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がんになったとき、受けられる社会保障は?~訪問看護編~

がん罹患者の変遷2

がんを罹患された方が病気が発覚してから、治療・退院・療養を経て新しいライフスタイルを見つけるまで、上図のように移り変わります。ここでは、それぞれの状態で起こることや、罹患された方が感じていることについて、ご紹介して参ります。

(文:訪問看護経験者 カモミールナース)

『訪問看護』というサービスをご存じでしょうか。文字通り、ご自宅に看護師が訪問してケアを行うサービスで、年間22万人以上(2017年度時点)の方が利用されています。何となく、高齢者や寝たきりの方が利用されているイメージもあるようですが、60歳未満の方やお仕事をされている方でも利用できます。近年は、病気の子供さんやがんに罹患されている方の利用が増え、利用者はここ4年で10倍に増えています。今回は、がんの治療中に利用できる訪問看護サービスについてご紹介いたします。

訪問介護記事

訪問看護サービスとは?

病気や障害をもちながらも、住み慣れた場所で自分らしく安心して暮らせるよう、医療的ケアをはじめ、精神的ケアやご家族へのケアを行うサービスです。具体的には以下のようなものがありますが、生活全般をみながら病院や他の社会資源(支援に活用できるヒト、モノ、財源、情報)へつなげる支援も行います。

・健康状態の観察(病状観察・体温・血圧・脈拍・酸素飽和度の測定など)
・病気、障害の悪化予防(薬の管理、相談・悪化時の早期対処など)
・医療処置や医療機器の管理(点滴・在宅酸素・人工呼吸器・カテーテル・傷の処置・浮腫のケアなど)
・リハビリテーション
・療養の世話(食事・入浴・排泄・睡眠などが安全にできるようサポート)
・精神的ケア
・ご家族への相談や療養上の指導

がんの治療中の方の場合、主に病状観察や抗がん剤・放射線療法の副作用への対処、薬を使った痛みのコントロール、ポートやストーマの管理、リハビリテーションといったケアが多くなります。もちろん、治療に対する疑問や不安などの相談にのったり、治療や療養に関しての意思決定への支援もいたします。

訪問介護利用の流れ

訪問看護を受けるには?

訪問看護は、医師の指示があればどなたでも利用することができます。65歳以上であれば介護保険制度を利用することになるので、ケアマネジャーが計画書を作る必要がありますが、65歳未満の方は病院にかかるのと同じく、公的医療保険で利用できます。まずは病院のソーシャルワーカーに相談してみましょう。

訪問看護を行えるのは、都道府県から指定を受けた「訪問看護ステーション」に在籍する看護師またはリハビリのセラピスト(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)となります(病院やクリニックからの訪問看護もあります)。訪問看護ステーションにはそれぞれ特色があり、「機能強化型ステーション」はスタッフの人員が充実しており、がん看護に精通しているスタッフが多くいます。機能強化型でなくても、24時間体制で緊急時の対応をしているステーションはたくさんありますので、体調が不安定なときは安心です。

訪問看護にかかる費用は?(医療保険利用、70歳未満の場合)

利用頻度は病状および主治医の指示により、2週間に1回程度から、毎日というケースまでさまざまです。緊急対応は、定期的な訪問を行っている場合に限られており、緊急時のみの対応はできません。週3回以上利用できるのは、ストーマやポート、在宅酸素療法など医療的に特別な管理が必要な場合、および主治医が必要と判断した場合に限られます。時間は概ね30分から90分未満となっています。
費用は1回毎の計算ではなく、非常に複雑です。平均すると、3割負担の場合でおおよそ1回あたりの自己負担額は3,000円程度となり、病院と同じく月の初日の訪問が一番高くなります。週1回利用すると月額15,000円ほどになりますが、月の利用料が21,000円を超えた場合は、高額療養費として病院の治療費と合算できます。つまり、病院(薬代含む)の費用が高額療養費の上限に達している場合は、訪問看護で21,000円以上(おおよそ月7~8回)利用すれば、訪問看護の費用負担は実質0円ということになります。障害者手帳(身体・精神・療育)をお持ちの場合、重度であれば自治体から医療費の補助を受けられる場合があります。その他、届け出をしている訪問看護ステーションであれば、特定医療費助成(指定難病の方)や公害医療などの公費負担制度も利用できます。

60歳以下の方の場合、治療を受けながら仕事をしたり、さらに家事や育児もこなしている方も多くいらっしゃいます。訪問看護の利用を勧められたとき、「いよいよ悪くなったら」とおっしゃる方も多いのですが、治療の副作用や病状の不安を抱えながら、日常の生活をこなしていくことは想像以上に大変です。家族や友人には弱音を吐けないこともあるでしょう。
訪問看護師は医療的なケアを行うだけでなく、病気や治療を理解し、療養者の生活全体を考えながら専門的な立場からアドバイスしたり、主治医との橋渡しをしてくれる存在です。守秘義務を遵守する「他人」だからこそ、話せることもあるかもしれません。退院後や外来での治療中、訪問看護という公的なサービスを利用することも選択肢のひとつとしてソーシャルワーカーや主治医に相談してみてはいかがでしょうか。

Tomopiiaではこういった方々をサポートしていきたいと考えています!
1人で抱え込まずにいて下さればと思います。

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筆者ご紹介 カモミールナースさん
合計臨床経験26年 総合病院混合内科で7年、在宅分野は介護予防事業む含め20年目。訪問看護では、慢性疾患ケア全般、終末期ケアをはじめ難病や小児ケアにも携わる。カモミールには炎症を抑えたり、気持ちを安定させるなどの薬効がある、古くから薬草としても利用されています。花言葉は「逆境に耐える」「苦難の中の力」「親交」。逆境や苦難の中でこそ生まれてくる力を発揮できるよう、周りを支えられる存在になれればと日々奮闘中!


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