私的ベスト・ミュージック10枚(2022年1月編) by 高橋アフィ

Life Of The Party (Skyfiles 002) / Adrian Knight

 スウェーデン出身のコンポーザー/マルチ楽器奏者Adrian Knight。AOR的な作品から複数人によるプロジェクトまで色々あるのですが、今回は(ほぼ)一人によるアンビエント作。
 ピアノを中心としたポスト・クラシック、あるいはシンセ中心のニューエイジのように思えて、微妙にそこに収まらない感じが良いです。なんというか、チルアウトっぽく聞こえつつもちょっと不穏。荘厳になりそうな瞬間に宅録的スケール感を見せてくるというか。ベタな作品にさせないのは、vaporwave的なセンスなのかもしれません。

FLIP & DRAW / 7SEEDS & GREENASSASSINDOLLAR

 舐逹麻の「LifeStash」のprod.でも知られる7SEEDSと、「FLOATIN'」のprod.のGREENASSASSINDOLLAR、二人のビートメイカーによるAL。舐逹麻とGREENASSASSINDOLLARを繋げたのが7SEEDSの模様(GREENASSASSINDOLLARのインタビューより)。
 チルやメランコリックなだけではなく、ちゃんとハードにも鳴るビートテープで良かったです。感傷的な上物ありつつ、リズムがしっかり中心にある良さというか。

I've Never Seen The Northern Lights / The Breathing Effect

 LA拠点の「Psych-Prog-Yacht Rock Jazz Fusion duo」The Breathing Effectの新作。鍵盤でLionmilkが1曲参加しています。今まではビートが強めだったんですが、今回は全体的にメディテーション感ある生音系サイケ。
 アンビエント方面に行きつつ、プレイヤーである良さを活かした作りが良かったです。ちゃんとサイケやプログレの延長して、現行のアンビエントを捉え直しているように思えます。

Fragments / Bonobo

 Bonobo5年振りの新作。フロアに向けたビート強めなダンスチューンとバラードやアンビエントが自然に混ざるこの感じこそ、現代のクラブミュージックだと思います。リズムの有無という振り幅を鳴りの気持ち良さでまとめていて、音の快楽を追求したような作品性が素晴らしかったです。
 Jamila Woodsをfeat.した「Tides」、歌を聴かせるしっかりとしたバラード曲でありながら、R&B/ヒップホップ的なプロダクションになっていないという意味で面白いですね。BPMは遅いけれど、むしろ隙間が目立つことでリズムの硬質さが際立つこの感じは、ブレイクビーツ的な文脈とも少し違う、エレクトロなバラードとして良かったです。
 など言いつつ、やはり「Age Of Age Of Phase」が個人的ハイライト。

Don't Follow Me Because I'm Lost Too​!​! / Vegyn

 ロンドンのプロデューサーVegynによる75曲入り約2時間半のミックステープ。個人的にIDM的な印象でしたが、全体通して聞くとメロディ中心でその時々でいろいろなビートを使っているように思います。そしてほのかにローファイ。
 メランコリックでベッドルーム的な没入感ある音像なんですが、断片のような曲ゆえに世界観に浸らせきらない感じが良かったです。エモくさせ過ぎないバランス感というか。

Laponia III / Daniel Ögren

 スウェーデンのジャズ・ギタリストDaniel Ögrenの新作。どこで知ったんだろうと思ったら、サイケ・バンドDina ögonの一員なんですね。
 ギターは確かにジャズですが、全体としてはバレアリックな作風で、生音系のスローテクノに北欧が出会ったみたいな感じです。ギターで弾くメロディが素晴らしく、壮大な空間に溶けていくようなニュアンスが良かったです。
 そしてこの透明感に対して、ひたむきに明るい曲調というのも面白かったです。シリアスなだけにならないのはサイケな感覚から来ているように思っています。

Suspenso / Manuel Linhares

 ポルトガルのシンガーManuel Linharesの新作。今まではジャズシンガー然とした作品が多かったんですが、今回は室内楽的とも言えるアンサンブルが印象的なアルバム。プロデュースはAntonio Loureiroで、ミナスのアーティストやサックス奏者David Binney、またポルトガルのラージアンサンブルCoreto Porta Jazzが参加しています。
 ラージアンサンブル×ボーカル作というよりも、Manuel Linharesの歌込みのでラージアンサンブルという感じで、わかりやすく言うとずっと歌っているんですよね。一歩ずれると「既存の音楽のリッチなアレンジ」という範疇になってしまうこともある大所帯編成が、ここでは見事に調和しており、独特な浮遊感が出ていて良かったです。

The Space Between / Alexander Flood

 オーストラリアのドラマーAlexander Floodの2nd AL。1stからRopeadope Records傘下(?)のStretch Musicからリリースされており、現在Christian Scott aTunde Adjuah以外の唯一のアーティストっぽい(Stretch MusicからSamora Pinderhughesが4月にALリリースするようです)。Christian Scott aTunde Adjuahなどが参加しています。
 ビート強め→現代ジャズみたいな作風なんですが、US的な腕力感やUK的な盛り上げてやる意志というよりは、やや硬質な/ライブ感が若干薄いアレンジがオーストラリアっぽいのかも?Hiatus Kaiyoteや30/70のシーンとはまた違うジャズ・シーンのアーティストという気がします。
 Christian Scott aTunde Adjuah参加曲の説得力が凄くて良かったです。

La Batterie / Lion's Drums

 フランスのプロデューサーHarold BoueによるプロジェクトLion's Drumsのエディット/リミックスAL。Roberto MusciやVasiliskなどのアーティストの曲をエディットした曲などが収録されています。
 こういう手法だからであろう、整理されていない荒々しい音がカッコよく、DJのライブ感というか、よくわからない音楽で踊らされるカッコ良さがありました。

Butterfly 3001 / King Gizzard & The Lizard Wizard

 オーストラリアの大所帯サイケバンドKing Gizzard & The Lizard Wizard、モジュラー・シンセで作ったループを基に発展させていき作られたAL『BUTTERFLY 3000』のリミックス作。
 DJ ShadowとThe Scientistのリミックスがひたすら素晴らしかったです。


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