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地球上のどこでも生き抜く力② 尾﨑由博×西田博明 スペシャル対談

10代から20代の初めに、自分の意志で海外に飛び出した、『世界とつながるゼロ円渡航術』の西田博明さんと『アフターコロナの留学』の尾﨑由博さん。それまでの自分の理解の外に出る経験をしたからこそ、いまの自分の仕事や生き方があると語ります。(前編はこちら

アフターコロナのこんな時代、ますます先の読めない世界だからこそ、海外での経験がこれからを生き抜く力になる。

後編は「海外に行きたい」という思いを持つ人の未来と初めの一歩に向けて、おふたりからのメッセージです。

未知の中で次の一歩を決めていく力が、人生の選択肢を増やす

尾﨑由博さん(以下、尾﨑)私は仕事では、留学というより、ビジネスに関わる海外での安全管理や危機管理についてご相談いただくことが多いです。基本的に全て未知の事象です。今のウクライナだって、この時代にあんな形の戦争が起こるんだ!? というのが大多数の感覚ではないでしょうか? でも起こってしまったら、ウクライナ勤務の人はどうしたらいいか、モスクワの駐在者は?と考えなければならないわけです。実際、バレエや音楽の留学でウクライナにいらした方が逃げ遅れてしまったケースもいっぱいある。こういう時に、自分の今までの知識を掛け合わせて、あとちょっとの想像力のスパイスをふりかけて、納得解を導き出すことが私の仕事なんです。

西田博明さん(以下、西田)その考え方って、生きていく上でも役に立つんだろうなと思っています。海外にいくと手持ちの情報が少なくて、わからないなりに、仮説を立てて動くことって必要になってくる。日本でも、自分が何かしたい時に、わからないことを元に、新しく作っていかないとならない時って、いっぱいあるんですよね。留学したい、もそうだし、会社で新しいことを始めたいけど、前例もないし上司もわからない。ネットを検索したら情報は出てくるけど、本当かどうかわからないこともいっぱいある。それでも、自分で決めていかなきゃならないし、その結果は自分で引き受けていくしかない。そんな時「情報がないからわかりません!」とやめちゃうのか、それとも自分で調べてやってみるかで、人生の展開って全然変わっていくと思うんです。

尾﨑さんから会場へのクイズ「これは何でしょう?」
知識と想像力をかけあわせて、見事に正解を導き出した参加者も

(答えは本記事の最後に掲載しています)

西田 これからどんどんマニュアルも正解もない世界になる中で、どうすればいいか見えない時に、手持ちの情報を元に次の一歩を決めていく力って、海外でめっちゃ養われますよ。そうするしかないですから。それが、尾﨑さんのように直接的に仕事につながることもあれば、人生を前に進める上で役に立つこともあります。

尾﨑: そういうことだと思います。これから、前の時代の豊かさや成長の象徴であった「形あるもの」の先に、価値を出していくにはどうすればいいか、答えのない時代になっていくと思います。日本にいてもそうですし、海外ではもっと、先が見えない世界になると実感として思います。日本で暮らしていくとしても、今までの延長線上に未来はないと思うと、他の人たちとはちょっと違うことを経験したり、知っていたりする、もしくは他の人たちよりちょっと勘が鋭い。そういうところを磨くと、就職とかにも有利でしょうね。

西田 海外に行くと、わからないことだらけで、そのバランスが悪いところで、自分の重心を確かめながら動いていくことになる。それに慣れていると、インナーマッスルも鍛えられるし、体の状態が研ぎ澄まされていく。いろんな状況に対応できるというか、自由に動きやすくなると思います。

ルーマニアで一緒にワークショップを開催したコンサルタントと西田さん(左)。
ピースボートでの世界一周の旅の途中に、イタリアで再会した時の一枚

尾﨑: 日本は、予定通りにものごとが運ぶことにすごい価値を置いていると思うんです。一度、東京の有楽町線で、「ただいま、この電車は45秒遅れで走っております。大変申し訳ございません」ってアナウンスを聞いてびっくりしたことがあります。インドでは、電車の遅れが1時間で収まればオンタイム。3、4時間遅れることだってザラなわけです。いちいち怒っていたら、身が持たない。45秒で謝っている日本と、まあ、3時間しょうがないかって思えるのと、どちらがいいというわけではない。でも、その「しょうがないか、こういう時もあるわ!」って思える「あそび」があった方が、生きていく上で楽だと、私は思うんですよ。

西田: 日本にいて、細かいところがきつすぎて生きていけないわってなったら、インドに行った方が幸せな可能性もある。逆に、日本にいることを選んだって、今は「日本人コスプレ」をしていると思えば、苦しくないんですよね。異文化に触れることで、自分の文化との距離感も調整しやすくなる。

尾﨑: まさに。生活環境だけでなくて、この円安の時に、ドルまたはユーロでお給料をもらう仕事につけるかというのも大事なポイントかもしれません。仕事をする言語とか勤務地の許容範囲を広げること。それは生きていく選択肢を増やすってことなのだとも思います。

「海外に行きたい」という心の声があるなら

尾﨑: 大学の頃から、私が大事にしている座右の銘は、「思ったら言え、言ったらやれ」という言葉です。何かをやりたいなって気持ちを最初に持つ時って、自分の心の中にしかないと思うんです。「あの人みたいになりたい」でも、「こんな仕事をやってみたい」でも、最初は心の声じゃないですか。それをまず言ってみてください。お父さん・お母さんでもいいと思うし、お友達同士、塾の先生でもいい。信頼できる人にまず言ってみると、それに知識を持っている人、やったことがある人が、どっかで現れてアドバイスをくれます。それがどういう人かは見極めないとですけど、何か一つでいいです。言われたことにトライしてみましょう。それが、想いを実現する本当の第一歩になります。見当違いのアドバイスかもしれないし、やってみて失敗するかもしれない。それはやってみないとわからないです。

