製造業の情シスは楽しい
なぜ私が製造業で働くのかについて今日は書きたいと思います。結論を先に書きますと、製造業はバックオフィス業務が複雑で難易度が高く、そこが面白いからです。
この複雑さ、難易度について、製造業、流通業、ネット事業の3業態で違いを述べて行きます。
まずネット事業の最大の特徴は物理的な「在庫」を持たないことです。これが、流通業、製造業との大きな違いです。モノがないので、バックオフィス業務も非常にシンプル。人事、採用、財務会計、給与計算、経費精算、勤怠管理などが主要なシステムになります。SaaS型のクラウドソリューションでカバー出来ます。
流通業の最大の特徴は、モノを扱うこと、そのモノが「仕入れ」と「販売」で同じモノである事です。メーカーから仕入れたモノを販売します。これにより製造業よりもプロセスとITが単純です。とはいえ、物理的な在庫を持つために、仕入れ計画、在庫管理、倉庫管理、売掛金・買掛金管理、保証・返品といったようなネット事業にない「プロセス+IT」が必要になります。ネット事業を中心に展開して来た会社が物販を始めた途端にオペレーション上の問題が発生するのは、こういったモノを扱うビジネスオペレーションへの知見とプロセス的な成熟度が低いためです。しかも自分たちがバーチャル空間で予想した通りにリアルな現場が動かない場面も多い。配送するためのトラックの予約一つとっても実務的に解決しなければならない様々な制約事項が現れてきます。要は、いろいろと面倒くさいことが増えるのです。
製造業は製品を企画し、設計し、材料を仕入れ、製造し、販売し、保守します。ITソリューションとしての流通業との違いとしては、例えばBOM(Bills of Materials)と言われる部品表が登場します。BOMひとつとっても一冊の本に収まりきらない分量の知識とノウハウが必要です。設計業務ではCADが登場します。図面や部品表を統合的に管理するPDMも登場します。生産においては生産管理システムで生産計画と実績管理、材料在庫管理、部材調達を行い、月次、週次、日次での生産進捗を、市場の変化、材料調達の制約、工場設備のキャパシティ、労務面での制約、生産歩留まりの制約、その他諸々を考慮しながら微調整するような「プロセス+IT」が求められます。流通業ではメーカーに「すぐに商品持ってこい!」と言って終わりの世界を、金型作りから始めて自分たちで解決しなければならないのです。要は、更にいろいろと面倒くさいことが増えるのです。
このように複雑で面倒くさいことが多いこと、それそのものが製造業で働く魅力なのです。誰もが嫌がるようなこのような面倒な事に取り組むことが、最高にセクシーだと私は思っています。その上で、誰もが嫌がる面倒な事を、自分の「好きなこと」にしてしまえば、希少人材として市場価値も高まります。私は製造業のSEであり続けることに喜びと誇りを感じています。そしてネット事業で頑張っている人もいる、流通業で頑張っている人もいるわけです。私は私の出来る範囲で、持ち場として製造業を選んだだけです。野球に例えれば、自分はセカンドを守る、ぐらいの感じです。別にネット事業、流通業、製造業に優劣があるわけでもありません。私は、私の持ち場で頑張り、その持ち場を愛している。ただそれだけなのです。どこで何をやったとしても、自分の持ち場を愛することが出来ればきっと幸せになれます。好きになれるかどうかは、あなたの気持ち次第です。好きになると決めれば良いだけなのです。
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