私がCIOになることを決めた日

私は日本にCIOを職業として確立したい、という思いで日々活動を行っています。今日は、私がCIOを自分の天職だと確信した瞬間についてお伝えします。

2007年のある日、私はIBMの米国本社を訪れていました。その日の目的はIBMのCIOに会って、CIOとは何か、CIOはどのような仕事をこなす職業なのか、教えを乞うためです。その当時、私はパナソニックの米国子会社のCIOの立場でしたが、それはなりたくてなったわけでも私に才能があったからでもなく、サラリーマンとして海外赴任してたまたまそうなっただけでした。情報システム部門に大勢いる課長職の一人に過ぎませんでしたから。

日本企業に勤める会社員にとって、海外赴任の醍醐味は、責任と権限がいわばインフレーションを起こしたように突然2段階ぐらいアップするところにあります。自己の成長の大きなチャンスでもありますが、経験あるローカルスタッフから見れば、「未熟な人間が本社から来た」と感じることも多くあります。だって、私のような課長が突然CIOになるわけですから。

たまたまビジネス上の繋がりで、その日IBMのグローバルCIOとお話しする機会を得ましたが、私が最初に発した「CIOはどういう仕事をする人ですか?」という実にざっくりとした質問に対する彼女の回答は明快でした。「CIOはビジネストランスフォーメーションをリードする人です。」

この時の衝撃は今でも明確に肌感覚として残っています。何故なら、テクノロジーとかシステムという単語が一つも入っていなかったからです。ですので「テクノロジーじゃないんですか?ビジネスですか?」と返しましたが、私への回答は、「テクノロジーはイネーブラーです。目的はビジネストランスフォーメーションです。」と、更にど直球の回答。

その後彼女がどのように会社のプロセスと組織とITを改革したかを実際の事例をベースに、当事者ならではの苦労とそれを乗り越えた時の達成感について1時間を超える会話が続きました。実践した当事者の話しを直接聞く事で、「自分も同じようにやってみたい」と心に強く思いました。

会議を終え、外の空気を吸い込んだその瞬間、「CIOになりたい。」「本物のCIOになりたい。」という確信に近い思いが、頭の上から降って来て、その瞬間にとても強い幸福感を覚えました。天職に目覚めた瞬間です。

それまでの私は、自分の就職時の希望であったマーケティングのお仕事に未練を抱きつつも、あてがわれた情報システムでのSEという仕事を、瞬間、瞬間では全力投球しながらも、「ここじゃないどこか他の場所に自分の生きる道はある。」というような、どこか醒めた感じで仕事をこなしていました。

その日から8年経った2015年、私はCIOになりました。今回はなりたくてなったCIOでした。


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