私的ベスト・ミュージック10枚(2021年6月編) by 高橋アフィ

Septet / John Carroll Kirby

 アンビエントをニューエイジの妖しさから再考したような前作『My Garden』が素晴らしく、今回もそのままアンビエント路線で進むと思いきや、まさかのビートが強いアルバムに!ドラムにDeantoni Parksが参加してます。
 さいきんだとチルい要素が取り上げられることが多いニューエイジですが、確かにビートが入っているものも多く、全体のイメージはスピリチュアルだけれど硬めのリズムが面白い曲って確かにあるんですよね(Laraajiの『 VISION SONGS VOL. 1』とか)。そういう謎要素をカッコ良いものとして取り上げた(であろう)音楽性が素晴らしいです。
 しかしそれをそのままではなく、ちょうど良い塩梅でモダンにするセンスがJohn Carroll Kirbyの天才的なところで、メロの良さもそうですが、低音の強さや割れ目の音、ちょっとしたリバーブの抑え加減などが今聴きたいバランスで最高!適当に聴くのもよし、しっかり聴くのもよしの良いアルバムでした。

feels like we're getting older doesn't it / feeo

 半端なく良いです。UKのシンガーによるエクスペリメンタル・ソウル。UKエレクトロとR&Bの新たな融合の仕方だと思え、ヒップホップやジャズの要素が強かった今までとはまた違った、エレクトロニカやビートミュージックの影響を受けたであろうトラックとR&Bの歌が不思議と融合しています。ポストラブステップの別の形というか?
 実験的な音使いが作品の浮遊感にそのまま繋がっているのが気持ち良く、尖っているけれどむしろそこ含めてポップで魅力的なアルバムで素晴らしかったです。全力でおすすめ。

Mood Valiant / Hiatus Kaiyote

 期待値が滅茶苦茶高い中、それを余裕で超えてきた凄さです。曲、演奏、音作り全てカッコよく(これ読んでください)、本当に圧巻。
 ただアルバムとして改めて考えると結構変なアルバムで、名曲盛りだくさんというよりは、今回も実験的な曲が多数。実際わかりやすくポップなののはリードの3曲という感じで、そうなると取っつきづらい印象になりそうなんですが、なんか聴けちゃうHiatus Kaiyoteマジック。
 これは、エッジーな演奏自体の魅力の捉え方がうまいのかなと思ってます。尖っていても演奏としては凄みのあるカッコ良いものとして聴けるというか、ボーカル中心だけではないアンサンブルの振り幅の広さが強いというか。それでいてリードはちゃんと強いというからそりゃあ最強なんですが。

Rare Pleasure / Mndsgn

 Mndsgn約5年振りの新譜!最近のStones Throw総まとめのようなチル&サイケ&ビート&プレイヤビリティな作品で、特に演奏している良さの取り入れ方がよかったです。Swarvyのファンク感ありつつも結果チルに持っていけるベースが素晴らしい!
 変拍子の使い方が面白く、アクセントの強さを不明瞭にするためというか、浮遊感のためという感じで、(あえていうなら)ぐわんぐわんした酩酊感のリズムとして(も)変拍子あるんだなと思いました。

Icons / Eli Keszler

 ニューヨーク拠点のパーカッショニスト/作曲家/サウンド・アーティスト。サスティンの短い打楽器はレイヤーを重ねていくことがなかなか難しく、どうしてもリズムを強調せざるを得ないんですが、そこをドラムトリガーの使用と、と思ったんですが、むしろリズミカルな音を鳴らしながらリズムを強く出さない術を見つけたのかなと思いました。
 と書きつつも、ドラマーのアルバムと思って聴くよりも音響作としてきっと良く、しかしなかなか先入観が消えない日々です。シンセの音色とかもっと考えていきたいんすけどね…。

BLACK METAL 2 / Dean Blunt

 ずっとしっくりこなかったDean Bluntにこのタイミングで激ハマりしました。こだわってそうで、雑に作ってある断片ぶつ切りのかっこよさが素晴らしく、ということはやっぱりこだわっている…?と堂々巡りしてます。
 偶然自分以外誰も見ていないライブ配信に入ってしまったような、親しみとレア感、そしてプライベートそのまま見てしまった気まずさのあい混ぜみたいな雰囲気が良かったです。

Adversary / Mercedes Cambridge

 という流れでこちらにもハマりました。Shocking PinksのNick Harteによる新プロジェクトMercedes Cambridge。だらだら続くホラー感な不穏さが辛く楽しいです。
 映画音楽的なエモーショナルさ、感情を色付けるはずの音楽、無感情に並べるいびつさが良かったです。ブラックメタル要素という意味では、こちらはしっかりあります(低音ギター歪みもちゃんと)。

Jade 玉观音 / Pan Daijing

 ベルリン拠点の中国人アーティスト。歪みまくったテクノ/インダストリアルからエクスペリメンタルへ進んだという今までのPan Daijingの音楽性の変化に納得いく、硬質で無機質なエレクトロ。そして情念的にも思える、けれども乾いた歌。
 激しくはあるんですが孤独な印象が強く、轟音でもスカスカに聞こえるであろう、突き放した音が良かったです。快楽性をストイックに拒否しているというか?

Banned / Lightman Jarvis Ecstatic Band

 Yves Jarvisとトロント出身の双子姉妹バンド、TasseomancyのRomy Lightmanによるバンドのデビュー作。サイケ一直線の音楽性が素晴らしい!
 リズムの程よいへっぽこ具合に、無茶なエフェクト、たまに入るとりとめの無い(かつ雰囲気しっかり気持ち良い)即興、しかし歌やギターはちゃんと良い、まさにサイケ奇盤という感じなんですが、そこを狙っているか正直わかりません。バンド組み立てのフレッシュな勢いとデロデロのサイケ感の混ざり方が良かったです。

Dharmaland / Ìxtahuele

 狙っているかわからないパート2。スウェーデンのエキゾチカバンド。今あえてやる、なのか、普通にLes Baxter好きなのか掴みかねているんですが、とりあえず今聴くと楽しい音で良いです。重心低い音が入っていない軽さが、ヒップホップ流れでライブラリー系行った人々やクラブ流れでモンド行った人々とは異なる、がっつりエキゾチカで良さに。
 演奏もソフトシンセなどは使用せず、しっかり生演奏でヴィブラフォンなど使っているようで、そういう厚みなのか妖しい雰囲気がしっかり出ています。
 ただここまで狙った音は普通にやると出来なさそうで(楽器的にもアレンジ的にもつるつるした音にされがちな気がする)、どうやっているのかと思ったらドラマーがエンジニアとしても参加していますね(打楽器の宅録のみの可能性もありますが)。とはいえ依然謎が多いバンドです。

TAMTAMライブあります!@コットンクラブ!

来れる方は是非!久々の大きめ編成でのライブ&ゲストあり!

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