青ブラ文学部〜東京ドーム

「サヨナラホームラン」


自分には、何もできることがないと思っていた頃。

何故か、野球を観に行ってた日があった。

東京ドームは、いつも満員で駅から人がごった返していた。

人混みは、とても苦手な自分は、疲れるシチュエーションだった。

ただ、同じ年齢の選手がいた。

何もない自分と、選手としてやることがあるその人。

それは、尊敬の念でもあり、羨ましさも少しあった。

ドームへ行くと、中継の映像と違って、広く見える。

実況がなく淡々と進む試合に、その選手の活躍を期待していた。

チームのファンというより、個人のファンだった。

その選手が活躍すれば勝敗関係ない感じ(結果勝つけど)。

その選手が打てず、負けることも多かった。

その時は人の多さでぐったりとしながら帰った。

ある日、いつものように期待をあまりしないでドームへ行った。

チームは、優勝マジックが点灯していて、クライマックスの流れ。

当時は、クライマックスシリーズはなく、リーグ優勝即、日本シリーズ出場だった。

相手チームも優勝はなくなったとはいえ、プロのチーム。

中盤までに3点をリードされる展開だった。

いつもの悪い流れのようだが、この日だけは何とも思わなかった。

その選手が登場すると、豪快にライトスタンド2階席へホームランを放った。

そこから徐々に流れが変わる。

回を追うごとに1点ずつだが、ホームラン構成でついに3−3の同点に追いついた。

同点のまま、両チームともエースピッチャーが踏ん張り、
9回の裏になった。

ノーアウトで上位打線。

先頭バッターがフォアボールで出る。

そして、その選手がバッターボックスに立つ。

相手のピッチャーも敬遠はなく、真っ向勝負だ。

2回ほどボールの後、真ん中にストライクが入り、
その選手がバットを振る。

打った瞬間それとわかる音だった。

ライトスタンドへとボールが飲み込まれていった。

すごい歓声だった。

その選手は、他の選手が待っているホームに飛び跳ねるように走っていった。

しばらくして、その選手は引退したが、今でも元気に活躍している。