私的ベスト・ミュージック10枚(2021年3月編) by 高橋アフィ

You Don’t Have To Live In Pain / Teeth Agency

 ゴリラズのツアー・メンバーでもあるJesse Hackettと、Mariano ChavezによるデュオがSTONES THROWからリリース。新譜だけれど直球モンドミュージックで、リズムの(良い意味での)弱さが今だとチル/リラックスな雰囲気で滅茶苦茶良かったです。
 初期電子音楽的な雰囲気を出しつつも現代的なエディット/濃縮感が面白く、尖りまくってポップな部分、今聴いた時に一番謎(だからこそかっこ良い)部分が詰まってました。

Jumbo Street / Figmore

 今イチオシプロデューサー/ビートメイカーの10.4 RogとシンガーJUICEB☮Xのデュオユニット。ビートテープな質感のAORという感じで、ローファイでヒップホップな音像なのにメロがシティ感というか小洒落ていて素晴らしかったです。この音ならどんな音楽もかっこ良くなるとも言えるし、どんな音楽もこの音でまとめあげられる力を見せつけられたとも。

Vexillology / Guedra Guedra

 モロッコのプロデューサーGuedra Guedraの初のフルアルバム。トライバルなベース・ミュージックにjuke/footworkの混沌さが追加された感じで、高速だし重心がひたすら低くてカッコ良かったです。かつ音が意外に攻撃的ではないのもポイントで、派手だけれど隙間もある/しっかり体で聴かせる音楽で良いですね。

Notes With Attachments / Pino Palladino & Blake Mills

 Pino Palladino凄いということです。ネオソウル的な手法(のドラム以外)をジャズやアメリカーナに展開した印象で、誠実にかっこ良かったです。丁寧に作ったことが伝わる良さですね。

Nervous Energy 一 触即发 / Mindy Meng Wang 王萌, Tim Shiel

 中国/オーストラリアの作曲家Mindy Meng Wang 王萌とメルボルン拠点の(多分)プロデューサーTim Shielによるデュオ。古筝の音が特徴的なんですが、その響きがオリエンタルには陥らない凄さで、ビートの感触含めてモダンなまとまり方をしていて素晴らしかったです。一曲目がぶっちぎりで好き。

Aspects / STR4TA

 ジャイルス・ピーターソンとインコグニートのブルーイによる新プロジェクト。確実に「ブリット・ファンク」でありつつ、その話は本人たちのインタビューがわかりやすかったので割愛すると、個人的には「そうは言ってもブリッド・ファンク(の中心)ではない所」も面白かったです。
 ダーティな(≒ローファイな)サウンドやノリは確実に現在からみた視点だし(当時は直球に演奏していたはず)、だからこそ彼らの感じていた「(当時の)ブリッド・ファンク」の輝きを感じられるアルバムになっていると思います。ジャンルが形成されつつあるあの瞬間の勢いを再現出来るセンスに脱帽です。そしてその流れで改めて聴く「ブリッド・ファンク」の面白いこと!!

Currents EP / JAB

 パーカッショニスト、ミュージシャン、コンポーザーのJABによる壮大な生音ダンスミュージック。打ち込み使用せず全編生演奏となっており(クレジット見ると17人参加)、大人数がそれぞれ動き回る(特に打楽器!)勢いが素晴らしいです。
 ただ面白いことに音楽性は生音系というよりもハウス/ブロークンビーツの影響が強そうで、生々しいけれど質感は滅茶苦茶クール。つまりおしゃれですね!打ち込みだとアッパーというか壮大になりそうな曲ではあるんですが、絶妙なところでスピリチュアルな方向に聴こえてかっこ良いです。ヴィブラフォンが良い動きしています。

Supermane / MonoNeon

 MonoNeon、好きではありつつもどうしてもダーティーなファンク一直線な感じというか、ケレン味の強さやマッチョ感でなかなかハマりきれなかったんですが、ついに大傑作が来ました!!ヒップホップ〜R&B路線に的を絞った本作は、いつものMonoNeonのベースプレイの凄み残しつつ、全編メロウという素晴らしいバランス!動き回るけれど歌心も感じられる演奏でかっこ良いです。
 特にfeat.招いた曲がどれも素晴らしく、"Done With The B-S (feat. Ledisi)"なんてスマッシュヒットして欲しい良さ!ヨレたリズムにオラオラ押し返すMonoNeonが良いですね。
 ただ一曲目は本当に謎なんだよな…。こういうところがMonoNeonらしさだよね、と楽しめる日が来ると思ってます。

Like A Good Old Friend / Vegyn

 Frank Ocean『Endless』、『Blonde』などにも参加しているプロデューサーのEP。ローファイ/IDM/ヒップホップ/アンビエントなどなどを余裕で横断する音楽性が最高でした。
 一曲目の徐々にテンポが上がる展開が笑っちゃうくらいかっこ良く、それだけでも必聴。その後も音楽性は曲ごとに様々なんですが、全編通したメランコリックなメロディとビートミュージック的なローファイなドラムの質感が不思議な統一感を出しています。飽きが来ないで何度も聴けるのが良かったです。

All Caps / ZULI

 エジプトのカイロを拠点に活動するプロデューサーのEP。2019年のデビュー作リリースの数ヶ月後に出す予定だった音源が盗まれ、そこから改めて音源制作。2021年にやっと出せたEPとのこと(唯一そこから生き残ったのが"Penicillin Duck")。
 速い!うるさい!ハード!なドラムン〜juke/footworkな音楽性にノイズまみれのサンプルが乗っかるハードコアな作品で、なんというか物理的に強かったです。

近況

 TAMTAMでEP出しました!ついに一曲もドラム叩いていませんが、全編ビート&その他&ミックス&マスタリングしたので、動き方としてはいつも以上です。
 全編宅録で作ったので、せめてミックスはバラバラにということで、曲ごとにやりたい放題やってます。


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