私的ベスト・ミュージック10枚(2020年12月編) by 高橋アフィ

年間ベストに一番入り辛い月こと12月のまとめです。

BASS + FUNK & SOUL / DJ Earl

フットワークの先駆者の一人DJ Earlの新作。速い=かっこ良いだし、低音=かっこ良いです。各種サンプリングを使用しているんですが、ここまで速く執拗に使われるときっちりと異形のものとなっていて面白い。更にそこをぶち抜くファンクやソウルの感覚がアブストラクトなのにメロウという不思議空間作ってます。
「高速過ぎてハーフテンポでも取れる」ということだと思っていたんですが、しっかり低音効いているからこそ性急さと重さが共存できているですね。

Welcome to the Hills / Yussef Dayes Trio

Yussef DayesとRocco Palladinoという最強リズム隊(Tom MischとYussef Dayesのアルバムでも活躍してましたね)に、キーボーディストCharlie Staceyが加わったトリオ編成のライブ音源。
ドラムンベースからブレイクビーツ、トリップホップやブロークンハウスなどなど、つまり「UKクラブミュージックの様々なリズム」であり「≠ヒップホップ的なリズム(つまり≠US現行ジャズ)」が、あまり生々しいライブ演奏となって炸裂しています。USともオーストラリアとも違う、ライブミュージックとなったクラブカルチャーのグルーヴがかっこ良いです(とはいえ最近のグラスパーだと、むしろちょっと近い気もしますが)。
作曲的な方面だと結構荒々しいんですが、カオス一歩手前までいっても余裕で押し切れる勢いと、抽象度が高いからこそ暴れまくる(突如キメぶち込んだりする)リズム隊が最高です。このトリオだと支えキャラなCharlie Staceyもエフェクト含めて雰囲気の作り方が上手い!Azymuth的なトリオだからこそ可能なマジックを感じました。

"Ricochet / Maloja Pass" / Koji Ono

まるで往年のJフュージョンサウンド!洗練させたというよりも、いなたさをそのままかっこ良さに繋げたような作りが素晴らしかったです。展開の多さが妙に癖になりますね。アナログで突如見つけたら喜び狂うだろう埋もれた名作感ある、まさかの現行作。

Parallel / Four Tet

Four Tetの年末に突如出たアルバムのうちの一つ(1995年から1997年の制作トラックをまとめた『871』も同時期にリリース)。2020年3月にも『Sixteen Oceans』出していたので、年に3枚フルアルバムリリースしているんですね…すごい。
ある意味明確にダンストラックとアンビエントが分離し楽曲単体の強度が高かった『Sixteen Oceans』に比べて、ドローンからビートが立ち上がる/消える瞬間や何気ない音がリズムになっていく様が美しいアルバムで、フォークトロニカのチルな気持ち良さとダンスミュージックの快楽性を両立させたFour Tetの良さが出まくってました。1曲目から26分超えの70分の作品という長さありますが、意外なほどさらりと聞けるので、2021年何度も聴くアルバムになりそうです。

i can't go outside / Channel Tres

コンプトン出身のDJ、プロデューサー、ラッパーのChannel Tresの新作EP。今まではフロア意識、低音でイケイケに踊る作風(現代版ヒップハウスというかアンダーグラウンドにチャラい(?)というか)だったのですが、タイトルからもわかるようにこの環境下で作られた内省的な作品です。
ダンスミュージックの肉体性の快楽が後退し、その分ベッドルーム的な浮遊感サイケ感がG-FUNK/ハウスマナーのまま導入される独自路線となっており、どういう時に聴けばいいかわからないんですが、それこそが今であるとも言えます。

Chapters of Zdenka / salami rose joe louis

Brainfeederからリリースされた前作『Zdenka2080』も話題だったsalami rose joe louisの新譜。内容としては前作と同時期に作られたもので、外向きでポジティブな『Zdenka 2080』に対し内省的で悲しげな側面とのことなんですが、そこに関してはわかるようなわからないような…?
ピッチが揺れるシンセ(多分テープエフェクト)の不穏で幻想的な音と、それに対してベースやリズムのタイトで細かいフレーズの正常さが面白く、ローファイだけど天井高いサウンドが素晴らしかったです。宅録系が増えた2020年の中で一聴してわかる独自性を感じました。

III / GODTET

オーストラリアのギタリスト/マルチ奏者Godriguezが中心となって結成されたGODTETの3rdアルバム。生々しい現代ジャズ的な演奏とエフェクト/サンプリングの使い方が面白く、ビートミュージックのカオスな勢いをそのままバンド化したようなサウンドが面白かったです。過去作に比べてより抽象度が増した気もするんですが、その結果音の質感の面白さが際立ち、むしろポップネスを獲得したように思います。演奏最前線という感じ。

Let's Go Out / Bella Boo

前作『Once Upon A Passion』も滅茶苦茶良かったスウェーデンのプロデューサーBella Booの新作EP。『Let's Go Out』というタイトルを打ち出せる希望に満ちた音が素晴らしかったです。クラブシーンの魅力を再確認させるエモーショナルなエレクトロミュージック。

Bird Box / Geju & Acid Pauli

モスクワ拠点のデュオGejuとドイツの奇才Acid PauliのコラボEP。ミニマルずぶずぶ系。基本的には硬派なエレクトロなんですが、南米スローテクノみがかっこ良く、重心低く遅いテンポぐらぐら踊らせていく感じが最高です。ストイックさが奇祭感あってかっこ良いです。

Love and Hate in a Different Time / Gabriels

LA拠点のグループ。あえて言うならソウルやR&Bをベースにしたエクスペリメンタル・ミュージックなんですが、過激な音を使っていると言うよりも映像的な音の質感の捉え方が面白く、ソウルの源泉にたどり着いたらノイズまみれだったみたいな感じでしょうか…?ボーカルの尋常じゃない巧さとリズム系のローファイさ、ただしストリングはゴージャスという変なバランスがかっこ良い!


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