新世界

コロナ禍で世界は新しく生まれ変わるという人がいるが、新しい世界は毎朝のように生まれている。
この地上にいる個の一人である自分もしかり。
変化に抗っても流されるだけだ。
ビッグ・ウェンズデーのサーファーのように、うまく波に乗ろう。

さて変化といえば、おれの頭髪にも漏れなくやってきた。
過日、2020年3月31日に新しい薬を2種類【イリノテカン(抗がん剤)とパニツムマブ(商品名ベクティビックス : 分子標的薬)】点滴で躰に入れたのだが、その一つであるイリノテカン(抗がん剤)の影響により脱毛が始まった。
発病以来6年になるが、これまで一度も脱毛したことは無かった。

4月22日の朝、シャワーを使っているとき、髪をかき上げた手に抜け毛が付いていた。
それもけっこうな数だった。
いきなりステーキならぬ、いきなり脱毛である。
おっ、ついに始まったかと、事実を受け入れるまでに数秒を要した。
以後、十日間に渡って順調に抜け続け、かなり頭髪が薄くなってきた。
しかし、毎日気持ちのいいくらい抜け続けているのに、まだ残っている。
いったい毛髪は何本あるのか。
自分の頭の形を実感するのは高校3年生の2学期以来のことだ。
(中学~高校と丸刈りの坊主頭を強要されていた時代に育ったからね)

頭が剥げるとスキンヘッドにする人がいるが、プロテクト的には大丈夫なのかな?
頭髪は頭を護る役割を担っているんだなと、今回わかった。
髪は地球を覆う空気みたいなものだ。
見上げた空に空気が無ければ、我々は直接に宇宙と向き合うことになる。
むき出しになった頭皮が向き合うのは何だろう。
慈愛に満ち、且つ過酷でもある、この青い惑星の息遣いかもしれないな。

先日から帽子をかぶっている。
隠すというより護るためではあるが、中途半端な状態は美的でないこともある。
現在、複数の帽子が手元にあるんだ。
母の手編みの黒い毛糸の帽子が二つ、ポリエステル製の黒いハットが一つ、デンマーク製の黒い医療用ハンチングが一つ、その他二つ三つ。
これまで帽子をかぶるのは好きじゃなかったが、意を決してかぶってみると、なかなか奥が深い世界だなと思う。
というわけで、次回あなたに会うときには、どんな帽子姿でいるだろうか。

いずれまた生えてくるからと言ってくれる人もいるが、投薬を止めない限り、そうはならないだろう。
そして今後、奇跡が起こらない限り、投薬は続くだろう。
でも、奇跡という言葉が地上にあるということは、それが起こることもあるということなので、それを楽しみに日々を生きることにする。

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