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第10章「ユイとヨシキ」

コケッコッコーと鶏の目覚まし時計が鳴り響き、アスカは目が覚めた。あの岩どこかで見覚えがある。
 アスカは、学校に行っても考えていた。どこで見たのだろうか。理科の時間に考えすぎて眠ってしまった。

「昨日のペテルギウスの超新星爆発ですが、重い星の最期に起こる天体現象として、核融合が進み、密度・温度が高くなり、原始核の鉄が一番安定すると言われますが、その鉄のコアが潰れ中心が跳ね返り、衝撃波が発生し、一瞬で爆発すると言われます。そして爆発のエネルギーが重力波となり伝わって、日本のKAGAが捉えた訳です。何光年と離れた宇宙から、波となって、私達に届くなんて凄いと思いませんか? アスカ君?」と先生は、アスカに尋ねるが、アスカは俯いているので、後ろのユイが、アスカの背中を叩いて合図した。

 アスカは飛び起きて、
「は、はい。それは、本当に凄いです。その波に人は乗ることはできますか?」とアスカは寝ぼけながらとっさに答えた。
「えー。寝ぼけていたとは、思えない、いい質問ですが、人への影響は遥かに小さいものですので、サーフィンを持って波を待っても、その波には、乗ることはできません」と先生は笑いながら話した。

 授業が終わり、放課後、掃除当番を終わらせて、アスカは、美術室へ向かった。
部屋に入ると、すでにユイはキャンパスを用意して書き始めていた。ユイはアスカを見るなり、
「さっきピンチだったね。アスカ、イビキかいてたよ。咄嗟の答えが、アスカらしくて心の中で笑っちゃった」とユイは、ニヤニヤしながら話した。
「私、イビキ書いてたの? 早く起こしてよ。あの時でさえ、恥ずかしい思いだったのに」と恥ずかしくなるアスカ。

「いいじゃん。アスカらしくて、理科の時間いつも寝てるから、先生もアスカ君! ってゆうんだよ」とユイはまるで、理科の時間を楽しんでいるかのように答えた。アスカは、キャンパンスを準備してユイの隣に座り絵を描き始めた。

「ところで、昨日、初一人ダイビングだったんでしょ。どうだったの?」とユイは聞いた。
 アスカは、絵を描きながらユイに不思議な体験をしたことを話した。

「へぇー、面白いじゃん」と興味ありげに同じ美術部の同級生であるヨシキが、前の席から振り返り、質問してきた。
「それって、タイムスリップしたんだよね。大陸が一つに繋がっていたとなると、遥か昔の地球か、遥か未来の地球か、どっちかかもしれないな」とヨシキが言うと、ユイは、「どうゆうことよ」と説明を促した。

 ヨシキは続けた。
「昔、地球は大陸が繋がっていて、プレートテクトニクスによって陸が離れてはくっついての繰り返しで現在の形になっている。パンゲア大陸って聞いたことない? 現在から未来に向かっても同じようにまた、陸がくっついて行くと動画で見たことがあるんだ。だから、アスカが行った先は、もしかしたら、超大昔か、超未来かのどちらかじゃないかな」と話した。

「じゃ私は、未来だと思う」とユイ。「なんで?」とすぐさまヨシキは聞き返した。
「だって、未来都市を見たんだよSF映画じゃん! 未来で決まりだよね」とユイは力強く答えた。

「俺はそうは思わない」とヨシキ、「なんで?」とすぐさまユイは聞き返した。
「考えてみろよ。先人たちが切り開いた科学は、歴史的に見てもこの数百年で飛躍的に進んでいる。一万年前に縄文土器を使っていたのが、今じゃこのタブレットを使っているんだぜ! 地球が誕生して四十六億年経っている間に俺たちのような文明を持っている人類が何回も誕生しては、消えていったと考えてもおかしくないはないと思わないか?」とヨシキは力強く答えた。

「過去だったら地層を調べれば分かるんじゃない。証拠でもあるの?」とユイは負けじと言う。
「地層は、四十億年以前の岩石は発見されていないらしい。だから、アスカは、地球誕生四十六億年前から四十億年前の地球に行ってたかもしれないな。それと、プレートテクトニクスによって、人類が築いた文明が地球の内部に入り込んでしまったら探し出せない。さらに、地層が発見されない理由にゼノスが発動したビッグリップのような素粒子レベルまで紐解いたとしたら地層にも出てこないと思うな」とヨシキは、ユイを見た。

