私的ベスト・ミュージック10枚(2020年9月編) by 高橋アフィ

古風 / 冥丁

日本のエレクトロ〜アンビエントのアーティストの3rd。「LOST JAPANESE MOOD」の3部作の最終章とのことです。前2作『怪談』『小町』も「日本性」は勿論あったのですが、今回はより具体的(感情的?)かつ現代に繋がる印象で、ざっくりと「エモい」(あるいは「コテコテ」「泣ける」)とも言えてしまうような「あの状態」に対して真摯に向き合ったように思います。音としてはポップになったものの前2作で見せた批評的な質感はしっかり残っていて、「(既に)失われている」とするからこそ出来たであろう、どうしょうもない距離感がクールで最高でした。
「花魁 I」の盛り上がりそうなところでギリギリドラムが入りきらない感覚、本当に素晴らしいと思います。「日本」のなんとも言えない所含めてアートに持っていった(そしてメランコリーでも肯定でもなく、しっかり見つめる)感じで圧巻でした。

#KingButch / Butcher Brown

はい、最高!「曲ごとに演奏はもちろんミックスまで違う」というこだわりと「どの曲もButcher Brownらしさが出ていて、何よりもライブバンドである」ということを両立しているところが凄さだと思います。器用貧乏を余裕で乗り越える腕力があるというか。

Nine Lives / Katalyst

LAのジャズ・コレクティブ。ドラムはKamaal Williamsの新譜にも参加しています。寄せ集めテクニック見せつけ系ではない、バンドらしいアンサンブルが素晴らしかったです。改めて聞くと各楽器が溶け合うような演奏を全員で行なっており、そういう意味では「ソロじゃなく、いかに自然に音を配置する戦い」とも言えるかも…?大勢で一斉に動き回ってもぶつからないダンスというか。
ヒップホップ要素は少なめ、かわりになのかアンビエントやニューエイジ的な要素を多く感じるのも面白かったです。

Boom Boom / Horatio Luna

元30/70のベーシストHoratio Lunaのソロ作。ジャズを軸としたハウスという感じで、自分のベースが入ればどんなトラックでもかっこよくしてしまう気概が良かったです。
エレクトロとジャズの交差というとKamaal Williamsも近いんですが、もう少しクラブカルチャー寄りというか、深夜にバカ盛り上がりしている瞬間が基本なのがHoratio Lunaですね。「良いクラブミュージック」よりも「ゲインが真っ赤に鳴っているどうしょうもない時に聴いたあの曲が最高!」みたいな。エレクトロにもゴリゴリの肉体性を見ていて、そこへのアプローチとしてジャズが入っている気が。そこはオーストラリアのジャズ、特に30/70周辺の基本スタンスかもしれません。

A Sonic Womb: Live Buchla Performance at Lapsus / Suzanne Cian

シンセサイザー黎明期のパイオニアであり、映画やゲーム音楽からニューエイジの先駆けとしても知られるスザンヌ・チアーニのライブ音源。音色やフレーズがミニマルに変化していく高揚感が素晴らしいです。
そしてライブ・エレクトロ作品でもあり、つまりライブ・パフォーマンスとして行う「制限」があるんですが、それが音の微細/大胆な変化に繋がっていて面白かったです。数少ない音やフレーズを突き詰めるからこそ見えてくる気持ち良さがありました。

The Jitters / Dorian Concept

アウトテイク、別ヴァージョン、ライヴヴァージョンなどを収録したEP。しっかり作り込んだ最近のブレインフィーダーの様々な作品よりも、「ビート・ミュージックの素朴でカオスな面白さ」が色濃く出ていて良かったです。なんでもありだし、全部パート派手だからビートだけで行けるんだぜ!という勢いというか。
今更ですが曲ごとに(ライブだったり音源だったりするゆえ)ミックスがバラバラというところも個人的に好きだったのかもしれない…。

Automatic / Mildlife

オーストラリアの4人組ジャズ・ファンク・バンド、約2年半ぶりとなるセカンド・アルバムです。前作が好評だった後、シングル出したり、配信したり、気がついたらその曲が消えたり、など(僕は)非常にやきもきしていたのですが、無事リリース!サイケ/プログレ的な大味壮大ヘヴィーなグルーヴと、DJカルチャーの影響感じる各音のセンスの良さが光ります。
バレアリック文脈で聴いてましたが、今改めて聴くとTame Impalaが一番近いかも?

Finds You Well / Khotin

カナダのプロデューサー、Dylan Khotin-Footeによるソロ・プロジェクト。ジャケからローファイ!中身もそのままアンビエント〜ローファイビートなアルバムです。サンプラー的な音の荒さを取り込んだニューエイジ。リズムの軽さがチルに繋がっていて良かったです。

Tulpa / Astrid Engberg

コペンハーゲン拠点のシンガー/プロデューサー/コンポーザー。現代のジャズやR&B、ヒップホップからエレクトロ、インディ・クラシック的なところまで、万華鏡のようなサウンドが魅力。様々なジャンルを咀嚼しながらスムースにまとめ上げる手つきはトリップ・ホップ的でもありますが、ビートというよりは弦や管まで使った旋律重視なアレンジの浮遊感がモダンで良かったです。
シンガーでありつつも歌が常に中心ではない、曲の後半ずっとインストになったり、のも面白かったです。

Bunout Boss EP / G Sudden

ラガ・ヴォーカリスト(らしい)G SuddenのEP。トラックはリッチモンドのクルーSeekersinternationalとのこと(Seekersinternationalについてはこちら)。攻撃的なダンスホールをひたすらローファイ、あるいはRawにした感じで、荒々しい音が良い感じです。とはいえ、ダンスホールとしては意外に直球で、「音響で新しく聴かせる」音楽でもあります。世界中の音楽、全部これくらい歪んでいて欲しい…!!

最後に近況

・ラジオで選曲してます。

もう残り一回ですが…!是非!

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