見出し画像

がん治療に伴う皮膚症状への対処~スキンケア編~

がん罹患者の変遷2

がんを罹患された方が病気が発覚してから、治療・退院・療養を経て新しいライフスタイルを見つけるまで、上図のように移り変わります。ここでは、それぞれの状態で起こることや、罹患された方が感じていることについて、ご紹介して参ります。

(文:訪問看護経験者 カモミールナース)

手術や化学療法、放射線療法などの治療により、肌はとても弱く敏感になっていて、スキントラブルをおこしやすくなっています。少しの刺激が症状を悪化させることにつながりますので、できるだけ優しくケアすることが大切です。実際どのような点に注意すればよいのか、具体的なスキンケアの方法についてご紹介いたします。

画像2

皮膚を清潔に保つ

一見汚れがついていないように見えても、皮膚細胞は絶えず分裂を繰り返し、次々と入れ替わっています。古くなった細胞は老廃物となり、「垢」としてはがれ落ちていきます。また汗や皮脂も分泌されており、「汗をかいていない」と思っても、実は「不感蒸泄(ふかんじょうせつ)」といって、目に見えない水分が皮膚から排泄されています。こういった老廃物や分泌物により、たとえじっと寝ていたとしても皮膚は汚れてしまいます。汚れは皮膚に刺激となるだけでなく感染の原因にもなるので、できるかぎり入浴やシャワー浴を行い、清潔に保つようにしましょう。治療中は保湿剤や塗り薬を塗ることが多いので、洗う際はそれらをいったんきちんと落とすことが必要です。ただし洗いすぎは禁物です。以下に具体的な方法を説明します。

お風呂につかるときは熱いお湯を避け、ぬるめ(40℃以下)に設定し短時間で済ませるようにします。石鹸はしっかりと泡立て、皮膚を傷付けないよう泡でそっとやさしく洗いましょう。ナイロンタオルは使用せず、柔らかい沐浴用ガーゼや海綿スポンジ、または手で洗います。石鹸の成分が残らないよう十分にすすぐことも大切です。シャワーの圧も刺激になるので、強くならないようにしましょう。石鹸は普段使い慣れたボディーソープでも構いませんが、できるだけ低刺激のものを選び、一度泡立ててから使うか、泡タイプのものを使用しましょう。拭くときもこすらず、柔らかいタオルで押さえるようにして水分をとります。皮膚に症状がある間は、温泉やサウナ、プールは利用しないほうが良いでしょう。

画像3

十分に保湿する

きちんと保湿することで、傷がつきにくく、皮膚のバリア機能を補ってくれます。効果的な保湿の方法として、入浴後、肌が乾ききる前(10分以内が望ましい)にクリーム・ローションなどの保湿剤を、なじませるように(強くすりこまない)塗ります。保湿剤はたっぷり使用しましょう。目安としてはクリームであれば指の関節一本分、ローションであれば一円玉大の量が手のひら二枚分の広さの肌に塗る量となります。これは思っているより多いようで、「え、こんなに塗るの!?」と驚かれる方も少なくありません。必要に応じて保湿剤やステロイド剤が処方されることがありますので、その場合は指示通りに使用しましょう。使用方法に疑問があるときは、処方を受けた病院や薬局の薬剤師にも相談することができます。また、空気が乾燥する季節は加湿器をつけるとよいでしょう。

画像4

紫外線や物理的な刺激を避ける

皮膚への負担を最小限にし、スキントラブルを予防するため、下記のことに気を付けましょう。

衣類は肌への刺激が少なく、締め付けないものを選びましょう。素材は綿やシルクがおすすめです。新しいものは一度洗っておくとよいでしょう。縫い目も刺激になるので、なるべく縫い目の少ないものを選びたいところですが、難しい場合は表裏を返して着るのもひとつです。直接肌にあたる下着であれば、見えないのであまり気にならないでしょう。

放射線治療を受ける場合

日傘・帽子・手袋を活用し、長袖のものを羽織ったりして直射日光を避けましょう。また、照射する部位に湿布や絆創膏を貼ったり、カイロや電気あんかをあてないようにしましょう。

【首周り】首回りに放射線を照射する場合は、ネクタイや襟の詰まった服は避けたほうが無難です。上着は前開きのデザインのほうが、着替えるときの顔や首への刺激を避けられます。男性の髭剃りは電気シェーバーを使うほうがよいでしょう。マスクは柔らかい素材のもの(不織布素材と二重にするときは、内側に柔らかい方)を選び、耳にはあらかじめワセリンを塗っておくと、摩擦による刺激を軽減することができます。

【胸周り】ブラジャーはワイヤーの入っていないものにしましょう。放射線治療時のマーキングが下着につくことがありますので、濃いめの色の方が目立ちにくくなります。

【下半身】 陰部や肛門部に照射するときも柔らかく締め付けない大きめの下着を選び、ジーンズなど硬い素材のものは避けましょう。特に陰部はウォシュレット(弱圧)などで清潔にし、押さえるようにして拭きます。排泄物が直接つかないよう、ワセリンや撥水効果のある軟膏(病院で処方してもらえます)で保護しましょう。

画像5

手足症候群への対処

基本的には前述の清潔・保湿・刺激を避けるということを守りましょう。その上で手足に負担がかからないよう、下記のことに気をつけます。

・長時間の歩行や立ち続けることを避け、足に力がなるべくかからないようにする
・靴はヒールや硬い革靴ではなく、柔らかい材質で足にあったものを履くようにする

ジェル状の靴の中敷を使用するのもよいでしょう。靴下はきついものを避け、柔らかく厚めの生地のものがよいでしょう。

・水仕事・掃除・庭仕事など手足に負担のかかる作業はなるべく避ける

無理をせず周囲のひとに手伝ってもらうことが大切です。どうしてもせざるを得ないときは、保湿剤を塗り、木綿の手袋の上にさらにゴム手袋をするなどして手を保護しましょう。寝るときも綿の手袋をするとよいでしょう。

爪のケア

爪が薄くなったり、割れたりすることがあります。対処として、爪を清潔に保ち、保湿剤をしっかり塗ることが大切です。トップコートを塗ることで爪の保護になりますが、リムーバーは刺激になるので使用しないほうがよいでしょう。また、かゆみが出たときに皮膚を傷つけないよう爪は短くしておきますが、切るときに深爪にならないように注意しましょう。

治療に伴う皮膚症状への対処として、ここでご紹介したセルフケアのほか、病院で行える治療もあります 。また状態により医師の判断が必要となりますので、「副作用だから仕方がないし、命にかかわらない」と我慢せず、気になる症状は早めに医師に相談しましょう。

Tomopiiaではこういった方々をサポートしていきたいと考えています!
1人で抱え込まずにいて下さればと思います。

画像6

筆者ご紹介 カモミールナースさん
合計臨床経験26年 総合病院混合内科で7年、在宅分野は介護予防事業む含め20年目。訪問看護では、慢性疾患ケア全般、終末期ケアをはじめ難病や小児ケアにも携わる。
カモミールには炎症を抑えたり、気持ちを安定させるなどの薬効がある、古くから薬草としても利用されています。花言葉は「逆境に耐える」「苦難の中の力」「親交」。逆境や苦難の中でこそ生まれてくる力を発揮できるよう、周りを支えられる存在になれればと日々奮闘中!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?