私的ベスト・ミュージック10枚(2021年7月編) by 高橋アフィ

Modest (​(​( )​)​) Odyssey / Pacific Yew

 ニューウェーブヒップホップ(らしい)Pacific Yewの新作。ビートテープの質感で生音(というか演奏?)主体の実験的エレクトロやっている感じで、リズムが鳴りつつもダンスミュージックでまとめる気がなさそうな雰囲気が最高です。様々な音が一つになる/ほどける瞬間が素晴らしいですね!
 音を配置して作っていそうに聞こえるのに、メロというかリード的役割のシンセなどは、ほどよいヨレ加減含めてがっつりプレイヤー感があって面白かったです。密室的な音楽性になりそうな所を切り開くプレイヤビリティというか。

Duets | Golden Gate Bridge / Nate Mercereau

 シンセギターを大体的に使用したアルバム『Joy Techniques』が話題となったギタリストの新作。まさかのGolden Gate Bridgeとのデュオ作です。
 Golden Gate Bridgeが「橋の改修により、強風の中で振動して「歌う」ようになり、湾全体に大きな音が響き渡り、事実上、世界最大の管楽器になった」とのことで、そのドローンに合わせてギターを演奏しています。
 はじめ説明見ないで聴いていて、普通に良いアンビエントだと思っていたというくらい、橋の音も風などの環境音も音楽的で、もちろんそういう風に聴こえるようなギターの入り方が素晴らしい作品でした。

Music for Saxofone and Bass Guitar More Songs / Sam Gendel & Sam Wilkes

 Pino Palladinoの新作の延長線上にあるようにも思えるSam GendelとSam Wilkesの新作です。とはいえこちらではSam GendelのキャラクターとSam Wilkesのセンスが遺憾無く発揮されており、ローファイさとそこから浮かび上がるメロディが素晴らしかったです。
 リズムをしっかり入れつつ、良い意味でそこが主体ではない、むしろ印象としてはアンビエントに近くさえ聴こえる、この感じはなんでしょうかね。Sam Wilkesはベーシストとしてはファンク系プレイヤーという感じなんですが、スイッチを切り替えたというよりも同じ目線でこの作品も作れているような気がしており、いつでもチルアウトであるしダンサブルでもありそうな感覚が面白さなのかも?
 音色一つ一つがどれも素晴らしいですね。意味しかないローファイです。

Yellow / Emma-Jean Thackray

しっかり書いたのでこちらの記事を!

https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/29258

Yasuragi Land / 食品まつり a.k.a foodman

 音が信じられないくらい新鮮でビビッドに鳴っていて素晴らしかったです。ハイハットの音とかこんなカッコ良いんだ!とどの音色も輝いている感じで本当に凄い。カオスになりそうな所が、毎回ギリギリで「楽しい」「かわいい」「笑顔になる」みたいな方向になっていて、そのバランス感というか切り口こそ最大の良さかもしれないと思いました。

Expansions / Bacao Rhythm and Steel Band

 僕がスティールパン買った理由バンドの新作です。今までのスティールパンの印象を変えるようなやや暗め&ハードめな選曲で、そこをスティールパンが程よく明るくして良いバランスに。
 ドラムやベースなどの音もカッコよく、さすがBig Crownです。モダンだし、レコードで聴いたらレアグルーヴにも聴こえる素晴らしい作品でした。

Locked Grooves / Julian Sartorius

 Colin Vallon Trioなどで活躍するドラマーJulian Sartoriusによる1分感のドラムブレイク×112個。
 聴いたことないようなプリペアド/エフェクト感のある音色かつ、ドラマーが演奏しているっぽいのが絶妙で、ドラマーが作った良さがしっかりありました。
 音色がどれも気持ち良いので、小音量で流してアンビエント的に聞くのもありかと思います。

Vientre / Munir Hossn

 ベーシストMunir Hossnのソロ作。溢れかえるリズムが素晴らしいです。リズムの派手さとしてビートミュージックとも近いんですが、ヒップホップの箇所が(多分)ラテンになっており、複雑なキメを当たり前のように決めていくジェットコースター感がよかったです。
 ラテン系のリズムですが、メロディはもうちょっと現代ジャズ寄りというか浮遊感あって、こってりしたリズムに爽やかな旋律というところも素晴らしかったですね。

PSA / Peyton

 Milky Wayvだったんですね、シンガーのPeytonのStones Throwからの新作。
 (あえていくなら)トラップ以降なエレクトロ感なんですが、重心が浮いているというか、ベッドルームで聴きたい雰囲気になっていると思います。ドリーミーな作風とエレクトなビートの強さが全くぶつかっていないのが良かったです。歌はしっかりR&Bなところも好感。

Deem's Tape / Deem Spencer

 ジャマイカ出身ラッパーdeem spencerの新作。前作からさらに宅録感に突っ切ったローファイトラップR&Bという感じで良かったです。
 声の距離感の親密さはもちろん、エレクトロな音色もちゃんとボソボソで、良い意味でデモテープ聴いている感じというか、曲のスケール感が終始完璧なバランスで素晴らしい。

これ以外にMasokの新作やButcher BrownのFONVILLEの新作などあったんですが…。豊作な7月でした。


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