「何よ、そのクリップみたいな話」とユイはヨシキにクギを刺すように言った。

「ビッグリップとビッグクランチは宇宙終焉のシナリオだ。簡単に言うと、ビッグリップは膨張した宇宙の加速が早すぎてそのまま素粒子レベルまでバラバラになること、ビッグクランチは、ビックバーンの膨張の反対で縮んでしまうことだ。ハルスが、ニュートリノのような幽霊粒子を操ってAI粒子を作ったのなら、ゼノスもまたディープラーニングでダークマターを操り、素粒子レベルまで紐解いたと考えるとあり得る話かな。そして、ゼノスは対象となるものをハルスの影響を受けた全ての物にしたのかもしれない。それは、同時にその星の全てのものとなる」とヨシキはユイに説明したが、ユイは「難し過ぎてよくわからない」と手を挙げて首を傾げるポーズをした。

「それに気になるのが、TA496というその星の名前、何か調べたのか?」とヨシキはアスカに聞いた。
「それが、ネットには何も出てこなかった。ただ 496は完全数だとか」とアスカは弱々しく答えた。

「そうなんだ。496は完全数で神の数式かもしれないんだ。古代ギリシャから現在に至るまで特別な数字であり、この宇宙を表す数字かもしれないんだ。そして、TAだけどテエィ、ティア、アトランティスかもしれないと思ってね。太古にゼウスの怒りにより一日で沈んだとされるアトランティス大陸は、超古代にして高度な技術を持っていて、なおかつ伝説として語り継がれてる。アスカが体験したゼノスの怒りは、もしかすると、アトランティスを一夜にして消滅させたものだったかもしれないな。アトランティスが海に沈む時に洪水が起こり、ノアの方舟として、隣の天体にDNAカプセルとして、送ろうとしていたのも、伝説上の話と一致する。その送り先は、月だったかもしれないね。月に水分子が発見されていて、超太古は月にも水が溢れてたかもしれない」とヨシキは話した。

「相変わらず、都市伝説が好きだよね」とユイが言うと、アスカは、「まあ辻褄は合ってるね」と頷くアスカ。

「まとめると、アスカがワープした先は、四十億年前以上の超大陸のアトランティスであり、アトランティス最後の日だったのかもしれない。今はアトランティスは、プレートテクトニクスによって地球の内部に沈み込んだが、その伝説は今もなお語り継がれている」とヨシキ満足げに話した。

「こじ付けも良いところだわ。やっぱり私は、未来の地球だと思う。だって、動物を搾取せずに食事が出来たり、人と動植物が完全に住み分けられている世界でしょ。環境にも優しいし、理想的な形じゃん。じゃ、アスカが、帰って来られた小天体の衝突はどう説明するのよ!」とユイは話した。

「それは、隣の星は、火星だろう。火星は、かつて、ボレアリス衝突っていう小惑星が衝突してるんだよ。その衝突は太陽系の中でも最大級の衝突だった見たいだぜ。その衝突の重力波に乗って現在に帰って来れたんじゃないか?」とまたまた、ユイに向かってドヤ顔したヨシキ。

「相変わらず、ウッとしいわね」とユイは舌を出してベーっとした。
「まあまあ、その辺にして、聞いてくれてありがとう」とアスカは二人に伝えた。
 二人は「ふん」と首を振りまた、絵を描き始めた。アスカも絵を描き課題の作品を描き終えた。 

 顧問の先生に課題の作品を持って行く。
「失礼します。課題が完成しました」とドアを開けた。
「よくできてますね。今度の課題は、卒業課題です。自由に書いて見ましょう。受験も始まるので来年の九月までに完成させて下さいね」と両手でやっと持てる程、大きなキャンパスを出して来た。
「先生、この大きさに描くのですか」と両手でキャンパスを受け取るアスカ。

 アスカが大きなキャンパスを持って出てきたのでユイは、それを見て「次それに描くの?」と驚いた表情でアスカを見た。
「みんなも次は、これだと思うよ」とアスカは両手でキャンパスを持ち上げた。

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