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ALBUMS OF THE YEAR 2020 by 高橋アフィ


2020年はありがとうございました&2021年もよろしくお願いします!
2020年の私的ベストアルバム10枚+αです。

の前にまずは昨年の自分を振り返ってみます。

昨年の感想

①「濃密/軽やかなアンビエント」として再解釈された「ニューエイジ/エクスペリメンタル」の存在感
②ローファイ・ブームから、音の特性としてローファイさを取り込んだ楽曲
③アフリカの各所のリズムが大躍進
④リード・パート(ボーカルから管楽器など)の境界線がより曖昧に→サックス良いですね
⑤プレイヤーの流れ、YouTubeやインスタの演奏動画追ったほうが掴みやすい…?

こう見ると今年も結構地続きですね。

今年は
①ポップさよりもハードな環境に(意識的に/結果的に)向き合った作品がトレンドに
②コロナ禍のストレスからか「チルアウト」「メディテーション」「ケア」を求めてしまう自分
③ライブが出来ない→「演奏を再現」ではなく「録音」としての作品性
④アフリカ発のエレクトロが面白い!アブストラクトでダンサブルな音楽たち(Nyege Nyege TapesやMushroom Hour Half Hour、Planet Mu(はUKのレーベルだけど)など)
⑤ソロ(だけ)ではなく、アンサンブルやコンポジションで聴かせるジャズの躍進
という感じでした。

それでは特に印象深かった2020年のベストアルバムです(何かしら関わった作品は基本的には外し、またミュージック・マガジンに寄稿した5枚も外しております。)

#10
Tara Clerkin Trio "Tara Clerkin Trio"
(Laura Lies In)

ブリストル拠点のアーティストTara Clerkinが結成したトリオのデビュー作。一部で非常に話題になってましたね(英オンライン・ミュージックショップBleepのランキングで10位でした)。サイケ/エクスペリメンタル/モンドミュージックという感じで、ゆるさと革新性が同居するような音がかっこ良かったし、ポップに聞こえました。生音とデジタル感、ローファイな楽器にクリアなボーカルと混ざり切らない音像も、むしろ立体的に聞こえて良かったです。
Moondog的なローファイ・ミニマルをエフェクトとシンセでいじり倒すM3"Hellenica"が個人的お気に入り。アルバム収録曲、曲調どれも違うんですが、ざっくりヘンテコという統一感あって、実験と楽しさが溢れてます。カオティックなサイケジャズM5"Gold Bar"のクールだからこそ狂っている雰囲気最高。

#9
Karu "Kuru"
(Beat Machine Records)

イタリアのマルチ奏者AlbertoBruttiによるプロジェクトKaruの1stアルバム。トライバル×ジャズ×エレクトロな、サックスや歌が鳴り響く中アブストラクトな電子音とエレクトロなビートが暴れまわる作品です。組み合わせ的にはビートミュージック的にもなりそうなんですが、どちらかというとNyege Nyege Tapesと共振するドープで重め深めな雰囲気が超かっこ良い!
アルバム最後のGuedra Guedra Remixが最高で、フットワーク化したリズムとトライバルなサンプリングの組み合わせは原曲超えです。
アルバム配信なさそうなんですよね…。

#8
The Sweet Enoughs "Marshmallow"
(Wondercore Island)

Hiatus KaiyoteのベーシストPaul Benderと鍵盤奏者Simon Mavin、そしてオーストラリアで活躍するプロデューサーでありギタリストのラックラン・ミッチェルによる“long lost easy listening project”。モンドミュージックやラウンジ、イージーリスニング、初期電子音楽などの面白みを、センスの良さと技量で再現/回収していく感じがよかったです。実は当時のものを探すとなかなか難しい、ソロの地味さとかメロの歌いすぎないバランスとか、今まさに聴きたい形にアップデートされているのが流石!家がすぐ南国になります。
ジャケがまさに発掘ものっぽい感じで滅茶苦茶良いんですが、アナログ化すらされてないんですよね(2020年現在)。こういうこだわりが詰まっているところが素晴らしいと思います。

#7
Jacob Mann "106"
(One Minute Records)

Knowerバンドの参加やJacob Mann Big Bandが大好評、この流れでしっかりとしたジャズトリオのアルバムかなと思ったら、まさかの一人で作成のがっつり宅録作!ヴィンテージシンセJuno 106で作られたローファイゲーム音楽風ジャズ。タイトな跳ね方が気持ちいいしかっこいい!ちょうど時勢ともぴったりで不思議な浮遊感が良かったです。ナチュラルにローファイで、がちんこvaporwaveでした。
キーボからベース、ドラムまで一人で各パートを演奏しソロ回しをするM7"Barstow"の狂気が最高なんですが、本人的には特に面白ポイントという感じでもなさそうで、そのズレ感ゆえの率直なポップさがあると思います。

