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マティス展のキロク


先日、マティス展に行ってきました。
日本では20年振りの開催とのこと。
マティスに触れ合うのは今回が初めてだったので
ワクワクしながら、美術館へ。

朝の10時にも関わらず、上野駅は、カンカン照り。
日差しが目に刺さるという表現がピッタリな程で
夏の太陽はこんなにも攻撃的だっただろうか。と思うほどでした。都内は、日傘が無いとなかなかに厳しい。

美術館は薄暗く、空調が効いているので、息を吹き替えたかのような心地で見てまわれます。

マティスの芸術家としての人生は長いものでした。
作品数もとても多い。
彼の芸術家の変遷を辿るような、キュレーション。
写真撮影も可なフロアもあって、記念に何枚か撮らせてもらいました。
美術については、大学の講義でいくつか取った程度なので、素人目で感じたことを。



印象派とキュビズムとマティス

彼は長い芸術家人生の中で、いくつもの美術史における分岐点を通ってきた杞憂な芸術家でもあると思います。
後世まで語り継がれる芸術家は、そういう荒波の中で、それを吸収し、自身の作品に昇華するのが上手だなと素人目ですが、思います。

印象派とキュビズム。この間を彼は通り、フォーヴィスムと呼ばれるグループの創始者でした。野獣派とも呼ばれます。フォービズムは色彩の革命とも呼ばれるようです。彼の鮮やかな色合い。そして、線の単純化は、彼の作品の特徴でもあります。
鮮やかな赤や、青。緑。『色彩の魔術師』と言われるだけあり、虹彩に焼き付くような色合いは、それでいて、調和を持って、すんなりと入ってくる。
作品の中には、見た瞬間に分かるくらいキュビズムを意識して描かれた肖像画なんかもありました。


マグノリアのある静物
黄色と青の室内


金魚鉢のある室内(1914)

数多くの作品があるなか、私的ベスト作品は、『金魚鉢のある室内』マティス作品の代表的なモチーフの1つである窓と、そこから見える景色。部屋の中は、あらゆる青色で構成されている。窓の手前に置いてある金魚鉢には、青とは対照的なオレンジ色の金魚が1匹。
窓の外を見ると、左側がほんのり薄桃色に染められている。夜明けを思わせる柔らかな色合いとは対照的に、部屋の中は、深い。そのコントラストが、闇夜の残り香を感じさせる。
小鳥たちが囀り出す手前、と言った雰囲気を感じる作品。

こちらの作品は、残念ながら撮影不可でしたが、記憶に残るものでした。自分の琴線に触れる作品は、常に記憶に残るだけでなく、描かれたであろう場面の温度感や匂いをふと感じるような気がする。

朝の前の少しだけ、静かで、涼しいあの空気。それを感じるようなとても素敵な作品でした。


切り絵とマティス

線の単純化の為に、マティスは、彫刻も数多く手がけていました。
その代表作品でもある『背中』は、4つの連作となっています。
リアルから、シンプルになっていく背中を見ることが出来ます。これは、マティスの求める単純化をよく見ることができるなと思います。

そして、彼がたどり着いたのは、切り絵でした。
色彩の鮮やかさと、油絵、彫刻を経てたどり着いた切り絵には、彼の求めたものが詰まっている。
私個人的には、カラフルでポップな切り絵たちは、
キラキラして見えるのに、そこにある普遍的な切なさ、儚さを感じるように思います。それは、さながらピクトグラムのような人のポーズ、はたまた動きがそう見せるのかもしれません。

芸術・雑誌の表紙絵①
芸術・雑誌の表紙絵②

ヴァンス・ロザリオ大聖堂(1945-1951)

最晩年、彼が力を入れて手がけた大聖堂。
マティス自身が、「運命」と語り「生涯の傑作」と評している。
実寸大での聖母子装飾を見ることも出来ます。
ここには、彼の求め続けた芸術の全てが詰まっているんだろう。映像で、実際の大聖堂を見ることができる。青と黄色のステンドグラス。タイルに描かれた聖母子像。聖母像に燭台を見ることが出来ます。
ステンドグラスによって、蝋燭の色も変わる。色彩の魔術師が空間を手がけるとこんなにも美しくなるんだと映像だけでも感動します。

昼と夜とで全く違う表情を見せる礼拝堂をいつか見に行ってみたいです。

さいごに

数多くの作品があるなか、少しだけピックアップして感想をつらつら語りました。
お気に入りになった『金魚鉢のある室内』のポストカードとマグネットも購入。
グッズも豊富で可愛いマグカップなんかもありましたよ。


開催は8月20まで。
残りあと少しです。お盆休みに是非行ってみてください。

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