私的ベスト・ミュージック10枚(2021年2月編) by 高橋アフィ

eatsleeprepeatsleep / Max Ox

 Jacob Mann率いるヘンテコジャズトリオ、約5年振りの新作。ホーン含めてタイトなリズムをバシバシ決める様が魅力のJacob Mann Big Band、ひたすら宅録ローファイだったソロ作に対し、初期BBNGも彷彿させるようなエモさとライブ感が面白く、トリッキーなフレーズを気持ち悪く伝えて行こうという気合含めて良かったです。
 かつてに比べてJacob Mannが飄々としており、機械のような感情薄めの演奏をするキーボと、テンション高めのリズム隊との対比がより際立ってます。ライブ観たい…!

Feelings / Brijean

 Toro Y Moi、U.S. Girls、Poolsideなどのライブサポートを行うパーカッショニスト/シンガーのBrijean Murphyと、最近出したソロ作も良かったベーシストDoug Stuartによるユニットの1stアルバム(2019年の『Walkie Talkie』はEPでした)。
 ドラムは基本エレクトロ/打楽器は生演奏というバランスが、ハウス/ディスコな曲調と非常に相性良く、程よくチルくて程よくアッパーな雰囲気が良かったです。良い意味で、ボーカル含めてがっつりリードをとるパートが無い印象で(歌ものではあるんだけど)、アンサンブルで聴かせていく柔らかな感じが「とりあえず流しておけば間違いない」おしゃ感です。家でもフロアでも弱音でも爆音でも行けると思います。

CHEETAH BEND / JIMMY EDGAR

 こういうエッジーでハイファイでポップな音が苦手だったのですが、このアルバムで突然聴けるようになりました。個人的にはローファイな音の混ぜ具合がかっこ良く、結果キラキラした音が相対化され、その薄さゆえのエグみの面白さを存分に引き出してると思います。
 ポップでありつつ、根本はダンスミュージックであるところが聴きやすかったのかも?派手に鳴らす必要があるところで、がっつり戦うための/かつマッチョに殴り合いにはしないための、王道変化球音楽。

Six / Destiny71z

 Floating Points主宰のレーベルEgloよりリリースの、Floating PointsのライブメンバーでもあるMatthew Kirkisの別名義Destiny71zの1st AL。モジュラーフル稼働なバキバキで複雑に編み込まれたエレクトロで、情報量の多さが気持ち良さに繋がってます。
 ミキサー真っ赤系の過入力感あるローファイ加減がかっこ良かったです。

Into the Rest / WOOM

 ロンドン拠点のコーラスカルテットのデビュー作。Dirty Projectersなども彷彿とさせる、多声コーラスの気持ち悪い=気持ち良い使い方がかっこよかったです。アコースティックなのにアブストラクト。
 James BlakeやFrank Oceanなどのカバーも収録してます。

Road Angel Project, Vol. 5 / V.A.

 DEV MARVELOUS X THE BIRD AND THE BEEによる(多分)チャリティープロジェクトROAD ANGEL PROJECT。詳細よくわかってないんですが、Daedelusなど参加。最後のGabe Noelの20分超えのエクスペリメンタル/アンビエントもよかったです。

Cameron Graves / Seven

 カマシ・ワシントンやスタンリー・クラークに参加するピアニストの新作。「メタルに影響を受けたジャズ」という説明から想像する音の30倍は激しい…!特にドラムのMike Mitchellがあまりに凄まじく、メタルの硬質で剛力なニュアンス残しつつも、これでもかと動きまくる!結果キメキメなのに全員爆走という謎の状態が生まれています。
(センスも勿論だけど)複雑なフレーズをより奇怪に回答できる、類稀なる技量で音楽性を更新している瞬間を観た感激でした。

Subtropique / Nicola Cruz

 Nicola Cruzによる(彼としては)割と直球のエレクトロ。普段は南米サンプリングが前面に出る印象かつ打楽器の要素が強いんですが、今回は主にリズムマシンとエレクトロで聴かせるEP。しかし、じわじわ聴かせる妖しいグルーヴ感は健在で流石です。

Obstacle Scattering / Rian Treanor

 RIAN TREANORの新作は、昨年の傑作AL『File Under UK Metaplasm』の続編的EP。ウガンダの〈Nyege Nyege〉クルーとの交流から生まれたシンゲリ&フットワーク×ベースミュージックな、高速リズムの洪水です。
 音数多いんですがうるさくないのは、ダンスミュージック的な重心の低さと絶妙に一音一音の品が良いからだと思います。速いけれど隙間もしっかりと感じるリズムがカッコ良いです。

Fresh Bread / Sam Gendel

 いつか聴ききれるのかSam Gendelの3時間越えアルバム。曲調様々ながら全体を通して感じるチル?ニューエイジ?脱力?なムードが心地よく、逆にここまで多様なのにキャラがぶれない面白さです。もうちょっと聴き込んで行きたい気持ちになれるアルバムとしての重さが良かったです。


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