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「東京タワー」

「東京タワー」
今日はこのお題でエッセイを書いてみよう。

24歳の時、職場の適応障害で人生を憂いていた時の話。
六本木のスターバックス併設のTSUTAYAで、朝までひとり、本を読んで過ごしたことがあります。季節は初夏。凛とした漆黒の夜更けの空から、しっとりと肌にまとわりつくような薄水色した空に代わる頃。店を出て、六本木の街をぷらぷらと歩きました。とっくにスマホの充電は無くなっていて、時間すらわかりません。六本木ヒルズの2階、中庭から東京タワーが見える小窓があります。普段なら、人が多い観光スポットですが、今は誰ひとりいません。そこに腰掛け、東京タワーをぼーっと眺めていました。ふと、「あの東京タワーも誰かの夢でできているんだなぁ」という思いが頭に浮かびました。そう思うと、「あのビルも、あの道も、このスマホも、私の来ている服も、なにもかもが、「だれかの夢(想い)」でできているんだ」と思ったら、涙が出てきました。だって、その誰かが、東京タワーを青色にしようと思っていたら、東京タワーは青色だったかもしれないのだから。そしたらきっとスカイツリーは赤色をしていたのかもしれませんね。

世界というのは、私よりずっと前に存在していて、変えることができないものと思っていたけれど、ぐっと私の手の中に収まるような感覚がしました。

「私も夢をみていいんだ。」

24歳にして初めて知った世界の事実に感動し、再び街を浮かれ歩きました。
体の引き締まった女性が細身のスエットにサングラスをして犬の散歩をしていたり、外国人らしき中年夫婦が散歩をしているのを横目に、私も朝の爽やかな空気を胸いっぱいに吸い込んで歩きます。大股で軽やかに、スキップなんかして歩きました。

その日から私の見ている世界は180度変わりました。

私も夢を見よう。そう思わせてくれた東京タワー。いつだってそこにいて、「あなたもできるよ」って背中を押してくれる大切な存在です。

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