私的ベスト・ミュージック10枚(2021年5月編) by 高橋アフィ

どんどん遅れて来てます。しかし逆に自分で5月の思い出を振り返れる楽しさにも目覚め始めました。

More Energy Fields, Current / Carlos Niño & Friends

 LAシーンのキイパースン、カルロス・ニーニョの新作。ピアニスト/ビートメーカーのJamael Deanが大活躍した結果なのかはわかりませんが、ニューエイジ/アンビエント的な質感とビートシーン/クラブシーン、そしてスピリチュアルジャズとの境目が無くなったようなアルバムで良かったです。
 カルロス・ニーニョと言えば(多分)本人のbcアカウントが面白く、ビート系の面白い作品からアンビエントまで幅広く購入しているのがわかります。その嗜好がそのまま一つの世界にまとまっているというのも好きなポイントです。

JIN MU / Zeitgeist & Tucceri

 30/70のドラマーZiggy Zeitgeistと、彼のプロジェクトZEITGEIST FREEDOM ENERGY EXCHANGEにも参加している管楽器奏者Erica Tucceriとのデュオユニット。金属(Jin)と木(Mu)がコンセプトで、Tucceriは木製と金属のフルートを、Zeitgeistはドラムとシンバルを演奏しているとのことです。
 アンビエント作にしっかりとドラムとして参加するZiggy Zeitgeistが良く、ビートを刻みつつもアンビエントな質感/持続感を上手く演奏しています。回り回ってスピリチュアルジャズをアンビエント/ニューエイジ的に再解釈したような演奏に聞こえるのも良かったです。

Tony Allen / There is No End

 Tony Allenの最期の作品であり挑戦作。アフロビート自体の魅力の追求という以上に、そのドラミングの可能性を他ジャンルへ広げていったことがTony Allenの最大の功績の一つだと思うんですが、まさにモダンなアフロビートが詰まった作品で素晴らしいです。Tony Allenが叩けばどんな音も乗っけられる、そのドラムの許容範囲の広さが凄まじさですね。

April Dreams / Quintin Copper & Nas Mellow

 ドイツのファンク/ディスコデュオ。シンセとエレクトロなビート、という要素を考えるとイケイケになりそうなんですが、渋めにまとまっているところが良かったです。楽器の重ね方も控えめで、その分ベースが細かく動くことで雰囲気作っているのが好きです。

Electronic Labyrinth / Basic Rhythm

 Imaginary Forces名義でも知られるUKのプロデューサーBasic Rhythm、Planet Mu移籍後の2名目のアルバム。ノイズや雑音などの取り入れが絶妙で、構築的でありながらヒップホップ的な荒々しさも感じるビートが素晴らしかったです。ヘッドフォンで最高に鳴るようにも聞こえるし、ゴリゴリ爆音で聴いてこそ真価が発揮されるようにも思える、射程範囲が無限な音がひたすら気持ち良いですね。
 ビートも踊りやすさやわかりやすさに容易に着地させない感じがかっこよく、尖りつつも音色と破壊力でダンスミュージックとして聴かせていってます。

Black To The Future / Sons Of Kemet

 シャバカ・ハッチングス率いる、管楽器にチューバ、ツインドラムの異形カルテットの4thアルバム。エレキングのレビューによるとこの編成は「ブリティッシュ・カリビアンのディアスポラや、ノッティング・ヒル・カーニヴァルのグルーヴに根差した、特徴的なラインナップ」とのこと。
 ミニマルな編成でパンキッシュな音像でもあるんですが、そこをギリギリ力押しにまとめないところがSons Of Kemetの凄さだと思います。リードを取り続けるシャバカ・ハッチングスの技でもあり、ビートに絶妙に隙間を作るリズム隊のセンスだとも言えつつ、なんでこんなにかっこ良いのかは依然謎。歪んでいる音が入っていないところが一つのポイントの気もしつつ、もっと聞き込みます。

Tremendoce Parts 2 & 3 / Skerry / Otis Sandsjö

 ベルリン拠点のサックス奏者Otis Sandsjöの新作EP。昨年出した『Y-OTIS2』の楽曲「Tremendoce」の続編です。現代ジャズ+ビートミュージック的な雰囲気ありつつ、むしろポストクラシカル+エレクトロ的な不思議な浮遊感がかっこ良いです。ただメロはがっつりリズミカルで(「Skerry」はザッパ的とも言えるくらいに)、そのリズムの強さが面白い質感になっていると思っています。
 エディット感もエレクトロ的というよりも距離感がバグる感じと言いますか、生音の面白さ損なわないベクトルでポジティブに働いており、個人的にはこの路線でどんどんやって欲しい!

Music for Living Spaces / Green-House

 アンビエント作家Green-House、なんだかんだこれが1st ALなんですね。以前は初期電子音楽的な柔らかい電子音が印象的だったんですが、フルートなど具体的な楽器の音も入り、ベッドルーム的な雰囲気から確かにリビングで鳴るくらいの開放感があるアンビエントになっています。
 どれくらいメロディの輪郭を引くか、がアンビエントの肝の一つかと思っています。ドローン的なものなど音色の快楽で聴かせるのも好きなんですが、Green-Houseは曲調に対して果敢にメロを弾いていて、そこがチルアウトかつポップな着地ができている要因ではないかなと。

Bird Ambience / Masayoshi Fujita

 マレット奏者/コンポーザーのMasayoshi Fujitaの新作。丁寧に作曲されたであろう綿密な楽曲に対し、マレットの弾ける感覚といいますか、攻め攻めな音が素晴らしかったです。エレクトロの導入がむしろ打楽器的な感覚の拡張に聴こえるのもカッコ良い。
 アンビエントなものとしても聴けると同時に尖ったエレクトロとも思える作品で、いやはや圧巻でした。

SHALOSH / RAS

 ベルリンのイケイケジャムトリオ。ポップにするのではなく、がっつりライブ感残したということであろう、どの曲もがっつりどろどろと長いのがよかったです。聴き込むというよりもたまたまプレイリストに入った時の破壊力がよく、結果なんだかんだよく聞いてました。


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