私的ベスト・ミュージック10枚(2021年1月編) by 高橋アフィ
Sound Ancestors / Madlib
「MadlibとFourtetが共作!?」と思ったら「Music by Madlib. Edited, arranged and mastered by Kieran Hebden(Four Tet)」と言うことで、意外な形でコラボしました。ただ恐るべきは、むしろ完璧に二人の持ち味が出ている所。
Four Tetの音への感覚の鋭さが天才的で、曲の良さは確実にMadlibそのものなんですが、そこにFour Tet的クリアさと鳴りが追加された、ハイファイなサンプリング感が素晴らしかったです。ローファイさがヒップホップの「サンプリングというかMadlibの持ち味だと思っていたので、ここまで自然にアップデートされた音楽が年明け早々出てきてテンパりました。
そしてMadlibのビートメイカーセンスが爆発しているのも良かったです。フォークからレゲエからブラジルなどなど、これでもかという雑多なサンプリングをまとめ上げるかっこ良さ!大好きです。
The Jackpot EP / Kode9
Kode9の超久々、6年振りのリリース曲。昔は妙に殺伐と聴こえてそこまでだったんですが、今聴くと乾いた音がかっこ良く、力強さと箱を鳴らそうとするを意思を感じるダンスミュージックで好きに。ハードさを高評価してしまうのはご時世的な気もしていますが、まぁそういうものでしょう。
フットワーク感ある"Rona City Blues"が好みです。
Ejokawulida / Nilotika Cultural Ensemble
Nyege Nyege Tapesからリリースされたパーカッションアンサンブル。曲としては打楽器のみでトラディショナルとも言えるんですが(曲も現地の伝統曲をベースにしているらしい)、これをクラブミュージックとして扱う、そうなるとこのミニマルさがモダンでかっこ良い、というまとめ方をしたNyege Nyege Tapesがあっぱれです。
とはいえしっかりフロア対応な感じなので、Nilotika Cultural Ensembleもそういう志向があるんでしょうか?一歩間違えると安易な力技、悪い意味での祭り感になってしまいそうなんですが、色味を抑えたハードでストイックな演奏がかっこ良いです。
ちなみに配信だと"Nilotika"になってます。
Reconstructions / Chee Shimizu + miku-mari
「Chee Shimizu著ミュージック・ガイド「OBSCURE SOUND」のディスクユニオン・オリジナル特典音源が12”化」ということで配信も開始されました。DJのChee Shimizuと即興演奏家のmiku-mariによるハイブリッド・ライヴ・ユニット。
即興演奏とアンビエントの中間という感じで、音の実験を行う覚醒感と瞑想/チルアウト感が同時に起こってます。Carlos Ninoらとも共振しそうな、プレイヤー/ライブ目線から更新していくアンビエントとも言えて、気持ち良さだけでは回収されない強さを感じました。またライブユニットではあるものの、その場で演奏される面白さに加えてDJの「時空を超えて音を使える良さ」が出ているのも面白かったです。突如エディット感が即興演奏に登場するというか。
Kabul Fire Vol. 2 / Farhot
アフガニスタン出身、ドイツ拠点のプロデューサー Farhotの2013年以来の2ndアルバム。エモめなビート作ということで、あまりはまらなさそうな感じなんですが、やたら好きになりました。アフガニスタンゆえなのかメロディがどれも良く、そこが理由かも?
BEATS / Dell Lillinger Westergaard
ドラムはChristian Lillinger。ヴィブラフォン、ベース、ドラムのトリオ編成。あえていうなら、(多分)ヒップホップ的なビートをモチーフにしたミニマルな反復のフリージャズです。踊れるはずのリズムが解体されていく様が面白く、結果エクスペリメンタルなヒップホップ→ビートミュージック最前線に聴こえてしまう瞬間すらあります。
そもそもの距離感からして独特で、音色的にはまったく寄せてないんですよね。超低音はまったく重視していないというか。アコースティックのまろやかな音色だから成立する尖りまくった反復がかっこ良いです。
A Piper For Janet / Cosmo Pyke
歌も演奏も瑞々しくて素晴らしい!「普通に良い曲」からメロウな趣味性とパンキッシュな演奏が加わり、今聴くべき名曲になっていると思います。EP全部いい曲でした。
Overstand / Apifera
Stones Throwからリリースされた、イスラエル・ジャズ/ビートシーンの、あるいはRaw Tapesのオールスターバンドとも言うべきユニット。Buttering TrioのRejoicerやピアニストのNitai Hershkovitsが参加したカルテットです。
ビートミュージック的でありながら不思議な浮遊感があるアンサンブルが素晴らしく、圧で押し切らない低域の使い方はRaw Tapes印な気がしています。この軽やかさがそのままサイケ感にも繋がっていて、リズムはタイトなんだけどチルアウト一直線な雰囲気が最高です!
Outside World 2 / Henry Solomon and Logan Kane
サックス奏者Henry SolomonとベーシストLogan Kaneによるオルタナ(?)ジャズ。Louis Coleも3曲参加しています。
LA感というんでしょうか、高密度高速のエクスペリメンタル・ジャズ・ファンクかつ妙に人懐っこいメロが印象的で、ずっとおもちゃ箱の中身が溢れ出ている感じです。タイトな演奏が気持ち良いし、アルバム通すと若干頭と耳が疲れます。しかしそこが癖になってしまうんですよね…。
Cast Remixes Part I / Heathered Pearls
共に原曲の倍以上の長さになっているRemix集。3分程度の原曲を17分以上にした"Heathered Pearls - Salvaged Copper (feat Terrence Dixon) [Luke Slater Remix]"が凄まじかったです。アンビエントから徐々に音とビートが足され…をこの尺でやれる忍耐力!変化も自然で、同じ雰囲気のまま気がつけば激盛り上がりしています。
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