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椎葉中学校が文部科学大臣賞を受賞

令和4年度、UIキャストは椎葉村教育委員会と業務委託契約を交わし、椎葉中学校の総合の時間を通年サポートする「未来づくり学習支援事業」を実施しました。


今回の受賞では、こうした”地域との協働学習の体制”が大きく評価され、さらなるキャリア教育の充実と推進が益々求められていくと感じました。


なぜ総合の時間のサポートを委託に出したのか

「総合的な学習の時間」の「目標」や「内容」は,各教科等と異なり学習指導要領に示されておらず,各学校においては,学習指導要領に示された「総合的な学習の時間」の趣旨及びねらいを踏まえ,具体的にこれを定めて計画的に指導を行うことが求められる。しかしながら,学校において具体的な「目標」や「内容」を明確に設定せずに活動を実施し,必要な力が児童生徒に身に付いたか否かの検証・評価が十分行われていない実態や,教科との関連に十分配慮していない実態,教科の時間への転用なども指摘されているところである。このほか,児童生徒の主体性や興味・関心を重視するあまり,教員が児童生徒に対して必要かつ適切な指導を実施せず,教育的な効果が十分上がっていない取組も指摘されているなど,改善すべき課題が少なくない状況にある。

文部科学省HP:「3 「総合的な学習の時間」の一層の充実
」https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/attach/1399859.htm

文部科学省の”「総合的な学習の時間」の一層の充実”に記載があるように、各学校の指導要領を踏まえた授業となるため、各教科における先生方の専門性のように”転用可能”な技術が活用できない分野であることがわかります。

へき地の学校であることから3年間の短期間で先生は移動し、新任の先生は着任の学校がどんなことを求めていて、どんな人に頼んできたのか、椎葉村はなにを子どもたちに教えたいのか、一から学び、指導する立場にあるのです。

なかなか難しいことを求められていると思いませんか??
各科目の授業の準備と新しい生活になれること、ご自身のご家族のこと、暮らしを整えることだけでも大変(ましてや日本三大秘境)なのに、知らないことを教えろと言われるのは無理難題。

ところで「総合的な学習の時間を頑張りたい!」と一番熱量を持っているのは誰でしょうか?先生ですか?生徒ですか??
学校の中にはどこにもいないのです。生徒たちにUターンしてほしいと思っているのは「椎葉村民」です。
「未来づくり学習支援事業」は村民の願いを形にする場所なのです。


先生は異動する。だれが地域とのコネクションを維持するのか

そこで私たち地元企業が地域と学校のコネクションを維持し続けるという発想が生まれます。
椎葉村には高校がありません。中学校卒業とともに椎葉村を離れることになります。そして、”高校生では進学先の地域学習を探求活動で行うかもしれない”ということを忘れてはいけません。
椎葉についてじっくり学ぶ最後の時間。ただこなすだけの授業でよいでしょうか?先生方には”探求活動を充実させるための授業の組み立て”を行って頂き、私たちが地域の材料集めをし、より質の高い授業を行うことが最大の目的です。


それを教員の職務怠慢などと言ってはいけません。椎葉村の大人として、子どもに椎葉の課題も、あなた自身が知恵を絞り地域のためになれるんだということを体感してもらうためには、先生にゆだねるのではなく、椎葉村側の大人も努力しないといけないのではないでしょうか。

「カリキュラム構築したからあとは先生できるでしょ」。そうでしょうか?関係性を維持しながら、地域の人にどんなことを話して欲しいのかお伝えしなければいけないし、その人が何のスペシャリストなのかもわからずお願いするわけにはいきません。先生方の色も残しながら、その時にしかつくれない授業を作っていくのはとても創造的な魅力的な時間です。

「未来づくり学習支援事業」でなにをしたの?

「未来づくり学習支援事業」では、椎葉村に暮らす大人をたくさんたくさん授業に連れていきました。ここに暮らす大人は必ず、「椎葉村で暮らすことを選んだ人たち」です。
なぜ椎葉村で暮らすことを選んだのか、色んな人の人生を聞くことでキャリアの選択肢を増やしてもらうことが目的です。人生に行き詰ったときなにをしたのか、どうやって乗り越えたのか、どうやって信念を貫いたのか。子どもたちは目を輝かせて質問します。


卒業の際のメッセージで「〇〇さんのように挑戦する女性になりたいです!」と話してくれた生徒さん。子どもたちの心にどんなものがグサッと刺さるのか、わからないものですよね。

Iターン促進はわかりやすいが、Uターン促進は難しい

椎葉村は近年、地域おこし協力隊制度を活用して移住してくれる方が増えています。Iターンの促進には一定の成果を上げており、協力隊募集をしかるべき場所に届けることができれば増やすことができる、と施策の方向性が見えている状況です。
しかし、Uターンにはどうでしょうか?どこにどんな風に力を入れれば増えるのでしょうか?きっとIよりUの方が増えるといいなとみんな感じているはずですが、まだはっきりとはわかっていないのではないでしょうか。

私は思うんです。
「いつ椎葉に帰りたいって思ってくれるかはわかない。でも、そのいつかのタイミングでちゃんと椎葉に帰るという選択肢が頭をよぎらなければUターンしてくれない」と。

さらに、Iターン希望者は能動的に椎葉を調べてくれます。だけど、Uターン候補者は能動的に調べたりしません。
じゃぁそのいつかにアプローチするには?私たちにできることは…?

「未来づくり学習支援事業」は中学生時代のキラキラとした思いでとしてその役割を果たせると思っています。こんなにスペシャルな人たちがたくさんいる椎葉村。地域の人たちとの交流は強烈な思い出を作ってくれます。その印象的な思い出を作ってくれる人と繋がりを作ってきたのは間違いなく私たちです。

私はこの事業が私の能力を最大限に活用し、椎葉村の役に立てる分野だと思っています。コーディネーターとは、誰でもできるわけではありません。人と人を繋ぐためには日常的な繋がりと関係性が必要です。お願いをしてうんと言って頂ける関係性は短時間で構築できるものでもありません。
誇りをもってこの仕事に取り組んできました。

今回の受賞を受けて、椎葉村のキャリア教育がますます発展することを期待しています。

合同会社UIキャスト 代表社員 天野朋美


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