#6
Overmono "Everything U Need"
(XL Recordings)

今一番かっこ良いエレクトロアーティストじゃないでしょうか。IDM感ありつつ、もうちょっと肉体的というかダンスミュージックである側面も強く、その結果むしろ没入感が増しているように聴こえるのが面白かったです。文句なしにかっこ良い。

#5
Kamaal Williams"Wu Hen"
(Black Focus)

UKクラブジャズの流れと現在ジャズの融合→進化に加え、KatalystのドラマーやMiguel Atwood-Fergusonの参加で、現在のLAコミュニティのチル/ニューエイジ感とも繋がる、クラブミュージック目線で再解釈される新たなジャズ。直球ハウスやドラムンを生バンド化することで、逆説的にハウスやドラムンを更新しようとしたようにも聴こえて素晴らしかったです。
というところもありつつ、一番感動したのは音の良さ。演奏的にも録音的にも結構生々しい、一歩ズレたらローファイ系な雰囲気すらあるんですが、どのスピーカーで聴いてもばっちりかっこ良い音像!Kamaal Williamsのプロデューサーとしての凄みを感じました。

#4
Scratcha DVA "Outro's"
(Allyall Records)

音楽何でもありだなと思いました。UKベースミュージックシーンのプロデューサーで、最近はGqom曲などリリースしているScratcha DVAの三部作(?)の最終章。フットワークから弾き語り、ドラマの音源、アンビエントまで混沌にぐちゃぐちゃに垂れ流しており、アルバム単位で聴かれた時機能する限界値を攻めるというか、やりたい放題っぷりが最高。このカオスっぷりこそ2020年です。
アルバムとしては一番聴いた作品だと思います。

#3
Tom Misch & Yussef Dayes "What Kinda Music"
Beyond The Groove

Tom Mischの才能が爆発しましたね!今まで軽めの印象だったのですが、本作での隙間をリバーブで埋めていく硬派なプレイを聴いて、今までの自分の見方を反省しました。
というところなんですが、個人的にぐっと来たのはYussef DaysとRocco Palladinoのリズム隊(5曲参加)。めちゃくちゃ引っ張るベースに攻めまくるドラムのアンサンブルは、(本人たちが言っているように)全盛期のスラロビ的なマジックがありました。
またレック始まる直前のわくわく感を収めたM1"What Kind Music"の録音も素晴らしい!どの曲もドラムの音が尋常じゃなく良かったです。
追加でリリースされたBonus Trackも合わせておすすめ。

#2
Sofie Birch "Hidden Terraces"
(VAKNAR)

コペンハーゲン拠点のアーティストによる、コロンビア旅行中のフィールドレコーディングと演奏を重ねたアンビエント作。フィールドレコーディングの環境音のざわざわ感が家聴きにちょうど良かったです。
また最近のアンビエント系の作家としては珍しく(?)モジュラーというよりもシンセそのものを弾くタイプのようなんですが、その演奏のニュアンスの入れ方が絶妙で、その有機性というかゆったりと奏でる隙間/歌い方が心地よかったです。

#1
Nick Hakim "WILL THIS MAKE ME GOOD"
(ATO Records)

この動画で1位です。

録音の面白さとマジックが詰まっていました。宅録的な内向さを突き進めることでひたすらドープに。アルバムのどの曲もメロウなのに、音としてはノイズまみれで、あまりに荒々しくて良かったです。
声の異常な重ね方も面白く、メインという概念あるのかわからない多重コーラスになることもしばしば。全体的にポップにまとまるかどうかのギリギリを攻め続け、カオスの中からメロディが浮かび上がる美しさがありました。聴くたびに新たな発見がある面白さで、今だに聴き直して驚いてます。
内容としてはコロナ禍とは関係ないのですが(多分)、急逝した友人へ捧げたM5"QUADIR"など、陰鬱な感情と向き合うことでセルフケアしていったアルバムだと思っています。その暗さと辛さと癒しの感覚が、自分にとっての2020年と重なり完全1位です。

本当はSam GendelとSAULTは入れたかったのですが、寄稿したことを思い出し…。
次点はThey Hate Change "666 Central Ave."とかLionmilk & Mndsgn "Forever In Your Sun"とか話し出すとキリがなさそうなので、最後に印象的だったライブ動画を3つ。

歌う人数が多い圧の上で、ゴリゴリ歌いまくるLido Primientaの歌が素晴らしかったです。ミッドサマー感ある内装も良かった。

ソウルからトラップまで、歌声まで変える勢いで歌いこなすGabriel Garzón-Montanoもよく聴きました。服脱ぐたびに激しくなるのかと思ったら、最後タトゥー見せまくり上裸で内省的な曲やるんだ…と、なんかもやっとした思い出です。

今年もJD Beckの凄さに笑い続ける年でした。早く音源出してくれ。

それでは2021年もよろしくお願いします。来年は色々リリースしたいですね。

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