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虹色ドリーミング(第30回)

#創作大賞2024
#お仕事小説部門

 消灯時間になったので、私たちは病院を後にした。帰り途のコンビニでそれぞれが食べたいものを選んで買って帰った。
「コンビニのお弁当っていうのも何か味気ないな」
「たまにはいいじゃん」
「俺は食べられればなんでもいい」
「和兄はすぐ、なんでもいいって言うもんね」
 よし、切り出そう。
「……ねえ、パパあのね」
「ダメ」
「えっ?だって」
「ダメなものはダメ」
「私また何も言ってないじゃん」
「杏花、小さい頃にアイドルになりたいって言ったのは誰だ?」
「私」
「ジュニアアイドルのグループに入りたいと言ったのは誰だ?」
「私」
「今の事務所に入って、今のグループで頑張りたいって言ったのは誰だ?」
「私」
 なるほど、自分で言い出したんだから、とか言うのかな。
「もっと上へ、もっと大きなステージへと願うアイドルの夢は誰の夢だ?」
「私」
「ブー。不正解」
「えぇっ?」
「小さい頃アイドルになりたいという夢は杏花だけの夢だった。ジュニアアイドルになった時その夢はパパとママと杏花の夢になった。今のグループを始めた時には家族全員とメンパー全員、あとスタッフさん全員の夢になった。そして今抱いている夢はファンみんなの夢でもあるんだ。もう杏花一人の夢じゃない。杏花一人で膨らませた風船じゃない。みんなで頑張って膨らませてきたんじゃないか。それを杏花一人の都合で割ることはできないし、もしできるとしてもパパはそんな子に育てたつもりはない。ママだってどんなに治療が辛くても杏花の夢を壊すことはしたくないと言うはずだ」
「……パパ、でも家事が……」
「家事なら私がやる。杏花姉は夢を追いかけて」
「美花……」
「私だっているじゃん。こう見えても家庭科得意なんだよ」
「姫花……」
「学校で俺、杏花姉の弟だってバレてて大変なんだぞ。カレンのサインもらってこいとか、ユキちゃむに会わせろとか。だけど言ってるんだ、それは無銭がっつきっていってアイドルに嫌がられるから、ちゃんとライブに行ってくれって。みんなみんな応援してるんだぞ」
「和宏……」
「僕はバレてないけど、みんな誰ファンかって話で盛り上がってる。僕は苗字がいっしょだから最杏チームだって言ってる」
「直宏……」
「僕だって杏花姉のファンだ」
「隆宏……」
「分かったか?分かったら泣いてないでさっさと飯を食え、冷めちゃうぞ」
「うん。パパ、みんなありがとう」

「聴いてください、私が作詞した曲『ドリームプラネット』」
≪私一人の夢だったのに、いつしかみんなの夢になってた 夢が広がり伝わって この星全てを包み込む 地球自体が大きな風船 夢がたくさんつまっている ふくらんで太陽よりも大きくなる いーくーよー ドリームプラネット 太陽も銀河も超えてゆけ ドリームプラネット 宇宙の果てまで広がってゆけ まだ誰も見たことがない未知の領域へ ドリームプラネット≫

 ママは手術翌日から歩いて、どんどん管が外れていき、口からものを食べることで元気を取り戻していった。
 ママが退院して普通の生活が送れるようになったので、私も他のメンバー同様お仕事を増やしてもらった。たくさんのオーディションを受けてやっと受かったのが。子供向け番組で歌とダンスと工作をするおねえさん。
≪はーいクマさんのできあがりー!クマさんがついてくる トコトコトコトコト トコトコトコトコト≫

 さて、今日は収録の後、ニジドリの新曲『ハイパーバウンダリー』の披露、場所はなんとさいたまスーパーアリーナ。
「アリーナ!とかね」
 コンコン……
 社長が入ってきた。
『まず春に七大都市ツアーをやることに決まった』  よーし、やるぞぉー!
「そこでツアー限定で杏花、有希、ゆりのユニットを組む、『プリズム』とのコラボも考えている」
 おぉ、それも面白そう!
「それと、これが一番重要なんだが……」
 えぇっ!そんな……。

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