見出し画像

がん治療に伴う皮膚症状への対処~症状編~

がん罹患者の変遷2

がんを罹患された方が病気が発覚してから、治療・退院・療養を経て新しいライフスタイルを見つけるまで、上図のように移り変わります。ここでは、それぞれの状態で起こることや、罹患された方が感じていることについて、ご紹介して参ります。

(文:訪問看護経験者 カモミールナース)

現在わが国で行われているがんの治療は主に3つあります。1つ目は腫瘍を切除する手術療法、2つ目は薬でがん細胞を破壊したり働きを抑えたりする化学療法、3つ目はがん細胞の遺伝子に損傷を与え、がんが増えないようにする放射線療法です。それぞれを組み合わせて治療することもあります。どの治療にもメリットとデメリットがあり、少なからず体に影響を及ぼす副作用がいくつかあります。その中でもよくみられる副作用のひとつに、皮膚症状があげられます。命にかかわるような状態になることはほとんどありませんが、皮膚は人体最大の臓器であり、皮膚のトラブルはQOL(生活の質)に大きな影響を及ぼします。今回はがん治療中におこりうる皮膚症状とスキンケアについて、2回シリーズでご紹介いたします。

手術後の皮膚症状-y

手術後の皮膚症状

手術は一部の内視鏡手術を除き、体にメスを入れるので、どうしても皮膚に傷ができてしまいます。腹腔鏡や胸腔鏡という内視鏡手術の場合、傷はかなり小さくすみますが、開腹術や開胸術など大きな傷になる手術も多くあります。個人差はありますが、一般的に傷口は数日で閉じ、1週間から10日くらいで抜糸ができます(抜糸の必要がない場合もあります)。その後3~4週間くらいは痒くなったり赤くなったりすることがありますが、傷が治る過程なので大きな心配はいりません。入院中は医師や看護師が傷に問題がないかをきちんと確認しますので、心配なことがあれば聞いてみましょう。可能性としては低いのですが、退院後、傷の部分に以下のような症状がみられる場合があります。
・強い痛みが長く続く
・赤く腫れてくる
・膿が出る
・傷が開いてしまう
・傷口からばい菌が侵入し、感染を起こすことで熱が出たりする
どのような兆候に注意が必要なのか、退院前に医師や看護師に確認しておくと、いざという時に慌てなくて済むかもしれません。
また、手術する部位や術後の経過などによって、退院時の傷の状態や、使用するガーゼやテープの種類が異なります。患者さんごとに家での観察方法や処置の方法は異なりますので、退院が近づいてきたら、傷の見方、病院に相談が必要な兆候、傷のケアの方法について具体的に確認しておくと安心です。

化学療法に伴う皮膚症状-y

化学療法に伴う皮膚症状

抗がん剤を使用する化学療法によって引き起こされる皮膚障害には、以下のような症状があげられます。
・手足症候群
・発疹(ほっしん)
・紅斑(こうはん)
・色素沈着
・乾燥
・爪の変化  など
手足症候群とは、摩擦が生じやすかったり、体重や力のかかりやすい手のひらや足の裏などに現れる症状で、ピリピリした痛みやしびれ・赤みや腫れ・水ぶくれ・むくみがあります。さらに皮膚が厚くガサガサになってひび割れたり、色素沈着がみられたりといった症状もみられることがあり、ひどい場合には痛みのため歩くのが困難になり、日常生活に支障をきたすこともあります。こういった症状は手湿疹や白癬(はくせん)という水虫の症状にもよく似ているため、自己判断せず主治医や皮膚科に相談することをおすすめします。
その他、全身的にみられる乾燥、発疹(ほっしん)や蕁麻疹(じんましん)などの皮膚障害がみられることもあります。また爪に現れる症状も多く、爪が変形する、薄くなる、割れやすくなる、さらに爪のまわりが赤く腫れたり、化膿したりすることもあります。

皮膚に現れる症状は、痛みやかゆみによる苦痛が日常生活に影響を及ぼすだけでなく、目に見えるだけに不安が増長し、人目も気になるなど精神的な苦痛も伴います。これらの皮膚症状は完全に抑えることは難しいのですが、スキンケアを丁寧におこなうことで症状を和らげることができます(詳しくはスキンケア編でご紹介します)。

放射線療法に伴う皮膚症状-y

放射線療法に伴う皮膚症

放射線療法は、皮膚をとおしてがん細胞に放射線を照射するため、その部位の皮膚がやけど状態となり、赤くなったり水ぶくれができたりすることがあります。本来、皮膚は皮脂が汗などと混じり合って皮膚の表面を覆い、皮脂膜を形成することで水分の蒸散を防ぎ、潤いを保って外界からの異物(アレルゲン・細菌など)の侵入を防御するバリア機能を維持しています。やけど状態となった皮膚は、皮脂腺や汗腺の細胞がダメージを受けて皮膚が乾燥し、汗も出にくくなっているので、皮膚が非常に弱くなり、バリア機能が低下して炎症や感染をおこしやすくなっています。こういった放射線皮膚炎という症状はよくみられるのですが、程度はひとそれぞれです。炎症がひどくなったり感染をおこしたりすると、一旦治療を中止しなければならなくなることもありますので、「副作用だから仕方がない」と我慢せず、医師や看護師に皮膚の状態をその都度みてもらうようにしましょう。また、ご自身でスキンケアを行い、重症化することを予防しましょう。(詳しくはスキンケア編でご紹介します)。

治療に伴う副作用は日々のセルフケアで症状が和らぐものもあります。とはいえ、すべて自分ひとりで考えてケアするには限界がありますので、担当の医師や看護師に相談しながら、ご自身に合ったケアを無理のない範囲で続けましょう。

Tomopiiaではこういった方々をサポートしていきたいと考えています!
1人で抱え込まずにいて下さればと思います。

画像5

筆者ご紹介 カモミールナースさん
合計臨床経験26年 総合病院混合内科で7年、在宅分野は介護予防事業む含め20年目。訪問看護では、慢性疾患ケア全般、終末期ケアをはじめ難病や小児ケアにも携わる。
カモミールには炎症を抑えたり、気持ちを安定させるなどの薬効がある、古くから薬草としても利用されています。花言葉は「逆境に耐える」「苦難の中の力」「親交」。逆境や苦難の中でこそ生まれてくる力を発揮できるよう、周りを支えられる存在になれればと日々奮闘中!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?