私的ベスト・ミュージック10枚(2021年4月編) by 高橋アフィ
Enter The Zenmenn / The Zenmenn
ぶっちぎり最高でした!Music From Memoryからリリースされた謎の新人。The Zenmennという名前から予想されるような「似非東洋感」「ニューエイジ」っぷりの面白さと、ちゃんとチル文脈でも聴こえるように作られたモダンなセンスが素晴らしかったです。どの音色もゆるふわで気持ち良い!
Kensho ! EP / The Growth Eternal
ベーシスト/シンガーのThe Growth Eternal、昨年10月以来ということで、結構なハイペースでリリースされたEPです。ベースで和音まで担当するゆえの異物感と、デジタルなボーカルエフェクトの面白さはある種前作から繋がるところなんですが、今回は6曲6分45秒という短さ(とはいえ前作も17曲で17分だったけど)!サイケ度も抽象度も高めな音楽として、絶妙に楽しみやすい短さでよかったです。
基本ベースと声のみなんですが、唯一打ち込みのドラムが入っているのが"Weak"。多くの場合一般的な編成に近いほうがわかりやすいんですが、不思議なほど聴きやすいわけでも無い、というのが多分The Growth Eternalの特徴な気がしてます。アクセントの位置が自然と揺れ動く様が独特の浮遊感を生んでおり、それがはっきりと可視化されるとトリッキーさが目立つというか?この時間軸が揺れ動く、4/4の中で速くなったり遅くなったりする感覚というんでしょうか、なんとなく長谷川白紙さんやSen Morimotoにもある気がしていて、今気になってます。
Between Days / Kiefer
ひらすらメロウで最高なKieferが戻ってきました!ローファイな質感も素晴らしいですが、やはりソロ含めたメロディセンスが素晴らしく、ジャジーだけれどきちんとポップ。要素だけ見ると「ヒップホップビートの上でソロを弾く」なんですがそこから一歩進み、ビートの質感にぴったりのメロウさが良いですね。
Y Llegó la Luz / Michael Olivera & The Cuban Jazz Syndicate
Alfredo Rodriguezなどで活躍するドラマーMichael Oliveraのソロ作。ラテンジャズのグルーヴ感を軸としながら、作曲的にはラテンというよりもモダンなセンスが目立っている印象で、非常に粗く言えば「陽気(なだけ)じゃないラテンジャズ」「ラテンのリズムを使った現代のジャズ」。
(個人的にはヒップホップ的なリズム以上に)ダンサブルな演奏をしながら、そのリズムの明るさに飲み込まれない繊細な世界観がかっこ良かったです。ただジャケはもうちょっと違っても良い気がしてるんですがどうですかね?
BISHINTAI / UNKNOWN ME
やけのはら、P-RUFF、H.TAKAHASHIの作曲担当3人と、グラフィック・デザインおよび映像担当の大澤悠大によって構成される4人組アンビエント・ユニット「UNKNOWN ME」。アンビエントでありながら、わかりやすく「気持ち良い音」とか「ドローン」とか「チル」とか「ビートレス」にまとめない感じがかっこ良く、アンビエントのフォーマットを軸にしながら音の実験をしている印象です。逆に何をやっても、例えばリズムをしっかり入れたとしても、アンビエントに聴こえるのが面白いですね。
作曲担当が複数いるからかどの音も全体的に立っており、空間に溶け込ませるというよりも、それぞれの音が絡み合ってアンビエントに聴こえる感じも良かったです。何かと愛聴してます。
* / andrew cs
Matthewdavid主宰の〈Leaving Records〉からリリースされたアンビエント/ドローン作。フィールド・レコーディングの使い方がかっこ良く、ノイジーなまでに大きい環境音が、結果静寂の印象を強くしています。
良い意味で取り止めの無い内容が素晴らしく、だからこそこの音を聴ける喜びがあると言いますか。極端なまでの圧の無さが良かったです。
Draw Me a Silence / Azu Tiwaline
チュニジア出身のプロデューサーAzu Tiwalineによる1stアルバム。打楽器中心のベース・ミュージック。リズム激強系なので一歩ずれるとマッチョな方向になりそうなんですが、ギリギリのところを乾いたクールな印象で聴かせるのが良かったです。エレクトロなリズムと生々しい打楽器の音(演奏しているかは謎ですが)の混ざり方が肝な気がしてます。
Botanas / Guazú & Terror Cactus
ブエノスアイレス拠点のGuazúとシアトル拠点のTerror CactusによるコラボEP。哀愁デジタルクンビア。要素要素はがっつりこだわっているし、ダンスミュージックとしてもかっこ良いんですが、それを超えてくるメロディの人懐っこさが良いですね。
The Things I Can't Take With Me / Yaya Bey
昨年リリースした『Madison Tapes』も良かったシンガーソングライター/マルチアーティスト。歌詞はもちろん、「黒人・有色人種・マイノリティによって運営される、黒人・有色人種・マイノリティのアーティストのためのレーベル」としてリスタートした〈Big Dada〉からの再始動後第1弾リリース、など触れるべき話題は多いんですが、一旦音楽的な要素に注目すると、EP全体を通してドラムの少なさが特徴的かと。歌はR&B/ネオソウル的なルーツを感じさせますが、リズムパートが後退することにより、囁くような親密さだったり、声が重なるニュアンスの美しさ、浮遊感が強調されていると思います。
アルバム制作中とのことで今後も期待!
American Spirit / John FM
曲滅茶苦茶良かったし書いちゃったので残しちゃったんですが、bcで見た所昨年8月リリース(配信は2021年4月)のデトロイトのプロデューサー作。ヒップホップやロウハウス的な荒々しさにソウルやR&Bが混ざっており、声とリズムパートとシンセなどなどの音像はバラバラなのに、歌心とグルーヴでまとめ上げる力強さが最高でした。
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