【100均ガジェット分解】(31)ダイソーの「デジタル温湿度計」
※本記事は月刊I/O 2021年10月号に掲載された記事をベースに、色々と追記・修正をしたものです。
ダイソーで温度・湿度測定機能の付いた「デジタル温湿度計」を見つけました。早速購入して分解します。
パッケージと製品の外観
パッケージの表示
パッケージ裏面には「用途」に仕様の記載があります。温湿度センサは「温度計精度:±1℃、湿度計精度:±5%(いずれも常温使用時)」となっています。同梱物は本体と取扱説明書(「日本語」「英語」「ポルトガル語」の3か国語表記)、生産国は「MADE IN CHINA」です。
製品の外観
製品の正面は液晶表示部以外は印刷もなくシンプルです。背面にはスタンドと壁掛け用の取付穴、温湿度測定で外気を取り込むためのスリットがあります。
上面には大き目の操作ボタンが3個(MODE, SNOOZE, +/-)あります。
本体の分解
本体の分解
本体背面のスタンドの下にビスが2か所ありますのでこれを外します。周辺のツメによるはめ込みをはすして本体を開封します。
プリント基板と液晶パネルの接続は「異方性導電ゴム」なので簡単に分離できます。
プリント基板はメイン基板とスイッチ基板の2枚構成、電池ボックスはメイン基板にリード線で接続されています。メイン基板とスイッチ基板は組み合わせた状態でパターン同士を直接ハンダ付けしています。
プリント基板の回路構成
メイン基板
メイン基板は紙フェノールの両面スルーホール基板です。
表面にはパターンで型番「GN2110-AN-1 VER 4」と製造日「2020-05016」の表示があります。
中央には樹脂モールドされた「コントローラ」が実装されています。左横はスイッチ基板との接続パターン、下は液晶パネルとの接続パターンです。
裏面にはラジアルリード部品の「ブザー」「水晶振動子」「サーミスタ」「湿度センサ」がハンダ付けされています。「電池ボックスへのリード線」の接続パターンも裏面にあります。
スイッチ基板
スイッチ基板も紙フェノールの両面スルーホール基板です。部品実装は片面のみ、実装されている6個のスイッチは本体上面の操作ボタンの左右押しに対応する位置にそれぞれが配置されています。
回路構成
基板パターンより回路図を作成しました。
コントローラの電源は単4乾電池1本、液晶パネルはパラレル接続の32ピンで直接コントローラに接続されています。
「水晶振動子」の発振周波数は実測で32.768kHz、時計でよく使われる「16bitカウンタの最上位bitが1になった時に1秒(32768は2進数で1000 0000 0000 0000)となる周波数」です。
サーミスタ・湿度センサは共通の中間電圧端子に接続され抵抗を経由してコントローラに接続、ブザーはNPNトランジスタQ1でドライブされています。
主要部品
液晶パネル
液晶パネルは信号線の組み合わせで固定された表示部分を切り替える「セグメント液晶」です。パネルと基板の接続は「異方性導電ゴム」です。
「異方性導電ゴム」は垂直方向のみ通電・水平方向は絶縁という特性を持っています。接続面を拡大すると「導電性ゴム」と「絶縁ゴム」が交互に並んだ構造で、低速のデジタル信号の接続に使用されます。
パネル電極横に「PG7489」という型番表示がありますが詳細はわかりませんでした。
湿度センサ HR202
湿度センサは「HR202」です。湿度と温度の組合せで抵抗値が変化、サーミスタで検出した温度との組み合わせで湿度を計算します。
「HR202」という型番は複数の会社より販売されていてAliexpressでの販売価格は$0.38/1pcs、データシートは以下から入手できます。
https://www.elecrow.com/download/HR202%20Humidity%20Sensor.pdf
サーミスタ MF52タイプ 50kΩ@25℃
サーミスタは抵抗値が負の温度特性(NTC)のMF52タイプと呼ばれる汎用品です。複数の会社より販売されていてAliexpressでの販売価格は$0.85/20pcs、代表的なデータシートは以下から入手できます。
https://www.gotronic.fr/pj2-mf52type-1554.pdf
NPNトランジスタ 2SC1623
ブザーのドライブ用トランジスタはL6のマーキングの「2SC1623」です。「2SC1623」も複数の会社より販売されていてAliexpressでの販売価格は$0.62/100pcs、データシートは以下から入手できます。
https://datasheet.lcsc.com/lcsc/2105241831_CBI-2SC1623-L6_C2828449.pdf
コントローラ
コントローラは樹脂モールドされたベアチップ実装です。基板パターンから56ピンの専用コントローラであると推定できます。
シリコンチップの観察
コントローラはベアチップ実装なので樹脂モールドを観察するのに簡易的にヤスリで削りました。シリコンチップ(ダイ)を露出させたのが以下の写真です。チップサイズは実測で1.3mmx1.1mmで、基板に対して傾いて実装されています。
これを顕微鏡で拡大したものが以下の写真です。基板の結線からシリコンチップ上の大まかな機能ブロックの位置を推定して記入しています。
センサー動作の確認
測定値の比較
本製品とM5Stack ENVII UNIT(sensirion SHT30)の測定値を比較してみました。いずれも仕様(温度計精度:±1℃、湿度計精度:±5%)の範囲にはいっているようです。
センサ動作の波形確認
測定動作時の湿度センサとサーミスタの波形をオシロスコープで確認しました。上段が湿度センサ、下段がサーミスタの波形です。最初にサーミスタにパルス印加し温度測定、次に湿度センサにパルスを印可して湿度測定をしています。電力削減のために波形出力は30秒毎に1回(期間は約0.5秒)のみ行われます。
まとめ
本製品ですが、内部にはきちんとセンサを使用しています。センサは中国製ですが測定精度もほぼ仕様通りとなっていました。
税別500円と、ダイソーの商品としては高額ですが、液晶画面・操作ボタンも大きくて使いやすく、時計機能やアラームもあるので、熱中症を防ぐためにも部屋に1台あると便利です。
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