私的ベスト・ミュージック10枚(2020年8月編) by 高橋アフィ

106 / Jacob Mann

自身のユニットであるMax OxやJacob Mann Big Band、さらにKNOWERやLouis Coleのバンドセットでも活躍するヘンテコキーボディストの新作。Max Ox(トリオ編成)からJacob Mann Big Band(ビッグバンド編成)と続いてきたので、ここに来てがっつりジャズやるのでは、いやでもバンド編成でバキッとした作品作るかも、などなど勝手に想像していたのですが、そういう期待はしっかり裏切り、基本キーボード多重録音(ドラム系の音もキーボっぽい)の宅録アルバムになっています。
Rolandの名機Juno 106を使い、ローファイというかvaporな世界観が最高です。とは言ってもvaporwaveフォロワー感はなく、超タイトな演奏と独特の音色のセンスによる箱庭感がvaporと謎の共振をしている、という説明の方が正しく、(多分)一人の多重録音なのにソロ回しを行う絶妙さとかMVの出来とか天然の強さでしょう。
ケレン味はあるけど全体的にはむしろ超ポップ、メロディも演奏も気持ち良い(けどやっぱりおかしい)バランスが素晴らしく、ちゃんと良いしちゃんど駄目な最高のアルバムです。

SUNNY DAYS BLUE / SWARVY

Mndsgnバンドにも参加している、フィラデルフィア出身でベーシスト/マルチ奏者、プロデューサー、エンジニアの待望の新作。Kamaal Williamsのレーベル〈Black Focus〉からリリースです。
今までの作品はビートテープのどろっとしたファンク/ソウルの印象が強かったのですが、このアルバムはスムースで甘いチルアウトな歌もの。とはいえ音色の気持ち良さとちょっとこもって太い感じは、さすがビートテープ沢山作っていたなという音で、ビートメイカーが歌モノをやるならこれ以上無い出来だと思います。リズムは激しく無いんですが、なんだかんだ低音やドラムの音はしっかり強く(けどチルさを保つ柔らかさ)、技が効いてます。

Help / Duval Timothy

サウスロンドン出身のマルチ・アーティスト。ジャズやビートミュージックに影響受けてはいると思うし、どことなくヒップホップ感もあるですが(Pharrell Williamsのインタヴューから引用とかあるし)、その上でエレクトロニカやポストロック的な世界観が素晴らしかったです。Melanie Fayeなどが参加。
この音の混じりけの無い強さ(と同時にタフさ)、メッセージ性と音楽が同じ方向を向いているゆえかなとも思いました。アート作品ですね。

666 Central Ave. / They Hate Change

笑っちゃうくらいカッコ良い!godmodeからリリースされたラップデュオのEP。ラップ作でありクラブでゴリゴリ聴きたいダンスミュージックで、トラックもラップも最強でした。ひたすらクールなドラムンの取り入れ方が滅茶苦茶良い…。アゲアゲだけれど重心ずっと低いんですよ!いやー、たまらない!
単曲としても強いけれど、まとめて聞いた方がより楽しめるというのも最高。

Axiom / Christian Scott aTunde Adjuah

営業停止直前、今年3月にNYのBluenoteで行われたChristian Scott aTunde Adjuahのライブ音源。状況が状況なだけに独特の緊張感と開放感がある素晴らしい演奏なんですが、何よりも音が信じられないくらい良い!以前ライブを観に行った時も思ったんですが、ドラムが生楽器と電子音を両方使う独特な編成なんですよ。しかも電子音はトラップ的な超低音系バスドラとパキパキのスネア&ハイハット。電子音強すぎると生楽器に行った時にしょぼくなるし、かと行ってがっつり鳴らさないと面白く無い、というこの難しいところを見事実現する驚異のライブミックス&演奏!
最前線のライブの音の素晴らしさと演奏の凄まじさが楽しめるライブ版です。選曲もベスト的な内容で超おすすめ。
そしてパーカッションとドラムのアンサンブルが凄過ぎますね…。リズムの新しい次元を観ているような気持ちになります。

SOURCE / Nubya Garcia

ロンドン拠点のサックス奏者のアルバム。UKジャズではあるんですが、UKエレクトロやクラブカルチャーの影響が直接出ていたUKジャズの他作品と大きく違い、演奏はむしろスタンダード(な各音楽≠4ビート)、トリッキーな要素はあまり目立たないアルバムで、じゃあなんなのかと言われると「ルーツに根ざすという成熟」なんだと思っています。USのジャズがヒップホップやソウルと合流したのと同じような形で、クンビアやアフロビート、レゲエ、グライム、クラブジャズとNubya Garciaは合流していっているのでは…?彼女が吹けばジャズになるというサックスの音色の素晴らしさの上で、音楽的な成熟と革新が詰まったアルバムでした。

Terminus EP / Forest Drive West

すべて7分を超える曲なんですが、スタートからフルスロットル!ゴリゴリでなジャングル/ドラムンです。音の破壊力とスピード!最高!

The Call Within / Tigran Hamasyan

みんな大好きピアニストTigran Hamasyanの最新作。メロディの美しさと容赦ないキメキメな演奏を同時並行で行う凄まじ曲の数々。Arthur Hnatekのドラムも複雑な曲に対してぴったりなメカニカルな硬さで、Tigran Hamasyanの世界観がそのままバンド編成になり広がっていたような阿吽の呼吸なアンサンブルが良かったです。

Holy Wind / DADRAS

A$AP RockyやShow Me the Bodyなどの多様なアーティストとコラボしているクイーンズを拠点とするプロデューサーとのこと。曲調様々、前半明るく後半暗いアルバムで、聴く度に印象が異なるですが、基本軸は荒々しいハウス/ダンスホールという感じでかっこよかったです。ダンスミュージックといいつつ1曲1曲が短く、ビートと音響を楽しむ作品という感じ。

Lightlike / DEANTONI PARKS, CHRIS HUNT, JOHN TREFRY

一人でチョップしまくりドラムを叩くTechnoselfことDeantoni Parksと、CHRIS HUNT、JOHN TREFRYのコラボEP。CHRIS HUNTとJOHN TREFRYがあまりわかっていないのですが、映画などの映像関係の人物っぽい?
Technoselfでは片手キーボ、片手(と両足)ドラムということで、とはいえ凄まじいプレイだったのですが、こちらは久々のドラムのみプレイ!ドラマーとしてはMeshell NdegeocelloからThe Marz Volta、Flying Lotus(「Never Catch Me」)などなど各所で大活躍しているプレイヤーで、なおかつTechnoself以降なバキバキのエレクトロやトラップの影響後の本気ドラムなので、もう全ドラマー必聴です。
特に高いピッチのスネアの使い方が素晴らしく、元々バグったリズムマシンのようなプレイが特徴ではあったのですが、そこにチョップ/グリッチの感覚が入ったような演奏が最高!

最後に近況!

①書きました

②TAMTAMがSpotifyのcanvasに対応しました。


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