オリンピックの選手も、最初は町の大会から出てきているわけじゃないですか。ちょっと走ってみて、「私、速いかも」って、市の大会に出て、県の大会に出て、日本の大会に出てってやっているうちにオリンピックに出る。いきなりオリンピックには行かないし、途中で、市の大会で負けちゃうこともある。それでも、努力が間違っていないから、いずれオリンピックにいくわけです。

トークショー終了後のサイン会の様子。
海外に行きたいという質問にも丁寧に答える西田さん(左)と尾崎さん(右)

西田: 「海外へ行きたい」という人に、僕が知っておいてほしいと思うことは、怖くていいんだよ、不安でいいんだよってことです。むしろ、怖くて不安なのが正常です。でも、怖いイコールいっちゃいけないというわけではない。ではない。むしろ、必要な賢さを持っているからこそ怖くて、一方で「行きたい!」と思っている自分もいるわけじゃないですか。なので「怖い」と言う自分も「よしよし」って抱きしめてあげて、海外に可能性を感じる自分について行く。新しいことをする、それも違う環境に行くという時に、怖くなくなるまで待ってたら、いつまでも行けないから、とにかく踏み込んでみる。

ネガティブな感情は、生きていくためには必要な感情で、「冬は寒い。寒いから厚着しよう」みたいなものです。何かやってみたら、それなりにネガティブなことも起きるのがこの世界の仕組みだから、怖くていいんです。不安でいいんです。ムカつくこともあっていいんです。必要であれば、頑張ることも解決することも大事ですけど、ためらう気持ちも大切にして、そのネガティブな感覚も抱きしめながら、一歩踏み出すというのがおすすめかなというのが、僕からのアドバイスです。

尾﨑: やりたいことをまず言ってみるのが本当の第一歩。言ってみて、いろんな人から助けてもらって、やり方を学ぶ。そして、それをやってみるからできるようになる。海外に行くのにも、これからの世界の不安定さを生き抜く選択肢を広げていくのにも、その行動が一番大事なんじゃないかなって、私は思います。

江別蔦屋書店入り口前の特設コーナーに並ぶ
『アフターコロナの留学』と『世界とつながるゼロ円渡航術』

尾﨑 由博(おざき・よしひろ)
株式会社海外安全管理本部 代表取締役。
1981 年生。2006 年より国際協力機構(JICA)にて勤務。インド、パキスタン、アフガニスタン等南アジアにおける安全対策、開発支援案件の形成、実施を担当。
パキスタン駐在中国政選挙や首都における大規模反政府デモ等に対応し、現場での安全管理業務ノウハウを体得。2016 年 7 月に発生したバングラデシュ、ダッカレストラン襲撃事件後に発足した安全管理部の第一期メンバーとしてJICA安全対策制度、仕組みの構築に貢献。また、組織内の緊急事態シミュレーション訓練において階層別に様々な訓練を企画、実施。国連機関及び世界銀行の危険地赴任者向け訓練も受講しており、JICAのみならず国際機関の安全対策研修内容も熟知。
2018 年より独立し株式会社海外安全管理本部創立、代表取締役。
2022 年からは世界最大のセキュリティ関係者コミュニティである ASIS 日本支部で事務局長を務める。
獣医師、日本証券アナリスト協会認定アナリストの資格を有し世界情勢、感染症 / 公衆衛生、そして経済の 3 つの分野の知識、人脈を総合し、独自の視点でセキュリティコンサルティングを実施中。東証一部上場企業を筆頭に複数の企業、国立大学等からも信頼を得ている。

海外安全.jphttps://kaigaianzen.jp/
Twitterhttps://twitter.com/kaigaianzenjp

講演・セミナー依頼も、随時受け付けています

西田 博明(にしだ・ひろあき)
株式会社Tomoni代表取締役。公認心理師。国連平和大学(コスタリカ)修士。
心理学など国内外で得た知見を活かして、経営者や専門家へのコーチング、組織開発などを提供。「転換期の仕掛け人」として、明日を変えたい人に伴走している。
はじめての海外は高校生の時のノルウェーへの交換留学。英語初心者の状態から、ほぼ独学で英語とノルウェー語を身につける。学生時代はチリに留学し、近隣諸国へのバックパック旅行や、フィリピンへの6週間の「ゼロ円渡航」も実現。
卒業後にベンチャー2社で事業立ち上げを経験した後、2008年に独立。
20代後半でのコスタリカへの大学院留学、海外9カ国でのワークショップ実施も含め、2023年現在で、海外滞在は41カ国、延べ4年。うち32カ国が「ゼロ円渡航」。
近年はさらに活動の幅を広げ、伝統工芸の支援や大学でのキャリア教育にも携わっている。

公式HPhttps://tomoni-inc.com/
各種SNSリンクhttps://linktr.ee/tomoni/

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スイスのバーゼルに建てられた
スイス・フランス・ドイツの国境が交わる
三国国境のモニュメント

この記事は、2023年3月21日に北海道の江別蔦屋書店にて開催したスペシャル対談(主催:Office ConTe)に基づくものです。記事化にあたって、内容を抜粋し、表現や順序を整えています。

構成・執筆:プロフィール作家ハナ(井原はなえ)


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