路内蔵の502030サイズ(幅30 x 高20 x 厚5.0mm)で容量は200mAhです。

LiPoバッテリー(充電ケース)

充電ボード

充電ボードはガラスエポキシ(FR-4)の両面基板、基板の型番「XL-Q66-PC6032-V1.0」と製造日(2021-3-11)がシルクで印刷されています。表面には充電制御IC・インダクタ・イヤホン充電用コンタクトピン(ポゴピン)、裏面にはUSB Type-Cコネクタ・LED(R/B)が実装されています。

充電ボード

充電ケースの回路図

基板パターンから充電ケースの回路図を作成しました。

回路図(充電ケース)

USB Type-Cは充電専用で電源(VBUS)・GNDとCC(Configuration Channel)ラインのみ接続、USBデバイスとして検出するためのCCラインのプルダウン抵抗はUSB規格通り5.1kΩが実装されています。

充電制御IC(U2)はUSBからの電源(VBUS=5V)からのLiPoバッテリーへの充電と、LiPoバッテリーの電圧を5Vに昇圧し、+/-端子を経由してイヤホンへ充電(充電ケースから見たら放電)を行います。

ケースの充電時はD5(RED)、放電時(イヤホンへの充電時)はD2(BLUE)のLEDが点灯します。

主要部品の仕様

充電制御IC PC6032

充電制御IC

マーキングの「PC6032」を参考にWebで検索したのですが、情報は見つかりませんでした。
ピン配置は2021年8月号で分解した「TWS001」の充電制御IC(富满微电子集团股份有限公司「FM9688」)と同じでした。LiPoバッテリーの容量も近いので同等の機能を持つ互換ICだと思われます。

「FM9688」のデータシートは以下より入手することができます。

https://pdf1.alldatasheetcn.com/datasheet-pdf/view/1144610/FUMAN/FM9688.html

Bluetooth接続情報の確認

今回もAndroid版の「Bluetooth Scanner」というアプリで接続情報を確認しました。本製品は「BTTWSL2」という名前で検出され、プロファイルは「ヘッドセット」、サポートするコーデックは一般的な「SBC(SubBand Codec)」、プロトコルは「Classic(BR/EDR)」で接続されています。ベンダーは「不明」となっていました。

BlueToothの接続情報

まとめ

2021年8月号で分解した「TWS001」からはBluetoothオーディオ用SoCが変更(TWS001はBluetrum社製)になっています。基板の設計内容を比較すると「コストダウンしている」のを感じます。

個人的には、耳に装着するイヤホンの「LiPoバッテリー」は保護回路内蔵のものを採用して欲しかったという感想です。


本製品でも使用されているSoCの開発元である珠海市杰理科技股份有限公司(ZhuHai JieLi Technology)は中国製の低価格のBluetoothオーディオ機器で非常によく見かけるメーカーの一つです。今後も継続してウオッチしていきたいと考えています。

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