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現在のあいつと、10年ちょっと前の俺。

年が明けての3が日。街は、日が暮れると同時にいつものように賑わっていく。どうやら、同窓会がいたるところで行われているようだ。楽しそうな昔話が各所から聞こえてくる。

僕も中学校の同窓会に誘われたが、お店の営業があるため行くことはできなかった。幹事をやっている奴から同窓会に誘われた時には、少しドキっとした感じもあった。もう10年近く誰とも会ってない。成人式のときも同窓会があったが、都合が合わず参加できなかった。

成人式から5年ほどの月日が経過し、みんな20代後半を迎え、いわゆる大人ってやつになっているのだろう。中学校を卒業してから、それぞれの月日を経ているわけだが、それぞれが「現在」までの経過を見ているわけではない。同窓会というやつは、その10年ちょっと前から現在までの断絶を埋めて、「現在」を見つめる時間になるんだろうと思う。

みんながどうなっているのかを気にしながら、いつもと同じように唐揚げとサラダを仕込み、お酒の在庫をチェックする。常連さんの予約が入っていたので、いつもより多めの仕込みが必要だった。なに、今日は1月2日だ。常連さんが来るのは2次会以降の時間帯。ゆっくり仕込みをしながら、今日も過ごすとしよう。

「よう、久しぶり」

営業時間が始まるちょっと前に、お店に1人の男性が立っていた。
中学生の同級生だ。しかも、同窓会の幹事。
彼とは、中学時代から仲良かった。同級生からも人気者の立ち位置にいた輝かしい存在だった。
中学を卒業してから、たまに大阪で会ったりしていたり、連絡を取り合ったりしている。今日、彼と再会したのは、半年ぶりぐらいのことだろうか。

見た目もあんまり変わっていない。ちょっと横に大きくなった気はした。それは僕も同じか。

「生ビールもらえる?」
席につくなり、ビールサーバーを指差す。
「あいよ、仕込みの段取り少ししてからでいい?」
「いいよ」
仕込みの段取りと片付けをして、ビールを丁寧に注ぐ。この日は僕も飲むつもりだったので、自分用のハイボールも作り、乾杯をする。

昔話に花を咲かせながら、お酒を飲むのは、なんだか心地いい。意外と10年の月日を感じさせずに、あの頃に戻ったように話が弾む。

昔話を一通り終えると、「現在」の話になった。
それぞれの昔話から、現在の話をすると、僕が見ていなかった彼の人生を垣間見た気がした。この10年で彼は変化していた。
10年前の"俺"が、イマの彼を見ていると、こうもまで人は突き進むことができるんだ、と実感する。

10年前の俺、現在の僕はどうだい?

「それじゃあ、行って来るわ」

時計を見ながら、彼は立ち上がった。

「おう、ありがとな。これからどこへ?」

「中学の同窓会だよ」

あ、今日か。。。

#居酒屋のある日常 #day2

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