もしもし、あのね
「もしも〜し。パパさんですか」
「はーい、そうですよー」
「あのね、こちらはムスメちゃんと妹ちゃんですよー」
「はーい」
「じゃあねぇ、いまなにをしてるでしょう?」
「えーと、あそんでますか?」
「そうですーうふふ。そしたらクイズだしてくださーい。」
永遠に続く物語、である。
小学校に上がる前に、危機管理もかねてムスメに携帯電話の番号を覚えてもらおうと夫と話し合った。万が一、外で迷子になったときにも必要になるし、ムスメと同じクラスのお友達でも、親の番号を諳んじられる子が何人か出てきている。
早速家にあった付箋に電話番号を書いて手渡すと、
「これ、わたしの?」
となんだか嬉しそう。(どうして子どもたちはレシートやら請求書やら、数字を書いた紙がこんなに好きなんだろうといつも不思議)
「ムスメちゃんがおねえさんになってきたから、信頼して渡すんだよ。しっかり覚えてね」と加えると、鼻の穴を少し膨らませて背筋をのばし「わかった!!」といいながら熱心にメモを見ている。
その夜、「ねぇ、ママの電話貸して」とムスメが言った。
時計をみると夜の9時すこし前。9時以降は親子とも電話を触らないルールなので躊躇しながら、一応「なにをしたいの?」と聞くと、「パパの電話に電話してみたいの」との返事。
おお、これはいい機会だ、と早速携帯電話を手渡す。夫も嬉しそうに「じゃあパパは2階にいってまってるね〜」とそそくさと移動を開始。夜のささやかな、でも一大イベントのはじまりだ。
準備も整い、いざボタンを押そうとすると
「えーと9……」
最初から間違っている!と笑い出しそうになりながら、でもその真剣な眼差しが愛おしくて「もう1回メモ見てみようか」とうながす。結果、半分くらいこちらが導いて、という形にはなったものの無事に電話はつながり、冒頭の甘い会話がはじまった、というわけ。
こうして少しずつできることが増えていって、いつの日か当たり前に電話なんてできるようになると思うのだけれど、今日この日のわくわくを覚えていたいな、と思って筆をとっている。ああ、これ、残しておきたいな、そんな気持ちが増えてきたのも、noteをはじめて変わったこと。
ちなみにその夜、夫がだしたクイズはこちら。
「じゃあねぇ、キングダムの王騎将軍の口ぐせはなんでしょう?」
「コココココ!!!」
即答したムスメを驚愕の目で見つめながら、夜は更けていく。
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